鶏やカモも!細胞から作る「人工食肉」で食糧危機を救う-Memphis Meats

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世界中の人々が愛してやまない「肉」。

今や世界の人口の90%以上が肉を食べており、その消費額は年間7,500億米ドル(約82兆円)に上る。さらに、人口増加や新興国の経済発展に伴い、2050年までに食肉需要は約2倍に拡大するといわれている。

しかし、牛やニワトリなどの家畜は無限にある訳ではなく、このままのペースで消費し続けると供給を上回り、世界から肉がなくなってしまう恐れがある。また、森林の大規模伐採、温室効果ガスの排出、水の大量消費など、家畜の飼育活動が環境破壊を助長する要因となっていることも否定できない。

とはいえ、肉を主食としている国が多い中で、生産規制を呼び掛けるのは現実的ではないだろう。そこで、近年スタートアップ企業を中心に「細胞を使って人工的に食肉を生成する」プロジェクトが進行しており、従来の肉に代わる存在となることを夢見て、日々研究に勤しんでいる。

今回紹介するのは、そのうちの1社である米国のバイオテック企業、Memphis Meats社だ。

食糧問題などの救世主となりうる培養肉

このような細胞から作る人工肉を、一般的に「培養肉」と呼ばれている。

作り方を大まかに説明すると、次の通りになる。

  1. 生きた家畜から筋肉細胞を採取
  2. その中から自己複製が可能な細胞を厳選し、抽出
  3. 肉の味、におい、質感をもたらす細胞を把握
  4. 選ばれた細胞を組織培養し、培養肉を生成

この培養技術は、将来の食糧問題を解決する重要な切り札になると位置付けられている。つまり、食肉を形成する細胞を人工的に増やすことにより、家畜の命を奪わずに肉を大量生産することが可能となるのである。

また、これらの工程に広大な土地はいらず、多くの家畜を肥育する必要がないため、森林伐採および温室効果ガスの削減、水資源の節約など、環境保全の面においても注目度が高い。従来の食肉生産と比べ、最大90%も削減・節約ができるという。

2013年8月、オランダ・マーストリヒト大学教授のマルク・ポスト氏が、世界で初めて牛の培養肉を開発し、ロンドン市内にて「培養ビーフバーガー」の試食会が行われた。

Memphis Meats社製「クリーン・ミートボール」


(画像左)調理中のクリーン・ミートボール(画像右)クリーン・ミートボールを乗せたパスタ(出典:Memphis Meats公式ページ

2015年の創業以来、「手軽でおいしく、かつ持続可能な本物の肉を提供すること」を目標に、試行錯誤を繰り返してきたMemphis Meats社は2016年2月、培養肉で作ったミートボールをメディアに初公開した。

厳しい衛生管理下で生まれた同商品は、クリーン・ミートボールと呼ばれ、「清潔」「安全」「栄養満点」の3拍子が揃った培養ミートボールだ。なお、作られた場所は実験室である。


クリーン・ミートボールを試食する女性(出典:Memphis Meats社公式YouTube

試食会に参加した女性は、戸惑いの表情を見せながらも「ミートボールのような味。正にミートボールです」と話し、人工的に作られたミートボールを高く評価した。

鶏と鴨の培養肉を世界で初めて発表


(画像左)鶏の培養肉を使用したフライドチキン(画像右)鴨の培養肉を使用したダック・アロランジュという料理(出典:Memphis Meats公式ページ

さらに1年後の2017年3月、同社は牛肉だけでなく鶏肉と鴨肉の生成にも成功。家禽類の培養肉製造を実現したのは、世界で初めての快挙である。

クリーン・ミートボールと同様、メディア発表前に試食会が行われ、鶏肉はフライドチキン、鴨肉はダック・アロランジュ(ロースト後、オレンジ風味を加えた料理)という形で提供された。参加した25人に試食させたところ、全員が「鶏肉、鴨肉ともに本物の味だ」と評価したという。

450gで約196万円…製造コストが壁

このように、世界中の肉食文化に革命を起こす可能性を感じさせてくれる培養肉だが、量産体制にする上で大きな課題がある。

培養肉を製造するには莫大なコストがかかってしまい、技術者の頭を悩ませているのだ。同社によると、クリーン・ミートボールの開発時点で、1ポンド(約450g)当たり18,000米ドル(約196万円)を費やしたという。

また、鶏の培養肉を試食した参加者から「味はおいしいが、スポンジみたい」という声があり、食感に関してもまだ改善の余地がありそうだ。

環境にも動物にも優しい食文化へ

現在、上記2点の改善に注力している同社は、富裕層向けではあるが2021年までに商業化を目指している。

地球にも動物にも優しい人工食肉が普及すれば、環境破壊を反対する人や、肉を食べることに後ろめたさを感じる動物愛護の思想を持つ人にも、安心して口に運べるのではないだろうか。

一般家庭の食卓で楽しむのはまだ当分先の話だが、培養肉が人間に受け入れられることで、食糧や環境問題を解決する一助になることを期待してやまない。Memphis Meats社の今後の活躍に要注目だ。


The World’s First Clean Meatball(出典:Memphis Meats社 YouTube公式ページ


Historic first: clean poultry tasting(出典:Memphis Meats社YouTube公式ページ

会社概要

会社名 Memphis Meats
CEO Uma Valeti
設立年 2015年
拠点 アメリカ合衆国 Silicon Valley, San Francisco
社員数 2-10人規模
事業内容 培養肉の研究・開発
主な商品 牛・鶏・鴨の培養肉
会社URL http://www.memphismeats.com
沿革 2015年 創業
2016年2月 牛肉を使った培養ミートボールを発表(世界初)
2017年3月 鶏と鴨の培養肉を発表(世界初)

メンバー紹介

Uma Valeti
CEO・共同設立者
メイヨ―医学校卒。心臓専門医として、心筋幹細胞を用いた心臓再生治療に取り組んでいたところ、食肉の培養技術との共通点を見出し、Nicholas Genovese氏と共にMemphis Meats社を設立。

Nicholas Genovese
CSO・共同設立者
Memphis Meats社を設立する前、家族所有の農場で家禽を飼育していた。バイオプロセスの技術者として経験を積み、家畜の幹細胞培養技術の普及に注力。長年ベジタリアンであるが、鶏肉は好んで食べる。

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SAKIGAKE編集部

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