【東京大学 相澤清晴教授】~世の中にインパクトを与えたい~研究へのあくなき思い 前編

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今回は、東京大学 情報理工学系研究科電子情報学専攻・情報学環の相澤清晴教授にお話しを伺いました。相澤先生は、ライフログの研究の第一人者です。前編では、毎日の食事を写真で記録し、カロリーなどの健康管理が出来る「FoodLog」の研究について、後編では漫画の画像処理の研究及び研究者として大切にしていることについて語って頂きました。

後編リンク:http://sakigake.tokyo/archives/3976

まずは発表!研究者人生の始まり

―先生が研究者の道に進まれたきっかけなどはありましたか?

まず大学院に進学した時の話ですが、とにかく新しいことをやりたいという想いが強かったです。そこで初めに取り組んだのは、画像処理の研究でした。ちょうど研究室に画像処理用の高価なミニコン(当時はミニコンと呼ぶものがあった)が入っていた為、興味を持ち活用したいと考えたのがきっかけです。

とにかく面白そうなことがあるとすぐに調べ、そのアルゴリズムを実装する、そしてより良くならないかと考え改良する、この様に小さなアイディアから幾つも幾つも実験を試みました。

当時の研究室では、若手の先生が海外に出ていて、教授と会う機会が月に1度程度しかなかったため、教授よりも先輩に相談する事が多かったのです。その時に「何か出来あがったらとにかく外の学会で発表してくるんだ!」とアドバイスを頂く事が多かったので、早くから外部の研究コミュニティーに参加し研究成果を発表していました。

事後報告で発表してきたことを教授に告げると、タイトルが間違っているとのご指摘を受けるようなこともありました。しかし、とにかく自分の研究成果を発表することが楽しかったです。

そしてM2(大学院修士課程2年)になって本格的に就職か研究、どちらの道に進むかで悩みました。ちょうどバブルの時期であった為、今就職しなくても就職には困らないとのアドバイスが教授からもあり、好きな研究の道を進むことにしました。

―当時の研究で印象に残っている研究などはありますか?

画像のベクトル量子化(圧縮)の研究が、印象に残っています。当時このようにすれば良いのではないかとアイディアはあったのですが、理論的なフレームワークがなく苦労していました。しかし、ベクトル量子化のレイトディストーションに関する文献を読み、しばらくして、ちょっと形を変えて応用すれば解決できると思い当たったのです。

そこからできた論文は短いものだったのですが、その中に論文を書くためのストーリーが凝縮されており、私の執筆した論文の中で一番綺麗にまとまっていたのではないかと今でも思います。

それからほどなく、今広く使われているJPEGのスタンダードを決める国際的な標準化会合があったのですが、最終審査の三つの提案の一つに日本提案が残りました。あとで知ったのですが、私の提案のマイナーチェンジ版であったとのことでした。最終的に採用はされなかったものの、ある種のインパクトを与えることが出来たのではないかと思います。(最終的にはヨーロッパ提案が採用された。)

食事記録・共有アプリ!FoodLog開発秘話

―多くの研究をされている中で、実際にサービスとして提供されているFoodLog(食事ログに関する研究)がありますが、どうしてこのような取り組みを始められたんでしょうか?

約10年前にある運動部の学生から”健康管理の面で食事に注意を払っているので、食に特化した記録をとりたい”との要望があったのがきっかけです。以前からライフログの研究を行っていたのですが、ちょうど方向性に悩んでた時期で「食に特化したライフログ」そんなのあったら楽しいね、というノリで始めました。

しばらくすると病院関係、健康医療関係の人からの注目を集めるようになりました。「血圧などのデータは廉価な装置で容易に採れるが、食事のデータを採るのは難しい。テクノロジーのソリューションを使ってもう少し詳細な記録がとれると良い」との意見がありました。我々の研究もその悩みを解決するために使えると思い加速していきました。

FoodLogは、JST(科学技術振興機構)の戦略的創造研究推進事業「CREST」における研究領域「共生社会に向けた人間調和型情報技術の構築」の研究課題「“食”に関わるライフログ共有技術基盤」の成果展開として公開しています。プロジェクトを開始して半年くらいの間に、問い合わせが多くなり研究室のメンバーだけでは運営が難しくなってきていました。その為、隣の研究室の卒業生でFoodLogに興味を持ってくれた小川さんが代表を務めるベンチャー企業が、社名も内容もかえてfoo.log株式会社を発足させました。foo.log株式会社にはFoodLogのデータベースの運営と新しいアプリの開発などをお任せしています。その後は、分業体制で彼らはデータ収集基盤を構築して、我々はデータの解析を行ってきました。

―具体的にはどの様に使われているのでしょうか?

食事の記録を残すにあたって、従来は毎食ごとに文字で品目を入力し、大よそのカロリーを残すというのが一般的だったと思います。しかし、毎回テキストを入力するというのは大変面倒ですし面白みがないため、長く続けることができない。

FoodLog Appのサンプル画面
(出典:東京大学 相澤・山崎研究室

そこでFoodLogでは写真で食事を記録することが出来ます。撮った写真から品目を連想検索しカロリーを表示します。これによって簡単に記録を残していくことが出来ますし、ビジュアルで残すことで、食事の偏りや食べ過ぎなどにも気付くことができます。現状は、記録されたデータに対してのフィードバックの機能がない記録に特化したものです。食事の偏りを顕在化させるビジュアリゼーションの機能も作ってはあるので、今後はユーザへのフィードバックも増やしていければと考えています。

現在マンスリーのアクティブユーザは2000人程で、使用したことのあるユーザは35万人程。上記の機能を付け加えることでより多くのユーザに長く利用して頂ければと思います。ただ既に400万件以上のデータが蓄積されている為、データ量としては非常に良いものとなっています。

また、画像解析技術を生かして各分野にカスタマイズしたものも提供しています。

一例として糖尿病治療向け仕様にカスタマイズしているものがあります。食事だけでなく、健康、血糖値など3つの情報をとって病院のサーバーの中で論理判定され異常がある場合には連絡があがるという仕組みになっています。こちらは、東大病院から「GlucoNote(グルコノート)」という臨床研究用のアプリとして発表されています。

他にも大企業などからの依頼を受け、カスタマイズしたりしています。そういった事もあり、最近は医療関係だけでなく大企業との繋がりも強くなってきたと感じます。APIとして切り出す要求が多いため、最終プロダクトではなく、中間成果物を多く提供しています。個人の想いとしては、もっとプロダクトをしっかりしてカスタマーに届くようなものであるのがいいと思っています。

プロフィール

相澤 清晴 -Aizawa Kiyoharu-
東京大学 情報理工学研究科電子情報学専攻 教授。

1983年 東京大学工学部電子工学科卒業
1988年 大学院博士課程修了 工博
1988年 工学部電子工学科助手
1989年 工学部電気工学科講師
1993年 工学部電子情報工学科助教授
1999年 新領域創成科学研究科基盤情報学専攻 助教授
2001年 新領域創成科学研究科基盤情報学専攻 教授
2006年 情報理工学研究科電子情報学専攻 教授
2009年 情報学環・学際情報学府 教授 
2013年 情報理工学研究科電子情報学専攻 教授
1990年から2年間米国イリノイ大学客員助教授

後編へ:http://sakigake.tokyo/archives/3976

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SAKIGAKE編集部

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