#1 研究者と実業家の顔を併せ持つDavid Schwartz氏に聞く「スタートアップ成功の秘訣」

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今回はイスラエルの大学で教授を務め、IT分野で幅広い研究をしており、起業家の育成にも携わっているジーニアス、David Schwartz氏へインタビューを行いました。研究への想いや、日本の起業家を志すみなさんへのアドバイスまで、たっぷりお話をいただいています。

プロフィール

David Schwartz
PhD
イスラエルのバル=イラン大学で情報システム学の教授を務める。サイバーセキュリティ、モバイルヘルス、ナレッジマネジメント、ソーシャルネットワーク分析、コンピューター・メディア・コミュニケーションといったITの幅広い分野で研究を行っている。実業家としてはイスラエルのリーディングカンパニーの数々で取締役会員を務め、ベンチャーキャピタルファンドApropos IT Venturesを創業し、最高投資責任者を務めた実績がある。

ソーシャルテクノロジーで世界をより良く

―現在はどんな研究をされていますか?

情報技術のソーシャル活用や、ソーシャルネットワークから収集したデータの分析、ソーシャルテクノロジーによる社会貢献に関する研究を行っているSocial Intelligence Labにて、現在主に2つのプロジェクトが進行中です。

・ソーシャルセキュリティプロジェクト

ニュース記事に対するネットユーザーによるコメントが機密情報の漏洩につながるという事態が深刻な問題となっています。記事があえて非公開にしている情報を、ネットユーザーが知らずに記事について議論する際に明かしてしまうのです。この研究プロジェクトでは、こうした情報漏洩を検知・予防することに焦点をあてています。テキスト分析、感情分析、会話分析の技術とソーシャルネットワーク上の非公開なつながりを発見する技術を組み合わせることで、情報漏洩をコンテクストに沿って検知し、漏洩者を特定するのです。

・ソーシャル医療プロジェクト

こちらは特定の病気を持つ患者専用のソーシャルネットワークを作り、参加者に緊急の事態があった場合に他の参加者から治療薬の提供が受けられるようにする仕組みを試験的に運用する研究プロジェクトです。プロジェクトのコンセプトである「救急対応コミュニティ(Emergency Response Communities, ERC)」は、最先端の緊急医療とスマートフォンの技術を利用したクラウドソース型調査の架け橋となるものです。この研究は医療から法学、そしてもちろん情報技術まで幅広い分野にわたるもので、現在は地域ごとにおける従来の救急医療サービス(EMS)に対する効率の比較や、公衆衛生の経済効果についてを研究課題としています。


(出典:Pexels)

この2つのプロジェクト以外にも、IoTを取り入れた高齢者の生活環境のICT化や、ネットオークションでのユーザーの行動から個人の特徴を特定する技術、企業の成長段階やカスタマーエンゲージメントの度合いに基づいたマイクロブログ戦略についての研究も行っています。

―研究の動機や信条は?

Social Intelligence Labには「ソーシャルテクノロジーで世界をより良く」というモットーがあります。情報技術には世の中の役に立ち、人々がより良く、安全で、生産的な生活を送る手助けのできる可能性があります。研究の副産物としてこうした貢献をするのではなく、貢献をすることが研究を導く光にならなければいけません。単に成果を出すのでなく、「意味のある成果」を出さなくてはいけない。これは私自身そして学部の研究生全員のモチベーションとなっています。

失敗を恐れない環境づくりがスタートアップ成功の鍵

日本とイスラエルの共同研究プロジェクトに関わったこともあり、バル=イラン大学大学院の経営管理研究科で起業家養成プログラムの監督も務めているというSchwartz氏に、日本のスタートアップ界や起業家を目指すみなさんへのメッセージもいただきました。

―スタートアップにとってより良い環境を作るには?

スタートアップにとってベストな環境にするには、素晴らしいアイデアや実行力を持った起業家だけでなく、協力的なベンチャーキャピタルや研究と起業活動の両方の面倒をみてくれる大学の存在が必要です。バル=イラン大学には、とても活動的な「起業家クラブ」があり、様々なイノベーション活動やスタートアップの立ち上げに成功するための学びの中心地となっています。こうした活動は日本に導入しても効果が見込めるでしょう。

―起業家のみなさんにメッセージを送るとしたら?

まず一番に大切なのは、リスクと向き合い、失敗を恐れないこと。失敗無しには技術革新は進みません。イスラエルには、リスクと向き合い、多少の失敗ならそのコストを負担し、起業家が何度も何度も挑戦できるように支援するという風土があります。スタートアップの一生にとって逆境こそが、真のマーケットを見つけ、最高の製品を生み出すための唯一の道につながります。


(出典:Pixabay)

次に、早い段階から顧客に貢献し、たとえ事業を立ち上げたばかりの時点でも恐れず自分のアイデアについて顧客と意見を交わすことも重要です。見込み客と対話することで、間違った方向に事業を進めて時間とお金を無駄にしてしまうような事態を防ぐことができます。

最後に、イスラエルに実際に来てみること。最先端の技術を生み出し続けるスタートアップのエコシステムを築きあげてきた私達の経験から直接学んでみてください。

期待の膨らむプロジェクトの数々

―今後の予定は?

・Social Intelligence Labについて

ドイツ、オーストラリア、アメリカとの連携による「救急対応コミュニティ」の大規模な研究プロジェクトを予定しています。イスラエル国営のEMSプロバイダーMagen David Adomとのフィールドトライアルもまもなくスタートするので楽しみです。このフィールドトライアルでは、最高レベルの医療監視の下、実生活中で緊急シナリオへの対応をテストします。

・経営管理研究科について

これからもスタートアップ・メンタープログラムや起業家クラブの毎月のイベントを始めとする最先端の起業家トレーニングを続けていきます。学部自体やヨーロッパ・アジアの大学との交換留学プログラムの拡大も予定しています。

あとがき

研究内容と起業家へのメッセージの両方から一貫して、Schwartz氏の「人とのつながり」を大切にする姿勢が伝わってきました。スタートアップが成功するには起業家自身のやる気や実力だけではなく、VCや大学、それに顧客や他のスタートアップ経験者など、様々な立場からの支えが必要-当たり前のようですが、とても説得力のあるメッセージです。

インターネットを通じた「つながり」を利用したテクノロジーの可能性を拡げるSchwartz氏の研究がどんな成果を出していくのか、楽しみですね。

起業家を志すみなさんは、自ら様々な環境に出向き、色々な人と出会って、自分の支えになるリアルな「つながり」を探し求めるのも良いかもしれません。

さて、今回は大まかな研究内容や日本のスタートアップ界へのメッセージをお届けしましたが、今後は、Schwartz氏の研究内容の詳細、ビジネスとテクノロジーを繋げる方法などにも迫ります!

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SAKIGAKE編集部

SAKIGAKE編集部

海外のスタートアップ、テクノロジーに関する最新情報を発信していきます。 海外の起業家たちが、何の課題に目を向け、どんなことを仕掛けようとしているのか。 最新技術だけでなく、未来を創ってきた人や、これから未来を創ろうとしている人の生活・人生もご紹介します。
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