【東京大学 相澤清晴教授】~世の中にインパクトを与えたい~研究へのあくなき思い 後編

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今回は、東京大学 情報理工学系研究科電子情報学専攻・情報学環の相澤清晴教授にお話しを伺いました。相澤先生は、ライフログの研究の第一人者です。前編では、毎日の食事を写真で記録し、カロリーなどの健康管理が出来る「FoodLog」の研究について、後編では漫画の画像処理の研究及び研究者として大切にしていることについて語って頂きました。

前編リンク:http://sakigake.tokyo/archives/3964

新しい価値・サービスに繋がる。漫画画像処理とは?

―その他の研究はどの様なことをされているのでしょうか?

色々やっているのですが、個人的に面白いと思っている研究としては、電子漫画に対する画像処理の研究です。ビジネスにはなっていませんが、手書きのスケッチを元に2000万もの漫画データ候補領域の中から類似の画像が瞬時にランキング形式で表示され、自分のスケッチを検索されたサンプルをもとに修正することが可能です。


スケッチ検索:左のイラストをもとに電子漫画から類似の画像がランキング表示される。イラストの精度があがると検索結果の精度も上がっていることがわかる
(出典:東京大学 相澤・山崎研究室

手書きのスケッチとサンプルの多様関係を自動的に作成し、間をワーピングすることも出来ますので、素人がスケッチを行う際の補助機能にもなります。オリジナルを残しながらクオリティーを1段も2段も上げてくれる描画支援ツールになりえます。

またスクリーントーンの除去と線画化の研究という地味なことも行っています。従来、古い漫画の色を変えて再刷新しようとする時には、手作業で修正しており多くの時間が必要でした。これを自動化し、領域を切り抜くことによりマスキングがし易くなるようにしています。作業の効率化が見込めるでしょう。


左:オリジナル画像、右:自動でスクリーントーンを除去した画像
(出典:東京大学 相澤・山崎研究室

また漫画の著作権の問題に悩むことなく研究ができるように、マンガ図書館Z(旧絶版マンガ図書館)を運営している赤松健さんに協力を依頼し、学術研究に使えるManga109というデータセットを作りました。

現時点では画像でしか提供できないのですが、1年かけて70名ほどでキャラクターとテキスト(セリフ)のアノテーションをつけました。結果、2万ページに及ぶ109冊の漫画から、キャラクター10万以上、テキスト10数万以上のアノテーションの振り分けが完了しています。今後、エラー修正をして、データを整理して公開する予定です。

以上が漫画に関する研究なのですが、私自身は事業化することが目的ではないので、良いビジネスのアイディアを持っている方がいれば部分的に使用してもらって、ビジネスにも繋がっていけばと考えています。

思い入れで結果は変わる

―最後に研究テーマの見つけ方や先生が大事にされていることについて教えて下さい。

研究テーマについては、新しいインパクトが出せる研究か、という事を考えています。これをやる事で“世の中がこの様に良くなる”とか“変わることにつながる”といった確信が持てるものを研究のテーマにしています。今は問題の解き方はたくさんあります。なので問題をいかにデザインしてオリジナリティあるものにするかが大切だと思っています。

また最近の学生を見ていて思うのは、あらゆる論文を比較してこの論文とあの論文を組み合わせれば面白いものが出来そうだ、ということに目が行き過ぎる学生も多い。小さな技術をつくるためには論理的かもしれません。しかし、それよりも“このような事がやりたい”とか、“これをやったらインパクトがあるはず”という自らの思い込みが大切で、それを追及してほしい。学術の範囲なのですから、想像する理想をもっと考えてほしいと思います。

最後に重要となるのはその思い入れがあるかないかです。これは成功する起業家の方とも通じる部分ではないか思います。採択の難しい会議やジャーナルでもその思いれの部分で結果が変わってくると、何度も感じたことがあります。ある種の執念をもって取り組んでいる学生は、最後の追い込み方が違います。最後の最後まで突き詰めて考えます。それはほんの数パーセントの違いかもしれないですが、結果に大きな違いをもたらします。また自身の研究に対して”良い研究”だと思い入れを持って取り組んでいる学生は、例え失敗したとしても必ず持ち直し再びチャレンジします

デジタルな時代に、あまりデジタルでないですが、私は思いを大切にしていますし、学生にも同じ気持ちで取り組んでほしいと望んでいます。

インタビューを終えて

学生時代からとにかく「実験→発表」を繰り返していたとおっしゃっていた相澤先生。目をキラキラさせて楽しそうにご自身の研究について話しをしてくれました。本当に研究がお好きだという事が、声のトーンや表情からも伝わってきました。

“こんな事がやりたい”という想いを大切に現在も様々な研究に取り組まれています。今後もライフログ研究に留まらず、研究の第一線で活躍されることでしょう。SAKIGAKEとしても先生の研究がどのように世の中を変えていくのか、引き続き注目していきたいと思います。

プロフィール

相澤 清晴 -Aizawa Kiyoharu-
東京大学 情報理工学研究科電子情報学専攻 教授。

1983年 東京大学工学部電子工学科卒業
1988年 大学院博士課程修了 工博
1988年 工学部電子工学科助手
1989年 工学部電気工学科講師
1993年 工学部電子情報工学科助教授
1999年 新領域創成科学研究科基盤情報学専攻 助教授
2001年 新領域創成科学研究科基盤情報学専攻 教授
2006年 情報理工学研究科電子情報学専攻 教授
2009年 情報学環・学際情報学府 教授 
2013年 情報理工学研究科電子情報学専攻 教授
1990年から2年間米国イリノイ大学客員助教授

前編へ:http://sakigake.tokyo/archives/3964

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SAKIGAKE編集部

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海外のスタートアップ、テクノロジーに関する最新情報を発信していきます。 海外の起業家たちが、何の課題に目を向け、どんなことを仕掛けようとしているのか。 最新技術だけでなく、未来を創ってきた人や、これから未来を創ろうとしている人の生活・人生もご紹介します。
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