「ひも1本」で操れる凧揚げ式の無人ヘリが世界の真実を記録する-Fotokite

CATEGORY: STARTUPS

TAG:

Fotokite社が開発した空撮用無人ヘリは、GPSレシーバーやRCコントローラーといった既存の無人ヘリの制御方法をあえて捨て、「ひも1本」での操縦を可能にするシンプルな機構を持つ。初代モデルの「Fotokite Pro」は、機動的な空撮を必要とするジャーナリスト向けに放送局での導入例もあるが、一般消費者向けに開発した2代目モデル「Fotokite Phi」は「Pro」からさらに小型軽量化を進め、誰もが手軽に航空写真を撮ることができる世界を目指している。

糸巻き型コントローラーで操縦する無人ヘリ


機体からリーシュワイヤーが延びる(出典:Fotokite社公式サイト

Fotokite社が開発したクアッドコプター型無人ヘリの注目点は、ヘリの機体からユーザーの手元のコントローラーに向けて1本のリーシュワイヤー(綱線)が延びているところだ。Fotokite の「kite」とは「凧」のことだが、このリーシュワイヤーが「凧糸」にあたる。

操縦のために特別なスキルは必要なく、電動の糸巻き式コントローラーを使って高度やアングルを操作し、フルHDのライブ映像を撮影できる。そこがRC無線で操縦する既存の無人ヘリや自律運転型の空撮ドローンなどとFotokiteが決定的に異なる設計上の特徴だ。

コントローラーから延びるリーシュワイヤーの「張り」を認識するIMU(慣性計測装置)機構を備える代わりに、RCレシーバーやGPS制御モジュールなどを機体から排し、軽量化を実現した。リーシュワイヤーを通して電源を供給し、約10時間の飛行撮影が可能だ。(参照:Fotokite社公式サイト)

撮影に使うカメラは付属せず、GoPro社から発売されているアクションカメラ「HERO」シリーズをユーザーが後付けで機体に据え付けて使用する。

電動糸巻き型コントローラーで操縦する(出典:Fotokite社公式サイト

このような機体の構造上、Fotokite Proが飛行する高度と飛距離は、このリーシュワイヤーの長さによってあらかじめ決められている。Fotokite Pro付属のリーシュワイヤーの長さは20メートルだ。この範囲ではフライトできる領域外に機体が出て行かず、またユーザーが機体を見失うこともなく安全性は高いといえる。

また、万が一、落下や衝突による物理的な傷害や撮影対象の個人情報などといったプライバシーに関わる問題が生じた場合などにも、リーシュワイヤーがFotokiteとユーザーを結びつける視覚的なリンクとして機能する。リーシュワイヤーはその操縦責任主体(=撮影者)が誰であるかを明確に示しているため、問題が発生したときに誰が責任者なのかわからない、ということがなくなる。リーシュワイヤー自体がFotokiteの動きについての説明責任を果たしていることになる。

航空写真は世界の「真実」を伝える

さらに、Fotokite Proのスペック的な特徴は、折り畳んで専用のケースに入れて持ち運べるサイズ(540×340×80mm)にしている点だ。すでに英BBCなどで導入実績があり、機動的な撮影が必要とされるフォトジャーナリストやビデオジャーナリストの要望に応えられる設計になっている。


2011年12月、ロシアで勃発した大規模なデモ(出典:Sergei Lupashin氏のTEDトーク

Fotokite社創業者のSergei Lupashin氏自身が2014年のTEDトークで述べているように、機動的に空から世界を記録するツールとしてFotokiteが開発される発端はロシアにあった。(参照:TED.com「Sergei Lupashin: 空飛ぶカメラ、ただしリード付き)

Sergei氏の生まれ故郷であるロシアで2011年12月に連邦選挙の不正に対する有権者の激しい反対運動が勃発した。だが、ロシアを含む世界のメディアはこの動向について無視を決め込んだため、しばらくその全貌が誰にもわからなかった。しかし、そのとき趣味で空撮を楽しんでいた愛好家たちの間でたまたま撮影されたデモの全体写真が公開され、それを見たSergei氏は激しい衝撃を受ける。そのたった1枚の写真を見た時の衝撃から、空撮無人ヘリがジャーナリズムにとって必需品となるとSergei氏は考えたのである。

チューリヒ工科大学内の飛行ロボット工学研究所Flying Machine Arenaに在籍していたSergei氏は、同研究所でFotokiteの原型となる「ひも付き無人ヘリ」の技術コンセプトを考案することになるが、その発想の根底にはジャーナリズムの根源を問う思考があったのである。

2代目モデル「Phi」はクラウドファンディングで資金調達

一般消費者向けモデルとして開発した2代目モデルの「Fotokite Phi」はクラウドファンディングで開発資金を募り、Indiegogo「Fotokite Phi: Aerial Videos Made Easy」製造を開始した。本体のみで249ドル(約2万8000円)、カメラは別売りでGoPro「HERO」シリーズのうち互換性のあるモデルを搭載できる。リーシュワイヤーの長さは8メートルまで延ばすことができ、登山や雪そり、遺跡探索などのレジャーでの利用が想定される。

「Fotokite Phi: Aerial Filming Made Easy」(Fotokite社公式YouTubeチャンネル)

Fotokite Phiはワインボトルに収まる程度のサイズで、折りたたんで専用のケースに入れて、どこへでも手軽に持ち運びできる。(参照:Fotokite公式サイト)

連続飛行時間は最大約13分と「Pro」より短時間だが、誰もが手軽に航空写真を撮ることができる世界が着実に近づいてきている。Fotokiteの今後の普及拡大に期待したい。

会社概要

会社名 Fotokite
CEO Chris McCall
設立年 2014年
拠点 スイス・チューリヒ
社員数 2-10人規模
事業内容 小型空撮無人ヘリの開発製造
主な商品 Fotokite Pro、Fotokite Phi
会社URL http://www.fotokite.com
沿革 2014年 創業
2015年 ualcomm Venturesが主催するQualcomm QPrize Europeを受賞(参照:Qualcomm 社公式サイト)
2017年 欧州ロボティクスフォーラムで「Tech Transfer award 2017」を受賞(参照:start up ticler.ch )

メンバー紹介

Chris McCall
CEO
カリフォルニア大学卒業後、スクリップス海洋研究所でエンジニアリングアシスタントを務める。TEDxZurich 2015 では、講演者のキュレーションを担当。2014年、Fotokite社のCTOとなる。2016年からCEO。(参照:Linkedin

Sergei Lupashin
CTO
ロシア生まれ。米コーネル大学卒業後、チューリヒ工科大学内の飛行ロボット工学研究所「Flying Machine Arena」にポスドク研究員として在籍中にFotokiteの原型となるひも付き無人ヘリの技術コンセプトを考案。2014年、Fotokite社を創業、CTOとなる。(参照:Linkedin

TAG

WRITER

SAKIGAKE編集部

SAKIGAKE編集部

海外のスタートアップ、テクノロジーに関する最新情報を発信していきます。 海外の起業家たちが、何の課題に目を向け、どんなことを仕掛けようとしているのか。 最新技術だけでなく、未来を創ってきた人や、これから未来を創ろうとしている人の生活・人生もご紹介します。
MEDIA |  |