癌を「治す」から「予防する」時代へ-Foundation Medicine

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1953年 DNA二重らせんの発見から50年の時を経て、2003年にヒトゲノムの解析が終了した。さらに現在は1000ドルで個人の全ゲノム解析が可能な時代となった。この分野のバイオベンチャー企業の競争は激しく、中でも癌ゲノム医療でのパイオニアがこのFoundation Medicine,Inc.(以下FMI)である。

NGSを利用した癌ゲノム診断

NGS(次世代シーケンシング)とは、遺伝子の塩基配列を高速に解析できる装置である。その誕生は2007年であり、当時は10億塩基(1Gb)の情報量であったものが、4年後には1000億塩基(1Tb)に届くデータ算出が可能となった。NGS誕生以前の解析法で実施されたヒトゲノムプロジェクトで13年かかったことが、現在では10日間で実施できるようになったのである。FMIはNGSを用いて、個人のゲノムプロファイルを提供し、患者に対し高精度の治療方針を支援する癌ゲノム診断を行っている。他社が乳がんや大腸がんなど特定の癌に特化して診断を行っているなか、FMIはほとんどの固形腫瘍癌に対して、迅速に診断が行える強みがある。これは、前述したNGSの飛躍的な進歩により、346もの癌変異遺伝子を対象に網羅的かつ包括的な分析法を開発できたためである。このため、早期の癌特定だけでなく個人の遺伝子家系も考慮した、よりオーダーメイドな治療を選択できるようになった。
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より良い治療方針を提供
(出典:Foundation Medicine公式ページ

加えて、臨床で得られたデータを用いて独自のヒト癌ゲノム情報プラットフォームを構築しており、医師の経験や知識に依存しない的確な治療を受けられるメリットがある。癌診断を受けてからのセカンド・サードオピニオンが不要となり、より早期に治療の開始が可能となるのだ。

アメリカの新たな医療戦略

FMIは2010年の創立から様々な大手製薬会社と提携、多くのベンチャーキャピタルも出資していた注目の企業であった。2015年にはそれまでの投資額4250万ドルに対し、スイスの製薬会社Roche社が7.8億ドルで買収していることからも、そのポテンシャルが窺える。

オバマ大統領は2015年1月の一般教書演説において、個人の医療情報を活用してPrecision Medicine Initiativeを始める声明を発表した。Precision Medicine Initiativeとは、患者に最適な医療を提供するという医療現場や患者のメリットを考えた医療戦略である。ここまでだと、従来のPersonalized Medicine(個別化医療)と大差がないようである。しかしPrecision Medicineはさらに、患者のサブグループ分類の確立と、そのサブグループごとの治療や予防法の確立に焦点を置いている。

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次のがん治療へ誘うゲノム情報
(出典:Foundation Medicine公式ページ

アメリカ食品医薬品局(FDA)が、FMIの製品をFDA承認の迅速化を促すプログラムに指定したことからもわかるように、FMIの膨大な個人ゲノム情報は、同じようなゲノム情報を持つ者同士において、免疫療法・化学療法の効果および副作用、他臓器への転移、将来的な疾患など、人体への悪影響の回避に利用できる可能性がある。この新たな戦略は拡がりをみせており、例えばGoogle社は全社員及びその家族に対して、FMI社製DNA検査を福利厚生として2015年から提供している。大切な人を守るための予防医療産業の始まりと言えるだろう。

現在は癌分野に特化しているFMIだが、CEOのMichael Pellini氏は、「がん治療への応用を越えて、我々の製品は重要かつ高度に差別化されたゲノム診断情報を提供するだろう。」と述べており、今後他領域の疾患への展開が予想される。アメリカの新たな医療戦略を背景に、全世界への飛躍が期待されるバイオテク企業だ。

会社概要

会社名 Foundation Medicine,Inc.
CEO Michael Pellini, MD
設立年 2010年
拠点 アメリカ マサチューセッツ州 ケンブリッジ
社員数 110人
事業内容 癌ゲノム診断事業
主な商品 FoundationOne®, FoundationOne®Heme, FoundationACT™
会社URL http://www.foundationmedicine.com/
沿革 2010年 ライフサイエンスベンチャーキャピタル会社サード・ロック・ベンチャーズのAlexis BorisyがCEOとなりFoundation Medicine,Inc.を創立
2011年10月 Kleiner Perkins Caufield & ByersとGoogle Ventureが投資。総額3350万ドル。
2012年9月 Roche Venture Fundなど5社が投資に参加。総額4250万ドル。
2012年,2013年 MIT Technology Reviewで、2年連続「50 most desruptive companies」に選出される。
2013年8月 世界経済フォーラムで、革新的技術を持つ「Technology Pioneers 2014」として、日本企業 1 社を含む36 社のスタートアップ段階のベンチャー企業の1つに選出される。
2013年9月 NASDAQ上場
2015年1月 世界第3位の製薬会社であるF. Hoffmann-La Roche, Ltd.(Roche)が7億8000万ドルでFMIの56.3%の株式を取得し、Rocheの傘下に入る。

メンバー紹介

Michael Pellini, MD

Michael Pellini, MD
最高経営責任者(CEO)
生命科学と臨床診断および検査業界で幅広い経験を持つ。
ボストン大学、ドレクセル大学でMBA
トーマス・ジェファーソン大学ジェファーソン医科大学でMD

2004年 SeraCareライフサイエンス社に買収されたボストン拠点のバイオテクノロジー企業Genomics Collaborative, Inc.の社長兼CEO
2006年 ウォーターストリートヘルスケア・パートナーズが買収した国の分子病理学サービス会社 Lakewood Pathology Associatesでエグゼクティブバイスプレジデント兼最高執行責任者
Life Sciences at Safeguard Scientifics, Inc.で副社長
2010年10月 Clarient、GEヘルスケア社COO / GEヘルスケアによるClarientの買収に尽力。
2011年5月 FMIの社長兼最高経営責任者(CEO)に就任

Steven Kafka, PhD

Steven Kafka, PhD
社長兼最高執行責任者(COO)
金融、投資家および広報や事業運営
ハーバード大学(博士)
スタンフォード大学(学士)

インフィニティ医薬品(INFI NASDAQ)での財務担当副社長
ベルケイド®のミレニアム・ファーマシューティカルとジョンソン・エンド・ジョンソンとの戦略的計画と提携経営を推進する上で、財務担当シニアディレクター
2013年1月 FMIの最高執行責任者(COO)兼最高財務責任者(CFO)に就任

Alexis Borisy

Alexis Borisy
取締役会長・共同創設者
20以上の革新的な科学に基づいた組織を成功させた、バイオテクノロジー企業家

シカゴ大学(化学・化学生物学、学士)
ハーバード大学  Dr. Stuart Schreiberの研究室に所属
2000年 COMBINATORXを設立し最高経営責任者(CEO)
2009年 ライフサイエンスベンチャーキャピタル会社である、サード・ロック・ベンチャーズに参加
2010年 FMIを設立
2011年5月まで暫定CEO
現在、取締役会長

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SAKIGAKE編集部

SAKIGAKE編集部

海外のスタートアップ、テクノロジーに関する最新情報を発信していきます。 海外の起業家たちが、何の課題に目を向け、どんなことを仕掛けようとしているのか。 最新技術だけでなく、未来を創ってきた人や、これから未来を創ろうとしている人の生活・人生もご紹介します。
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