ディープラーニング投資アルゴに金融市場を駆け巡らせる-AlpacaDB

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自然言語処理や画像のパターン認識に強みを持つディープラーニング(深層学習)。2013年に横川毅CEOがシリコンバレーを拠点に創業したAlpacaDB社は、画像認識モデル作成の深層学習プラットフォームの開発からスタートし、現在は深層学習を株式や為替の投資アルゴリズム作成に応用するサービスの立ち上げを進めている。世界の金融市場をHFT(High frequency trading:高頻度取引)やクオンツが席巻するなか、深層学習によるトレーディング業務の効率化を次の切り札と見る国内外の金融機関から熱い注目を集めている。

画像認識から金融市場分析へ舵を切る

コンピューターが人間の脳のように学習する情報処理技法であるディープラーニングは、自然言語処理や画像のパターン認識に強みがあるとされ、AlpacaDB社も創業当初は「Labellio(ラベリオ)」(公式サイト:https://www.labell.io/)と呼ぶ画像認識モデル作成の深層学習プラットフォームの開発に軸足を置いていた。

その後Fintech領域へ事業を特化する形で軸足を大きく転換するに至る。Labellio事業は2016年1月に京セラコミュニケーションシステムに譲渡し、(参照:「KCCSが画像認識モデル作成サービス「Labellio」をAlpacaから譲受し、AI関連技術を強化」)その代わりに開発に注力したのが金融市場の時系列解析に深層学習を応用した投資アルゴリズム作成プラットフォームのCapitalico(キャピタリコ)だった。(参照:「TechCrunch」2015年10月19日付「画像認識からデイトレへ、深層学習のAlpacaDBが意外なピボットで100万ドルを新規調達」

1万5000の投資アルゴリズムが走るAlpacaAlgo


AlpacaAlgoのウェブアプリの画面。表示されるチャートを見ながら「売り」と「買い」のタイミングを指定するだけでオリジナルの投資アルゴリズムを作成できる

Capitalicoの機能を増強した現行バージョンである「AlpacaAlgo」は、ユーザーが設定する投資アイディアを即座にアルゴリズムに落とし込み、外国為替証拠金取引(FX)の時系列チャートを解析するものだ。ユーロドルやドル円など主要37通貨ペアをサポートしており、すでに1万5000もの投資アルゴリズムがAlpacaAlgo上で作成されている。

ユーザーは、AlpacaAlgoのウェブアプリの画面に表示されるチャート上に「売り」と「買い」のタイミングをマウスでドラッグして指定するだけで、自身の仮説に基づいた投資アルゴリズムを作成できる。これまでのシステムトレードでは、こうした作業にはプログラミングが必要だったが、AlpacaAlgoではプログラミングの必要がなく、誰もが即座に自らの投資アイディアをアルゴリズムに落とし込むことができるのが大きな魅力だ。

時系列データはAIにリアルタイムで監視され、該当するチャートパターンが出現した場合、自動で売買を行うか、ユーザーに売買シグナルを発信する仕様となっている。


AlpacaAlgoのウェブアプリの画面。超高速データストレージでバックテストも即座に完了する

また、AlpacaDB社が独自開発した「MarketStore」と呼ぶ超高速データストレージを備えているため、アルゴリズムの妥当性を検証するバックテストも容易に繰り返し行うことができ、トレーディングの勝率を高めるための作業が大幅に効率化できる。(参照:AlpacaDB公式サイト

「酒田五法」のチャートパターンを検出、銘柄発掘に威力


AlpacaScanのウェブアプリの画面。リアルタイムで日々のチャートパターンを検出する

投資アルゴリズムの作成を通してトレーディングの自動化を行うAlpacaAlgoと並行して開発が進められているのが「AlpacaScan」と呼ぶサービスだ。こちらは米国市場に上場している7000銘柄の過去の株価データを解析し、テクニカル分析で用いるチャートパターンが出現した場合にシグナルを発するサービスだ(現時点で日本株は未対応)。

ユーザーはまず、各種のフィルターを設定することで自身の投資スタイルやリスク許容度に応じて、「ブル」志向か「ベア」志向かの投資の方向性や、時価総額のサイズの範囲、株価の割安さを絞り込むPER(株価収益率)などを大まかに指定する。すると、そのスタイルに見合ったチャートパターンを持つ銘柄が検出されるわけである。

