逆転発想?!太陽熱を利用して石油生産をエコに—GlassPoint Solar

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我々は、車の燃料であるガソリンやストーブに使われる灯油、プラスチック製品や合成ゴムなど様々に形を変えた石油に囲まれて暮らしている。現代社会は石油に支えられて成り立っていると言っても過言ではない。

石油が未だ枯れない理由

1970年代には石油資源があと30年で枯渇すると言われていたこともあったが、実際にはこれだけ世界的に利用されていても、石油は今もなお採掘され続けている。この背景には、採油技術の進歩による石油回収率の向上や、従来採掘されていなかった非在来型と呼ばれる石油の利用がある。

後者の非在来型の石油の中には、シェールガスやオイルサンドなどメディアに取り上げられ注目を集めてきた資源以外に、重質油と呼ばれるものもある。この重質油は文字通り重質で粘性の高い油の為、採掘には特別な方法が必要になってくる。いくつかの方法があるのだが、その一つに、水蒸気の熱により油の粘性を低下させて流動性を高めるというものがある。

鏡で熱を集めるGlassPoint Solar社のギガソーラー施設


(出典:GlassPoint社公式サイト

この石油採掘に使われる水蒸気を、太陽熱を利用して発生させる世界初の施設を作ったのが米国カリフォルニア州に本社のあるGlassPoint Solar社だ。2011年、アメリカでも有数の石油生産地カリフォルニア州カーン郡にあるBerry Petroleum社の油田に建設された熱出力で300kwのソーラー施設である。同社によれば、水蒸気の発生には、化石燃料である天然ガスを燃焼させることが一般的だという。

このカリフォルニアでのプロジェクトを足がかりに、現在ではオマーンで2017年完成予定の「Miraah」プロジェクトが進められている。アラビア語で鏡という意味のこの施設は、総出力1ギガワット以上で、一日に6000トンの水蒸気を発生させる事が出来る。


(出典:GlassPoint社公式サイト

特徴的なのは、プロジェクト名が示す通り太陽熱を集める為に鏡が使われていることだ。鏡はごく薄い湾曲したアルミの板で、温室内につり下げられている。温室を使っているのは、砂塵嵐などの過酷な環境から鏡を守るためだ。

鏡は、太陽の移動に合わせて角度がモーターにより調整され、熱エネルギーを最大限に活用できるようになっている。鏡によって集められた太陽光で、水が通るパイプを温めて水蒸気を発生させる。ちなみに日没後は、モーターが自動で鏡をクリーニングするそうだ。(参照:Forbes誌 “Ironic Or Economic? Oil Giant To Build World’s Largest Solar Project”)


(出典:GlassPoint社公式サイト

同社によれば、MiraahはオマーンのAmal油田で使われる水蒸気の3分の1を賄うに過ぎないが、削減できる炭素排出量は年間30万トンで、これは6万3千台分の車の年間排出量に相当するという。オマーンでは、石油採掘で天然ガスが大量に使われていて、国全体で消費される天然ガスの5分の1を占めているそうだ。Miraahが成功すれば、他の油田にも採用される見込みだ。

石油採掘に太陽熱を利用する意義

石油を始めとした化石燃料の燃焼が、地球温暖化の原因の一つだと言われているが、その生産を直ちに0にすることはおよそ現実的ではない。石油生産に太陽熱を利用するのは一見、矛盾するようにも思えるが、石油の生産課程で発生する温暖化ガスを抑えることが出来るなら実に現実的で効果的な温室ガス削減方法だと言えるのではないだろうか?同社の技術がより一層発展していくことに期待したい。

会社概要

会社名 GlassPoint Solar
CEO Zaki Selim
設立年 2009年
拠点 アメリカ カリフォルニア州
社員数 201-500人規模
事業内容 石油産業向けの太陽熱利用システム開発
主なプロジェクト Miraah
会社URL http://www.glasspoint.com
沿革 2009年 創業
2010年 Chrysalix Venture Capitalから初期資金を確保
2012年 オマーンに地域統括会社を設立
2012年 ロイヤル・ダッチ・シェルから投資を受ける
2014年 クウェートに出張所を設立
2014年 State General Reserve Fund of Omanがロイヤル・ダッチ・シェルと共同で5300万ドルを出資、主要株主となる
2015年 世界最大級のソーラー施設となるMiraah着工

メンバー紹介

Zaki Selim
会長兼CEO
カイロ大学で機械工学の学士を取得。ハーバード・ビジネス・スクールのマネジメント・プログラムを受講。世界最大の油田サービス企業シュルンベルジェ社に29年間勤務し、中東・アジア地域のプレジデントも務めた。

Pete von Behrens
CTO 共同創業者
NanoMuscle社主席技師として、フォルクスワーゲン、BMW、メルセデス・ベンツの車両に採用されている同社製品をデザインした経歴を持つ。GlassPoint Solar社創業以前に、モーター関連の問題に対して電気機械装置によるソリューションを提供するAlternative Motion Solutions社を創業。

Rod MacGregor
取締役 共同創業者
GlassPoint Solar社をPete von Behrensと共に創業した後、2016年12月までCEOを務めた。同社以外にも、エリザベス女王賞を受賞したInsignia Solutions社などを起業した経験がある。また30年以上に渡り、NanoMuscle社社長兼CEOを務めるなど複数のグローバル企業を指揮してきた。

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SAKIGAKE編集部

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海外のスタートアップ、テクノロジーに関する最新情報を発信していきます。 海外の起業家たちが、何の課題に目を向け、どんなことを仕掛けようとしているのか。 最新技術だけでなく、未来を創ってきた人や、これから未来を創ろうとしている人の生活・人生もご紹介します。
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