海上ロボットが未知なる海の情報を収集-Liquid Robotics

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地球に残されたフロンティア

私達の住む地球は水の惑星だ。表面積のおよそ7割は、海が占めている。にもかかわらず文明が発達した今日でも、私たちは海のことをあまり知らない。

未知の部分が多く残されているのは、広大な海の情報の収集には、様々な困難がつきまとうからだ。しかし今、そんな海のデータ収集に変革が訪れている。

波の力で進む世界初の無人水上艇

有人艇を常駐させるには危険すぎる場所にも、無人ならば問題がない。Liquid Robotics社が開発したのは無人水上艇Wave Gliderだ。実際これまでに、北極海やスーパー台風といった厳しい環境条件やサメの襲撃にも負けなかった。また、これまで情報収集の為に使われて来たブイ(浮標)よりもコストを抑えることが出来るという。

Wave Gliderのイメージ図(出典:Liquid Robotics社公式ページ)

Wave Gliderは、世界初の波の力を利用して進むことの出来る無人水上艇でもある。燃料不要で1年間の航海が可能だ。サーフボードのような部分の下に「グライダー」がケーブルでつながっていて、この部分が波の力を受けて進んで行く。

更にこれまではエネルギー源としてのみ利用されていた太陽エネルギーを、新型のWave GliderSV3では、推進力に利用することできるようになった。

Wave Gliderには、ソーラーパネル、情報収集の為のセンサーなどに加え、通信機能が備わっており、収集されたデータは衛星通信を介してリアルタイムで陸上へ届けられる。

データ収集プラットフォームとしての大いなる可能性

Wave Gliderは、単なる無人水上艇ではなく、データ収集のプラットフォームとして様々なニーズに対応可能だ。以下に3つの実例を紹介する。

1.密漁対策
いくつもの海外領土を持つイギリスでは、本国から遠く離れた居住地周辺の水域を守るという課題がある。イギリス政府は、ニュージーランドから約4,000km離れた南太平洋上に浮かぶピトケアン諸島周辺の密漁対策に、遠隔操作でWave Gliderをパトロールさせている。

2.生態調査
アメリカでは、スタンフォード大学デューク大学イースト・カロライナ大学の合同研究チームが、カロライナ沖のクロマグロ、シマスズキ、チョウザメに発信機を付けて行動を追跡調査した際、調査の対象海域となったハッテラス沖の厳しい冬にも耐え続けることの出来るWave Gliderが使用された。こうした魚の生息範囲を把握する研究は、気候変動が海洋に与える影響を知るうえでも役立つそうだ。

3.津波監視
日本でも、津波監視に活躍する日が近いかもしれない。神戸大学の杉岡准教授が自ら改良したWave Gliderを西ノ島沖で試験航海を行うなど、同機を組み込んだ津波監視システムの実用化に向けた試験が進められている。
(参照:JAMSEC ベクトル津波計によるリアルタイム海底津波監視システムの実海域での試験観測に成功
MIT Technology Review 「神戸大学の杉岡准教授、津波監視ロボットを試験航海」)

海の情報化を目指すLiquid Robotics社

他にも、潜水艦の監視、石油ガス業界向けの海洋データ提供などにも使われるなど、活躍の場の幅広さが魅力のWave Gliderだが、同社の掲げるビジョンはもっとスケールが大きい。

同社が目指しているのは「デジタル・オーシャン」だ。陸の上の世界がインターネットでつながったように、海もつながることを目指している。実現すれば、海底から海上、遥か上空の人工衛星までネットワーク化され、海洋に関する情報へ瞬時にアクセスできるようになるという。

15世紀に始まった大航海時代は、歴史上の大きな転換点だった。Liquid Robotics社の描く「デジタル・オーシャン」は、21世紀における転換点となるかもしれない。

会社概要

会社名 Liquid Robotics
CEO Gary Gysin
設立年 2007年
拠点 アメリカ カリフォルニア州
社員数 51-200人規模
事業内容 自律型海洋ロボットの開発、海洋データの提供
主な商品 Wave Glider, SHARC
会社URL http://liquid-robotics.com/
沿革 2005年 非営利科学研究組織Jupiter Research Foundationの代表John Rizzi氏がザトウクジラの歌を録音するために共同創業者のHine親子に錨を使わずに所定の位置に留まることの出来るデータ・ブイの開発を依頼する
2007年 Liquid Robotics社創業
2010年 ウォール・ストリート・ジャーナル紙の技術革新賞、ロボット工学部門で受賞(参照:The Wall Street Journal 2010 Technology Innovation Awards)
2012年 ファスト・カンパニー誌が選ぶ2012年最も革新的な企業50社のうちの1社に選出される(参照:Fast Company “The Most Innovative Companies of 2012”)
2013年 世界経済フォーラムが選ぶ世界的に革新的な企業「テクノロジー・パイオニア」23社のうちの1社に選出される。(参照:World Economic Forum “Technology Pioneers 2013 Pushing New Frontiers”)
2013年2月14日 サンフランシスコから出発したPacX Wave Gliderのベンジャミン・フランクリンがオーストラリアに到着したことにより、自律型無人水上艇による航海の最長距離記録としてギネス世界記録に認定される(参照:Guinness World Records “Longest journey by an unmanned autonomous surface vehicle”)
2013年4月 Power Generation and Utilization(発電と利用)部門においてエジソン賞金賞を受賞
2014年 ファスト・カンパニー誌が選ぶ世界の最も革新的なロボット企業10社のうちの1社に選出される(参照:Fast Company “The World’s Top 10 Most Innovative Companies in Robotics”)
2015年 エコノミスト誌主催のWorld Ocean Innovation Challengeにおいてトップイノベーターとして選ばれる
2016年 ボーイング社により買収

メンバー紹介

 

Gary Gysin
社長 CEO
カリフォルニア大学サンタクルーズ校にて経営学学士号を取得。エグゼクティブとしての経歴が30年以上というベテラン。これまでに革新的技術、再生可能エネルギーやクラウドコンピューティングといった分野の企業でCEOやEVP(執行副社長)として市場でのリーダーシップを確率する等の実績を上げてきた。

Roger Hine
CTO 共同創業者
ウェズリアン大学で経済学学士号、スタンドード大学で機械工学修士号を取得。機械工学士でロボット工学の専門家であると同時に、ビジョンを持ち、決断力のある起業家でもある。Wave Gliderの発明者。

Graham Hine
グローバルパートナー開発担当SVP(上級副社長) 共同創業者
コロンビア大学でコンピューターサイエンス、クレアモント・マッケナ大学で経営工学の学士号をそれぞれ取得。ビジネス、経営とテクノロジーに明るく、Liquid Robotics社が小さなスタートアップから、自律型海洋ロボット業界のリーダーへと成長することに大きく貢献した。

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SAKIGAKE編集部

SAKIGAKE編集部

海外のスタートアップ、テクノロジーに関する最新情報を発信していきます。 海外の起業家たちが、何の課題に目を向け、どんなことを仕掛けようとしているのか。 最新技術だけでなく、未来を創ってきた人や、これから未来を創ろうとしている人の生活・人生もご紹介します。
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