AlpacaScanではローソク足チャート分析を採用し、日本の伝説の相場師として知られる本間宗久が開発し300年の歴史を持つ「酒田五法」の伝統的なチャートパターンである「包み線」、「三川明けの明星」、「カラカサ」などをリアルタイムで検出することが可能だ。(参照:AlpacaDB社公式サイト

こうして投資銘柄の発掘を効率化し、テクニカル分析にかける時間を大幅に短縮することが可能になる。

BE A HUMAN BEING

ディープラーニングを活用するサービスを開発し、投資家のトレーディング作業の効率化を図るAlpacaDB社だが、サービスの立ち上げ当初にCEOの横川毅氏は同社の「技術ブログ」のエントリー「なぜ僕らはCapitalicoをつくるのか」で以下のように述べている。
「お金を稼ぐことへのアクセスをもっとスムーズにして多少でもコモディティ化することで、相対的にお金という秤の価値が下がって他に分散されると考えています。これを、Capitalicoを通じて実現して、人が”人らしく生きる”ことに近づけるよう邁進します」
(出所:http://blog-jp.alpaca.ai/entry/2015/10/30/161709

トレーディングをAIに任せることでお金が人生を阻害する状況を緩和し、人間が人間らしく生きることができる基盤をつくろうとする希望が語られている。そこには、証券会社勤務を経て自らもデイトレーダーとして生計を立てていた時期を経験している横川氏の人生経験からにじみ出る強靱な意志がうかがえる。慶應義塾大学卒業後、リーマン・ブラザーズ勤務など金融業界での経験を積んだ横川氏は、シリコンバレーと東京の日米2拠点を結ぶ日本人起業家としてFintechが変える新たな金融空間の創造に挑んでいる。大胆かつしなやかな発想でグローバル金融市場に切り込む日本人起業家が増えることを期待したい。

ところで、トレーディングをアルゴリズムに任せる取引スタイルを好む投資家はしばしば「草食系トレーダー」と言われるが、AlpacaDB社の社名のAlpacaは南米アンデス山脈に生息するラクダ科の草食動物アルパカを意味する。草食系トレーダーをアルパカになぞらえれば、ディープラーニングと超高速データベースを背にする無数のアルパカが金融市場を駆け巡る姿を見る日は近いと言えるだろう。

会社概要

会社名 AlpacaDB
CEO 横川毅
設立年 2013年
拠点 米カリフォルニア州サンマテオ、東京
社員数 11-50規模
事業内容 金融取引支援プラットフォームの開発
主な商品 AlpacaScan、AlpacaAlgo
会社URL https://www.alpaca.ai/
沿革 2013年2月 AlpacaDB社の前身であるIkkyo Technology社創業
2015年2月 AlpacaDB社設立
2015年6月 画像認識ウェブプラットフォーム「Labellio」の提供を開始
2016年3月 「AlpacaAlgo」の提供を開始
2016年5月 「AlpacaScan」の提供を開始
2017年2月 「NVIDIA Inceptionプログラム」の日本パートナーに選定される
2017年4月 カブドットコム証券にチャート認識サービス「AlpacaSearch for kabu.com」を提供
2017年5月 三菱東京UFJ銀行との協業を開始
(参照:AlpacaDB社公式サイト

メンバー紹介

横川毅
CEO・創業者
2005年、慶応義塾大学卒。大学卒業後、リーマン・ブラザーズに入社。証券化商品などを扱うチームに所属。リーマン・ショック後は野村証券に移籍し、仕組み金融などを手掛けた。2013年2月、AlpacaDB社の前身であるIkkyo Technology社を創業。2015年、AlpacaDB社を設立しCEOとなる。
(LinkedIn: ここがリンクになりますhttps://www.linkedin.com/in/yoshiyokokawa/)

原田均
CTO・共同創業者
2005年、慶応義塾大学卒。Pivotal社やPostgreSQLグローバル開発グループなどを経て、2015年、AlpacaDB社のCTOとなる。
(LinkedIn:ここがリンクになります https://www.linkedin.com/in/hitoshi-harada-02b01425/ )

林佑樹
チーフエンジニア・共同創業者
2005年、慶応義塾大学卒。任天堂やノキアでソフトウェア開発エンジニアとして勤務。2015年、AlpacaDB社のチーフエンジニアとなる。(LinkedIn:ここがリンクになります https://www.linkedin.com/in/yukkinen)

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SAKIGAKE編集部

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