システムデザインから世界を変える!進化するモデリング言語「OPM」とは何か?―Dov Dori教授に聞くー後編

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前編・後編にわたってお届けしているDov Dori教授インタビューの後編です。前編では国際標準のモデリング言語としてISO規格に採用されるまでにいたったOPMのエッセンスをうかがいました。後編は、SysMLに対するOPMの優位性や、現在開発中のモデリングソフトウェア「OPCloud」のクラウド化のお話を通してOPMの今後のビジョンをお聞きしました。

【前編】はこちら

―OPMの新しさは何なのでしょうか? また、OPMがUMLより優れている理由は?

OPMは、産業オートメーションに関して国際標準化機構(ISO)に初めて認められた概念モデリング言語です。モデル標準として、エンジニアリングや科学の多くの分野に適用できます。また、同じくモデルベース・システムエンジニアリングで使われるUMLや、その拡張版であるSysMLに比べると格段にシンプルになっているのが特徴ですね。

【原注】「UML」と「SysML」
いずれもブロック形の図(ダイアグラム)を用いてシステムの「構造」「要件」「制約」「振る舞い」を統合的に記述するためのモデリング言語で、SysMLは主にシステムレベルの仕様記述に重点を置いて標準化されているのに対し、UMLはソフトウェア設計に重点を置いている。
2007年にOMGがv1.0の仕様を策定したSysMLはUML2.0を拡張したもの。ユースケース図やシーケンス図などUML2.0のダイアグラムの中から7種類を再利用している。UMLの原型は、1990年代にRational Software社に在籍していたジェームズ・ランボー、イヴァー・ヤコブソン、グラディ・ブーチの3人が創案した。2003年以降はOMGが仕様を管理している。
※詳細は、OMG UML公式サイト, OMG SysML公式サイト

―なるほど。詳しく教えてください。

まず、基本的にOPMは1種類のダイアグラムしか使用しません。UMLは13種類、SysMLは9種類を使用しています。またOPMは自然言語によるテキストを自動生成できますが、UMLやSysMLではこうしたことはできません。したがって、OPMは習得や使用がはるかに容易なのです。OPMが広く世界的に利用されているのはそのためです。 以下の表を見てください。SysMLとOPMの違いを比較してまとめたものです。



【編集部註】
*1……モデルベース・システムエンジニアリングを基礎とするソフトウェア開発プロセスの業界標準として、1990年代初頭にRational Software社が提起したもの。同社は2003年にIBM社の1ブランドとして統合された。(参照:http://www-01.ibm.com/software/jp/rational/


*2……システムの構造記述のための「パッケージ図」「ブロック定義図」「内部ブロック図」のほか、システム要件を記述する「要件図」、制約を記述する「パラメトリック図」、ふるまいを記述する「ユースケース図」「ステートマシン図」「シーケンス図」「アクティビティ図」の9種類がある。


*3……図形による記述はOPD(Object Process Diagram)の1種類のみだが、これに対応するテキスト記述としてのOPL(Object Process Language)とセットで構成される。

―OPMに賭けるDori教授の長期的なビジョンはどのようなものですか? 将来、OPMを多くの人びとが使い始めるとどのようなことが起きるでしょうか?

Dori教授 ひとつの選択肢として、OPMは概念モデリング言語として普遍的に採用されるものとなるでしょう。OPMが人類の知をやりとりするための基盤となることが未来像ですね。想像できるあらゆる領域の人間の思考においてです。



Dov Dori教授によるOPMについての概説書として『Object-Process Methodology A Holistic Systems Paradigm』(2002年、Springer刊)があるが、ISO規格採用までに至る最新の知見は『Model-Based Systems Engineering with OPM and SysML』(2016年、Springer刊)にまとめられている。

―Dori教授のモチベーションについてお聞きしたいです。ひとことで言って、何を信じていますか?

複雑度の高いシステムの機能や構造のほかシステムの挙動を伝えるためにOPMが有効だということはすでに実証されています。複雑なシステムの開発に携わる関係者にとって、お互いの理解を助けるために役に立つものです。また、エンジニアリングだけでなく科学においてもきわめて重要な役割を果たしているのは特に分子生物学ですね。具体的に言うと、mRNAライフサイクルに関してです。(参照:http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0107085

それに、科学技術教育の場面での成果もあります。(参照:http://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/02602938.2016.1173648
こうしたことにともなって、OPMは近年ISO 19450として採用され、多くの領域で実績を残し、成功を収めています。まもなく工学、科学、教育の分野で主要な概念モデリング言語になると確信しています。

ISO 19450にOPMを採用する過程で開催されたイスラエルのハイファでのISO国際会議(2012年)

―ところで、産業のIoT化が加速する中でわれわれが暮らす都市はますます技術と一体化し、相互連関性を深めていますね。20世紀には建築家のChristopher Alexanderが「パターン・ランゲージ」(都市設計に繰り返し現れる法則に名前を付けて「パターン」という単位にまとめたもの)の手法で都市設計をモデル化しましたが、OPMが都市のアーキテクチャーのモデリングに利用されている例はあるでしょうか?

