実験室なしで新薬開発!?注目のロボットクラウドラボとは?-Transcriptic

CATEGORY: STARTUPS

TAG:

新薬の開発にあたって人類はこれまで多くの自然天然由来の産物や、様々な化学物質を精製・合成しながら候補化合物を作り上げてきた。

しかしながら、化学実験から生物を使った試験を経て、ヒトでの安全性と有効性を確かめたのち、新薬として世に送るまでの歳月は9~17年という長い歳月を要する。さらに1品目あたりの薬の開発費用は200~300億円にも達すると言われている。この長期にわたる開発時間と膨大な開発費用を縮小し、研究者の負担軽減となるロボットクラウドラボを開発したTranscriptic社を紹介しよう。

時代は“ゲノム創薬”

現在、私たちが医療の場で使用している医薬品の99%近くは50年前に世の中に存在していなかった。言いかえると、この50年余りの間に今日の医療になくてはならない薬のほとんどが新薬として登場してきたと言える。薬効のある置換基をもった化合物を合成し、手あたり次第にヒットを探索する手法が主であった時代、これらの候補化合物が新薬になる率は10,837分の1と決して高いものではなかった。参照(日本製薬工業協会ホームページ)

しかし近年では遺伝子工学の発展により、薬剤はコンピューター上でスピーディーに設計される“ゲノム創薬時代”となった。候補化合物としての数も増える上に、ゲノム情報に裏打ちされた根拠があるがゆえに、新薬になる確率も高い。次々と設計される有用な候補化合物が新薬に申請されるため、よりハイスループットなシステムが要求されるようになった。


出典:TRANSCRIPTIC WORKCELL社公式ページ

Transcriptic社が提供するのは、研究者が新薬申請するために必要なin vitro試験(=非臨床試験)を主体とした実験を行うロボットクラウドラボだ。カテゴリーとしては、300以上のターゲットに対応したバイオマーカーアッセイ、細胞株の保管・培養から行う細胞アッセイ、毒性や相互作用を証明する生化学的試験が用意されている。

ロボットはTranscriptic社独自のインフラストラクチャにより信頼性の高いパフォーマンスが確保され、人の手を介する事象を最小限に抑えている。また必要なデータを迅速かつ確実に生成するために、クラウド経由で利用可能なオンデマンドラボオートメーションによって強化されている。

料金については、実験を行う待ち時間で分類されている。通常は1週間以降からの試験開始で月額600ドルの設定だ。優先度が高く急いでデータが欲しい場合、8時間以内に実行するプライベートワークセルが選択され、月額25000ドルの価格となる。

すなわち研究者はパソコンを開いて、Transcriptic社の専用サイトから自分に必要な実験プロトコルを選択するだけであり、研究室や特別な設備・スタッフを持つ必要がないのだ。Transcriptic社と同じくサンフランシスコに拠点をもつCounsyl社(http://sakigake.tokyo/archives/3102)も、独自のロボットラボを有するバイオテクノロジー企業である。低コストで正確なデータ採取を迅速に行うためには、優秀なエンジニアが構築するロボットラボが主流となったと言えよう。

ロボットクラウドラボ開発の原点

【動画】MAX HODAK らが語るTranscriptic社(出典:Transcriptic社公式ホームページ

創設者のMax(現在CTO)はデューク大学医療センターでライフサイエンスの分野での研究のかたわら、ソフトウェアエンジニアとして才能を開花していた。同氏は2010年にNaviance社に売却された、高校生のための大学受け入れのマッチングを行うMyFit社や、他にもいくつかの会社の起業に携わっている。

Transcriptic社もMaxが大学研究室の一員として、「ロボットでの実行に転換すべき」と感じた基本的な実験室作業の非効率性の問題を解消するために立ち上げた会社である。2013年、Transcriptic社がクラウドソースグループの投資家からオンラインでシード投資を開始したとき、ホワイトハウスは彼を“クラウドファンデーションの先駆者”と称した。また2015年にForbes 30 under 30 in Healthcareに選出されている。

Transcriptic社のような医薬品開発の観点で行う受託ラボでは、その化合物特性による細かな対応が求められ、高度な技術が必要と言える。より柔軟な発想と、多くのシチュエーションに伴う判断力・経験値を有していなければ受託クラウドラボの運営は難しいだろう。これこそMaxが大学時代に経験したバックグラウンドをもって結集した、新しい研究施設の形態と言えるだろう。日夜目覚ましい新薬開発競争を繰り広げる製薬業界において、これからの動向から目が離せない注目の企業だ。

会社概要

会社名 Transcriptic
CEO YVONNE LINNEY, PHD
設立年 2012年
拠点 アメリカ カルフォルニア州 メンローパーク
社員数 11-50人規模
事業内容 ラボ自動化、スクリーニングおよびアッセイへのオンデマンドアクセスを特色とする、CRO(=受託臨床試験実施機関)
会社URL https://www.transcriptic.com
沿革 現在16の投資ファンドおよび投資家より、2億7770万ドルの資金を調達 参照(Crunchbase)

メンバー紹介

 

YVONNE LINNEY, PHD
役職 最高経営責任者(CEO)

  • 1980年-1983年 英国ワーウィック大学の微生物学およびウイルス学の学士号
  • 1983年-1986年 英国のレスター大学の遺伝学の博士号を取得
  • 1993年-2003年 Amersham International
    現GE Healthcareのシニア・リーダーシップ・チームの主要メンバーであり、Human Genome Projectの創立メンバーとの共同作業も含まれる
  • 2005年-2006年11月 Siemens
    Healthcare(前Bayer Diagnostics社)の分子診断とグローバル戦略マーケティングのディレクター
    Caliper Life Sciencesのマーケティング&プロダクトマネージメント担当シニアディレクターを歴任
  • 2006年11月-2015年1月 Agirent Tecnologiesのライフサイエンスゼネラルマネージャー
  • 2015年 COOとしてTranscripticへ参加
  • 2016年12月 TranscripticのCEOおよび役員

(参照Linkedin)

MAX HODAK
役職 最高技術責任者(CTO)兼創設者

  • 2015年にForbes 30 under 30 in Healthcare honor date Jan 2015 honor issuer Forbesに選出される (参照http://www.forbes.com/pictures/ggik45ggl/max-hodak-25/)
  • 2013年にWhite House Champion of Change honor date Jun 2013 honor issuer The White Houseに選出される
    (参照https://www.whitehouse.gov/blog/2013/06/06/collaborating-transform-scientific-research)
  • 2007年-2012年 デューク大学の生物工学の学士号を取得
  • 2008年1月-2010年10月 MyFitの共同創業者兼CEO→2010年10月にNavianceに売却
  • 2010年9月-2011年3月Pbworksのソフトウェアエンジニア
  • 2011年3月-2012年3月 Inporia(サイトなし)のCTO(最高技術責任者)を務め、電子商取引のWebサイト上でリアルタイムに近い価格変動を追跡するソフトウェアを設計
  • 2008年2月-2012年5月 デューク大学医療センター 研究助手
  • 2012年2月-2016年12月 TranscipticのCEO兼創設者
  • 2016年12月-現在 TranscripticのCTO

(参照Linkedin)

TAG

WRITER

SAKIGAKE編集部

SAKIGAKE編集部

海外のスタートアップ、テクノロジーに関する最新情報を発信していきます。 海外の起業家たちが、何の課題に目を向け、どんなことを仕掛けようとしているのか。 最新技術だけでなく、未来を創ってきた人や、これから未来を創ろうとしている人の生活・人生もご紹介します。
MEDIA |  |