空間再構成ロボットで自己生成する未来の建築-asmbld.

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スマホアプリで家具のデザインデータをダウンロードしてからものの数分、目の前の部屋の床からテーブルや棚など家具一式がにょきにょきと生えてくる。米ニューヨークを拠点に次世代建築ロボットの研究・開発を手がけるasmbld.社の空間再構成(spatial reconfiguration)ロボットは、建築物自身が自己生成する建築の未来像を映し出す。

空間再構成ロボットとは何か?

まずは以下の映像を見てほしい。


(出所:asmbld.社公式vimeoチャンネル)

あたかも目の前の部屋の床からテーブルや棚など家具一式がにょきにょきと生えてくるかのように室内の家具一式が組み立てられてゆく。これがAsmbld.社が「DOMプロジェクト」と称して研究開発を進める空間再構成技術のひとつである。引っ越しの場面を考えてみよう。ユーザーはまずスマホから家具デザインのイメージデータをダウンロードする。

(出所:Fedor Novikov氏の公式ブログ
ここまではiTunesで音楽をダウンロードする感覚と同じだ。すると、ものの数分で床からにょきにょきと家具が生えてくるのである。それがすべてである。あとは荷物を運び込むだけである。生活習慣の変化に応じてスペースの利用法を変えたいときは、別のデザインデータに差し替えれば、たちどころに室内レイアウトを再構成して造り替えることができる。おとぎ話に出てくる魔法の話のようだが、建築物そのものをロボット化し建物が建物自身の内部空間を自己生成するシステムが機能している。(参照:asmbld.社公式サイト

モジュラリティーが空間を構成する

この建築システムの根底を支えるのは、モジュラリティー(積み木方式)である。空間配置をプログラムで設定され自動で動作するロボットが小さなモジュール(積み木状の建築コンポーネント)を積み重ねることによって再構成可能な空間形成を実現している。床下を動き回る小さなロボットがデザインデータ通りにモジュールを積み上げ、上方に向かってレイヤーを形作ってゆく。LEGOブロックを人間の居住サイズに積み上げてゆくものだと考えるとイメージしやすいかもしれない。

(出所:Fedor Novikov氏公式ブログ
また、Asmbld.社は建物の内部空間の生成だけではなく、ビルなどの設計・建設そのものの自動化にまで触手を伸ばしている。考え方は同様だ。ロボットがモジュールを積み重ねることで建物を形成する。また、そのことによって建設のプロセスが高速化され、1時間以内にビルを建てることが可能になるという。モジュールは再利用可能なため、建て替えが必要な場合も廃棄物を生じさせずに建物を「再構成」することが可能になる。(参照:Asmbld. 社公式サイト


(出所:asmbld.社公式vimeoチャンネル)

大都市圏の不動産価格上昇に対応する

なぜいま空間再構成技術が求められるのだろうか。以下のグラフを見てほしい。米国主要都市の不動産価格の上昇率を比較したものだ。

(出所:Fedor Novikov氏公式ブログ
ロサンゼルス、サンフランシスコ、マイアミ、ニューヨークなど米国の大都市圏の不動産価格は2000年代に入ってから顕著に右肩上がりの上昇を続けている。空間のコストが年々上昇している分、ある一定サイズの空間からそれ以上に「使える空間」を生み出す必要がある。そのためのソリューションが、建築物そのものを生成変化させ同一の空間をマルチユースするための方法論としての空間再構成技術なのである。

究極のIoTインフラとしての建築

話はそれだけにとどまらない。asmbld.社CEOのFedor Novikov氏は「未来の建築物はIoTインフラの究極のパッケージとなる」という言い方をしている。空間再構成ロボットによるスマートハウスの建設を念頭に置いているようである。Fedor Novikov氏は、空間再構成ロボット技術が社会的に存立するための条件として4つのポイントを挙げている。(1)将来のリノベーションの可能性を想定し、個々のモジュールは接着させるのではなく組み上げる(分解することを前提としているため廃棄物が出ない)(2)耐用年数の短いコンポーネントは長い耐用年数を持つコンポーネントから分離できるようにする(3)すべての建築コンポーネントを他の建築物と相互に再利用可能とし、市場で再販される(4)スマートハウスやIoTインフラは家電やソフトウェアの進化の迅速なサイクルに合わせてモジュール化されアップグレードが可能である(参照:「Building as a modular gadget」2016年7月23日付TechCrunch )
近年、自動運転車をはじめとするコネクテッド・カーが自動車をプログラマブル・ガジェットとして変貌させたように、未来の建築物も自動車と同様の道筋をたどると考えられるのである。

近代の建築思想の常識をつくがえし、古来からの人間の居住空間の捉え直しを示唆するasmbld.社の取り組みには大規模インフラ投資や都市計画の側面からも目が離せなくなりそうだ。

会社概要

会社名 asmbld.
CEO Fedor Novikov
設立年 2014年
拠点 米ニューヨーク
社員数 2-10規模
事業内容 建築ロボットの研究開発
会社URL http://asmbld.com/
沿革 2012年 スペインの建築専門学校であるカタルーニャ先進建築研究所(Iaac)で建築ロボットの研究プロジェクト「Minibuilders」でPetr Novikov氏がリサーチ・リーダーを務める
2014年 創業

メンバー紹介

Fedor Novikov
共同創業者・CEO
2008年、ロシアの国立研究大学経済学高等学校卒。2010年、ニューヨーク大学ロバート・F・ワグナー公共政策大学院で都市計画学修士号を取得。2011年、モスクワ市文化庁・公園復興課副官、2012年、ヴィソコフスキー都市計画大学院講師などを経て、2014年、asmbld.社を創業。2016年からは都市データ解析を手がけるHabidatum社のアドバイザーも務めている。
(AngelList:https://angel.co/fedornovikov、LinkedIn:https://www.linkedin.com/in/fedornovikov/

Petr Novikov
共同創業者・調査開発部門ヘッド
建築とロボット技術の知識に長け、2012年にスペインの建築専門学校であるカタルーニャ先進建築研究所(Iaac)で建築ロボットの研究プロジェクトでリサーチ・リーダーを務め注目を集める。2014年、兄弟のFedor Novikov氏とasmbld.社を創業。
(Petr Novikov氏公式サイト:http://www.petrnovikov.com/、LinkedIn:https://www.linkedin.com/in/petrnovikov/

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SAKIGAKE編集部

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