Dori教授 OPMは、複雑で相互接続的な社会ー技術システム(CLIOS=Complex Large-scale Interconnected Open Socio-technical systems)のモデリングに使用されていて、都市設計に最も役に立ちます。それがCOIM(CLIOS-OPM統合メソッド)という手法なのですが、詳しくは私が共同執筆した論文「COIM:複雑で相互接続された大規模な社会ー技術的システムのアーキテクチャー分析のためのオブジェクトプロセスベースの方法論」をご覧ください。
OPMを使用すれば考え得るあらゆる領域で再利用が可能な「パターン」を設計することができるのです。OPMはデザインパターン(設計手法に名前を付けてカタログ化すること)に重点を置いていますが、われわれは現在、WebベースでOPMを使用したモデリングができるソフトウェア環境として「OPCloud」を開発しています。私はこれが役に立つことを望んでいます。

―スタートアップや新技術に興味を持っている日本の読者にメッセージをお願いします。

OPMは実証済みの学術や産業上の成功を超えて、スタートアップが開発を目指すシステムのモデルを作成するための素晴らしい方法となるでしょう。これは目標を達成するために必要なプロセスとなります。われわれは現在、最先端のクラウドベースのOPMモデリング環境として「OPCloud」を開発し、学術的な取り組みを超えて商用製品化を検討しているところです。

編集部から

一般的にはUMLやSysMLのようにソフトウェアやシステム開発の設計手法の一つとしてのイメージが強いモデリング言語ですが、OPMは「人類の知」のやりとりの基盤となるというDori教授の未来像は、私たちがこれからの世界を考えるにあたっての重要な示唆を与えてくれそうです。OPMがクラウドベースで多くの人びとが同時に利用できるようになると、人間の思考や知のあり方に劇的な進化をもたらすことになるのではないでしょうか。なお「OPCloud」への投資を検討されている方はぜひDori教授にご連絡ください。

プロフィール

Dov Dori教授
テクニオン=イスラエル工科大学
メールアドレス:dori@technion.ac.il

原文

–What is new about OPM or why is OPM superior to UML?
OPM is the first conceptual modeling language that is recognized by ISO for industrial automation, modeling standards, and many other applications in engineering and science. It is an order-of-magnitude simpler than UML and its derivative SysML which is also used for model-based systems engineering.
The table below shows a brief comparison. Basically while OPM uses one kind of diagram, UML uses 13 and SysML uses 9. OPM generates natural text automatically while UML and SysML do not. OPM is therefore much simpler to learn and apply and is being widely adopted worldwide.

–Could you tell us your long-term vision or what do you see after people use OPM more?

The vision is that OPM be adopted universally as the conceptual modeling language of choice and become the basis for exchanging models that represent human knowledge in any conceivable domain of human thought.

See photos at http://esml.iem.technion.ac.il/?page_id=180 Here are some more:

–What is your motivation? What do you believe?
OPM has been shown to be effective in communicating complex systems’ function, structure, and behavior, helping to bridge lack of mutual understanding among various stakeholders involved in developing complex systems of all kinds. OPM has been very instrumental not just in engineering but also in science, especially in molecular biology, specifically mRNA lifecycle, as well as in Science and Engineering Education. Hence it is my firm belief that after proven success in so many disparate domains, along with its recent recognition as ISO 19450, OPM is poised to soon become the leading conceptual modeling language in engineering, science, and education.

–Is OPM being used in urban design? If so,is it used like “Pattern Language”?
(Christopher Alexander’s Pattern Language is well known in Japan, in relation town planning and urban design. http://www.printmag.com/wp-content/uploads/PatternLanguage.jpg)
In particular,in today’s society,The Internet of Things (IoT) is a rapidly growing.As a result, IoT is transforming cities more complicated for ourself.At that time, we need to communicate with urban designers and architects more deeply.

Pro.Dori OPM is used for modeling complex socio-technical systems and can be most useful for urban design – see for example
http://esml.iem.technion.ac.il/wp-content/uploads/2011/02/COIM_AnObject-ProcessBasedMethod.pdf

One can also use OPM to design patterns that are reusable in any conceivable domain.
We are currently developing OPCloud – a Web based software environment for modeling with OPM where emphasis is placed on design patterns. I hope this is helpful.

–Could you give the message to readers, who are mostly Japanese interested in startups and new technology?

Beyond the proven academic and industrial success of OPM, it is an excellent way for startups to create models of the systems they aim to develop, and the processes they will need to carry out in order to achieve their goal.
We are now developing OPCloud – a state-of-the-art Cloud-based OPM collaborative modeling environment, and beyond an academic initiative, we are considering making it a commercial product.

If you would like to consider making an investment, please contact Prof. Dov Dori dori@technion.ac.il.

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SAKIGAKE編集部

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