東京大学名誉教授 石塚満氏 研究者としての軌跡~人工知能研究及びイノベーションへの思い~ 後編

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今回は電子情報学、創造情報学の研究に携われた東大名誉教授で現在は国立情報学研究所(以下、NII)のコグニティブ・イノベーションセンター(以下、CIC)のセンター長を務める石塚満先生に話しを伺いました。前編では、石塚先生自身が研究者として人工知能研究に携わっていた時代のお話、また現在話題となっているシンギュラリティに対する見解を。後編では、CICのセンター長という現在の立場から、イノベーションに対する考えを聞かせて頂きました。

前編はこちら

インベンションからイノベーションへ

――先生が研究者として大事にしてきたことはありますか。
若いころは、世界で誰もやっていないこと、オリジナリティーを大事にしていました。端的に言えば、高レベルの国際会議で論文が通るような研究です。論文が通るという事は、世界で認められるという事。当時は私自身も大学自体も学術的な新規性を大事にしていたのです。しかし、だんだんと学術的に新しいことと社会に役立つと言うこととは少し違うと感じ始めました。現在はインベンションよりイノベーションを重視するように大学も変わってきています。

――インベンションとイノベーションとは具体的にどのようなことでしょうか?
インベンションとは、誰も見つけていないことを新たに見つけるという事。一方イノベーションとは、社会的に価値のあるものを創り出し、社会に影響を与える事という意味で使っています。近頃(ここ10年)は大学も、学内でスタートアップを支援することも多いですし、イノベーションも重視する考えにシフトしています。

――その様にマインドがチェンジするきっかけは何かあったのでしょうか?
前述のとおり80年代は日本企業が非常に強かった。良い研究をし、良い技術を作れば企業が実用化してくれるというイメージが強くありました。その様な状況でしたので、自分でビジネスまで考えるという機会が正直少なかったです。

しかし90年代にWebが誕生し、Web関連の新ビジネスが多数生まれました。何より刺激を受けたのがGoogleの誕生でした。Googleは95年にスタンフォード大学の学生から始まり、98年に会社設立に至っています。Googleを真似するという訳ではありませんが、チャンスがあればやってやろうという意識が芽生え、研究を社会に役立たせるといったイノベーション寄りの考えに変わりました。

イノベーションの鍵は、集める力!ソフトなルール!

――イノベーションを興すうえで大事なことは何だと思われますか?
スタートアップやイノベーションに必要なのは、社会で問題になっていることを解決するアイディア、またそれを解決するのに必要な情報、技術、人を集めてくるという感覚です。技術から始めるのもあるでしょうが、問題解決の必要資源を集めるという視点がより必要とされるのではないでしょうか?実際にアメリカ、イスラエルなどのスタートアップの多くは、技術オリエンテッドというより問題オリエンテッドであり、問題解決のために必要なものを集めるということを重要視しているように思います。

――最後に日本が今後イノベーションを加速していくために必要なこととは何だと考えますか?
もう少しソフトなルール作りでしょう。過去検索エンジンの分野では、コピーが出来ないという著作権法の厳しい規定の為にGoogleにより大半のシェアを取られました。日本にもチャンスがあったにも関わらず。アメリカはフェアユースによりグレーゾーンであってもビジネスを興し上手くいけばOKという様な風土があります。しかし、今の日本ではその様なチャレンジングな風土がないし、育っていない。

現代では、ドローンがこれにあたるのではないでしょうか?アメリカなどの他国に比べビジネスでの活用が遅れています。現状のルールでは、実用化という面において世界特にアメリカとの差は開く一方のような気がします。ソフトなルール作りを早急にする必要があります。

インタビューを終えて


石塚先生は、研究者人生の中で3つの大きな研究分野に取り組まれてきました。時代の変化に合わせ、非常にチャレンジングな決断で自身の研究テーマを変更されてきた一方で、シンギュラリティの話題などに対しては非常に現実的な見方をされており興味深かったです。導入部でも記述の通り、石塚先生は現在NIIに在籍されています。NIIは、情報学という新しい学問分野での「未来価値創生」を目指す研究所です。石塚先生自身、全国の大学や研究機関だけでなく民間企業や様々な社会活動と連携、協力をされています。石塚先生のような方が産学の架け橋となる事で、日本のオープンイノベーションの原動力になるでしょう。

プロフィール

石塚 満 ‐Mitsuru Ishizuka‐
東京大学名誉教授、国立情報学研究所(NII) コグニティブ・イノベーションセンター(CIC)センター長(特任教授)

1976年 東京大学 大学院博士課程修了、工学博士
1976年 NTT 横須賀研究所 (デジタル移動通信の研究)
1978年 東京大学 生産技術研究所 助教授
1980年 Purdue University, Visiting Associate Professor
1992年 東京大学 生産技術研究所 教授
1992年 東京大学 工学部 電子情報工学科 教授
2001年 東京大学 大学院情報理工学系研究科 電子情報学専攻 教授
2005年 東京大学 大学院情報理工学系研究科 創造情報学専攻 教授
2010年 東京大学 大学院情報理工学系研究科 副研究科長
2013年 東京大学 定年退職、名誉教授
2014年 早稲田大学 基幹理工学系研究科 情報理工学専攻 教授(任期付)
2014年 エジプト日本科学技術大学(E-JUST) 特任教授
2016年 NII コグニティブ・イノベーションセンター(CIC) センタ-長
2017年 NII 特任教授/CICセンター長

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SAKIGAKE編集部

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