注射針を使わない新技術で、尿失禁を改善-Vensica Medical

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排尿障害で悩む患者に、負担の少ない治療法を――。イスラエルのスタートアップ企業、Vensica Medical社(以下、Vensica社)は、超音波を使って膀胱(ぼうこう)に薬剤を浸透させる「VensiCare」を開発している。投与時、注射針を一切使用しない画期的な医療機器だ。

2014年8月に設立されて以降、排尿障害の一つである「過活動膀胱(OAB)」治療の効率化に尽力しており、患者の身体的負担の軽減・生活改善に一役を買っている。

VensiCareを研究開発するにあたり、同社は世界中の個人投資家から50万ドルを調達。さらに2016年4月、アイルランドのダブリンで行われたスタートアップコンテストで3位に入賞する等、医療技術の分野において世界から注目を浴びている企業だ。

過活動膀胱には「ボトックス」が有効?

過活動膀胱とは、自分の意思とは無関係に膀胱が収縮してしまう病気の事を指し、「急に強烈な尿意に襲われる」、「一日何度もトイレに行く」、「我慢できず失禁してしまう」といった症状が現れる。日本国内だけでも、800万人を超える40歳以上の男女が過活動膀胱だと言われており、8人に1人が悩まされているという計算になる。

このような膀胱障害を軽減する治療法は数多く存在するが、その中でも有効的な手段として「ボトックス注射」というのがある。ご存じの通り、ボトックス注射は美容整形でよく見られるものだが、過活動膀胱を緩和させる効果もあると明らかになっており、近年注目を集めている治療法だ。

注入方法は、尿道口から膀胱鏡と注射針を挿入し、膀胱内部を確認しながら膀胱壁にボトックス(A型ボツリヌス毒素)を打つのが一般的なやり方である。それにより、膀胱の過剰収縮を鎮め、排尿機能を向上させる事ができる。この臨床実験で、7~8割の患者に肯定的な結果が出ており、アメリカでは2013年に米食品医薬品局(FDA)により、過活動膀胱の適応薬として承認を受けた。

VensiCareでより安全なボトックス注入

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注射針なしでボトックス注入できるVensiCare
(出典:Vensica Medical公式ユーチューブ

Vensica社は「膀胱に直接注射するのは、リスクが伴う」と指摘する。同社によると、ボトックスを膀胱全体に行き渡らせるには、膀胱壁に20~30ヶ所も注射しなければならず、投与後に痛みとともに血尿が出てしまう恐れがある。加えて、注射針による感染症も否定できず、安全な治療法とは言いがたいという。

その一方、自社開発のVensiCareは「注射針なし」「超音波で膀胱全体にボトックスを浸透」を特徴としており、上記のリスクとは一切無縁だ。使用方法は、以下の手順となる。

  1. カテーテルを尿道口から挿入
  2. 膀胱内部に到達後、先端に付いているバルーンを膨らませる。
  3. 膨張した膀胱壁とバルーンの隙間に、カテーテルからボトックスを注入
  4. 膀胱壁全体にボトックスを行き渡らせた後、外部から超音波を当てる

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カテーテルバルーンで膨張した膀胱に、超音波を照射している様子
(出典:Vensica Medical公式ユーチューブ

超音波を当てる事で、ボトックスが膀胱壁の内部に入り込み、排尿のコントロールを司る排尿筋まで浸透する。その結果、注射針を使用しなくても過剰収縮を抑制する事が可能となった。

無論、医師側にもメリットはある。注射針だけでなく、膀胱鏡を挿入する必要がなくなる為、治療の簡素化が実現する。手術室を借りる必要も一切ない。そして、同機器があれば医療助手でもボトックス投与ができるようになり、医師は別の治療に専念する事ができ、更なる利益創出も見込まれる。

VensiCareは安全性の確保だけでなく、コストダウンの面でも貢献できる有望な医療機器となるであろう。

とはいえ、まだ開発段階にあるVensiCare。商業化についてVensica社は、「ヨーロッパで2019年初め、アメリカでは2021年初めまでに実現できるだろう」と予測している。無痛治療のニーズが高まっている今、是非とも実用化を願うばかりだ。

会社概要

会社名 Vensica Medical
CEO Avner Geva
設立年 2014年
拠点 イスラエル
社員数 1-10人規模
事業内容 超音波を用いた膀胱向け医療機器の開発
主な商品 VensiCare
会社URL http://vensica.com/
受賞歴 2016 Innovation in MedTech Dublin Conferenceのスタートアップコンテストにて3位入賞

メンバー紹介

Avner Geva

Avner Geva
創業者・CEO
経験豊かなバイオメディカル専門のエンジニアである。設立前は医療機器メーカー数社で、僧帽弁逆流症および膀胱コントロールの改善に関する研究開発に従事。

Leonid Kushkuley

Leonid Kushkuley
超音波専門エンジニア
医療・産業において、超音波活用に関する数々の研究開発プロジェクトに参加。そのキャリアは30年を超え、音響・非破壊検査(NDT)・脂肪細胞除去など多岐に渡る。

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SAKIGAKE編集部

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