ガンの分子的メカニズムを解明、洗練された治療薬開発の礎を築く―Blueprint Medicines

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がん治療の新しいアプローチ

世界のがん患者数は2012年時点で1400万人と言われ、特に中国を中心としたアジア諸国で患者数が増え続けている(参考:日本経済新聞)。本記事の読者にも、身近な人あるいは本人ががんを患ったという経験のある人は少なくないだろう。

がんの治療薬として一般的な抗がん剤は従来、がん細胞を殺すことに重点を置いたものだった。しかし最近では疾患の分子的メカニズムを解明し、細胞の異常増殖に関わる分子の働きを直接抑える「分子標的治療」と呼ばれるアプローチが盛んになっている。Blueprint Medicines社は、がんをはじめとした難病の分子標的治療薬、特にキナーゼを標的とした治療薬のための基礎研究を行う企業だ。


(出典:Blueprint Medicines公式サイト

キナーゼを解明して難病を知る

人間の細胞の中にある物質で、各細胞間で情報の伝達を行う。外部からの刺激を受けるとキナーゼが働き、増殖や分裂、破壊などの指令を細胞へと送る。キナーゼに異常が起こると、外部からの刺激に関わりなく細胞の異常な増殖や分裂を引き起こしてしまう。(参考:カルナバイオサイエンス株式会社、IR情報-キナーゼの働きと病気
これがガンなどの難病に繋がるのだ。ガンに関わるキナーゼの一つとしてはチロシンキナーゼが知られており、この働きを抑えるチロシンキナーゼ阻害薬は現在ガンの治療薬として用いられている。(参考:日経メディカル「分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害薬〔EGFR-TKI〕)」

Blueprint Medicines社がミッションとして掲げるのは、ガンを中心とした難病を引き起こすキナーゼの種類や機能の解明を進め、患者がより長い間より質の高い暮らしを送れる革新的な治療薬を作り出す基盤を提供することだ。現在アメリカで認可を受けている治療薬は、すでに存在が知られている518種類のキナーゼのうち5%ほどしかカバーしていない。さらに、ほとんどのキナーゼの機能はまだ詳しい解明が進んでいない。キナーゼを標的とした治療薬の開発にはまだまだ発展の余地があるというわけだ。(参考:Blueprint Medicines社公式サイト

自社製の薬剤用化合物ライブラリ

生物学と化学の両分野にわたる深い知識と経験を、キナーゼ阻害薬の研究というニッチな部分に注いでいるBlueprint Medicines社。その事業の化学的側面と言えるのが、キナーゼ阻害薬に利用できる化合物を集めたライブラリを作ることだ。

この化合物は450種類以上におよぶキナーゼ、およびガンを始めとする疾患に関連したキナーゼ変異体をカバーしている。通常、製薬会社では個々の薬に必要な化合物の同定から創薬を始めるものだが、Blueprint Medicines社では自社で化合物を製作しライブラリ化することで、より迅速に薬の開発に取り掛かることのできる環境を整えている。

薬剤の標的となるキナーゼを特定するエンジン

分子標的治療薬を開発する際は、薬剤の標的となる分子を同定する必要がある。薬の標的となるキナーゼを同定するためのエンジンの開発が、同社の事業の生物学的側面と言えるだろう。コンピュータを利用したゲノム解析と、先述したライブラリを利用したがん細胞等の分析により、疾患に関連するキナーゼの種類と働きを迅速に特定するシステムを整えている。このように、薬剤用化合物のライブラリと標的キナーゼ同定用のエンジンを二本柱にして、Blueprint Medicines社はキナーゼ阻害薬の効率的な開発を支えるプラットフォームを作り上げているのだ。

増え続ける患者数を背景にガン治療薬の需要が高まる中、治療薬開発の屋台骨を支えるBlueprint Medicines社の事業は今後ますます重要性を増してゆくだろう。

会社概要

会社名 Blueprint Medicines
CEO Jeff Albers
設立年 2011年
拠点 米国
社員数 社員数:51-200名規模
事業内容 がん等の難病治療を目的としたキナーゼ阻害薬開発のための基礎研究
会社URL http://www.blueprintmedicines.com/
沿革 2011年 Chris Varma氏を始めとする科学者や起業家のグループによって創業される。
2014年 シリーズBでスイスの医療系投資会社法
Nextech Invest社
等から2500万ドルの資金調達に成功。現CEO、Jeff Albersが就任。
2015年 遺伝病治療薬の研究のため法
Alexion社と提携。
2016年 がんの免疫療法に有効と考えられるキネアーゼ阻害薬の開発・商業化のためにRoche社と提携。

メンバー紹介

Jeff Albers
CEO
2014年からCEOを務める。インディアナ大学で科学を学び、ジョージタウン大学で法務博士とMBAを取得した後、バイオ医薬品業界に飛び込む。北欧の製薬会社の社長を務めるなど15年以上にわたるキャリアを積み、現在Blueprint Medicines社を率いるに至る。
(LinkedIn:https:// www.linkedin.com/in/jeff-albers-b6a7732

Chris Varma
創業者、前CEO
Harvard-MIT Program in Health Sciences & Technologyで生物化学の博士号を取得。2011年にBlueprint Medicinesを設立、2013年までCEOを務めた。現在はハーバード大学医学大学院の審議会メンバーの他、Vision Medicines社のCEOを務める。
LinkedIn:https://www.linkedin.com/in/chris-varma-59828a4

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SAKIGAKE編集部

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