東京大学名誉教授 石塚満氏 研究者としての軌跡~人工知能研究及びイノベーションへの思い~ 前編

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今回は電子情報学、創造情報学の研究に携われた東大名誉教授で現在は国立情報学研究所(以下、NII)のコグニティブ・イノベーションセンター(以下、CIC)のセンター長を務める石塚満先生に話しを伺いました。前編では、石塚先生自身が研究者として人工知能研究に携わっていた時代のお話、また現在話題となっているシンギュラリティに対する見解を。後編では、CICのセンター長という現在の立場から、イノベーションに対する考えを聞かせて頂きました。

後編はこちら

人工知能研究のきっかけ

――石塚先生は人工知能の研究を長くされていますが、最初から人工知能の研究をされていたのでしょうか?
学生時代は画像処理の研究をしていました。博士課程を修了した後は、NTTでデジタル移動通信の研究に携わっていました。その後、画像処理分野での貢献を期待され東京大学生産技術研究所に移ったのですが、画像処理の分野には当時既に著名な先生がたくさんいらっしゃいましたので、何か新しいテーマを始めたいと考え出す様になりました。

――人工知能の研究をされるようになったきっかけはありましたか?
ちょうど人工知能が話題になり始めている時に、アメリカのインディアナ州のパデュー大学に1年半赴任する機会を得ました。そこで中国人のFu先生、Civil Eng.(土木工学)のYao先生という2人の教授の下で人工知能の研究、当時でいうとエキスパートシステムの研究を行いました。

日本が世界をリードした!1980年代の人工知能研究

――1981年に日本に帰国されてからの日本の人工知能研究に対する取り組みはどの様なものでしたか?
アメリカから日本に帰国した時、第2次人工知能ブーム(現在は第3次)が起こっており、また第五世代コンピュータのプロジェクトが始まろうとしていました。当時の日本はハードウェアの部分でもアメリカを凌駕する程の勢いがあり、「日本が世界をリードする」その様な雰囲気がありました

――日本の人工知能研究にとても期待がかかっている時代だったのですね。
「次のコンピュータのひな型を日本が発信していく」というストーリーがあり、やっていることも非常にチャレンジングなことが多かったように思います。現在はアメリカをフォローしている様な状況ですので、今の人工知能ブームとはまた違ったやりがいがありました。

90年代の初頭からは人工知能ブームがやや停滞してきたこともあり、人工知能分野に関わりのあるマルチモーダル・ヒューマンインタフェースの研究、90年代中ごろのWebの登場辺りからは、Webインテリジェンス(Webの知的機能)にも研究範囲を広げました。

シンギュラリティ・・・その前に考えるべき問題とは?

――人工知能は今後、社会でどのような役割を担っていくとお考えですか?
一般論で言いますと、コンピュータ技術がこのままのスピードで発達していくと、2045年にはシンギュラリティ(技術的特異点)に到達すると言われています。シンギュラリティは人間の能力をはるかに凌駕する人工知能が生み出され、人類を支配するのではないかと危惧する声もよく耳にします。

――それは怖いですね。
ある特定の限られた分野で人間の脳を超える―例えば囲碁や将棋で人工知能が名人を超える等という事はありますが、すべての能力において人間を上回り支配するというのはまだまだ考えにくい。もしロボットがロボットを産むという様な再生産(自己再生)が行えるようになればそのような危険性も考えていかないといけないかもしれない。つまり人工知能とバイオテクノロジーが結びつくということ。ただ、その前にこの2つの分野でそれぞれが抱える差し迫った問題と向き合う必要があると思います。

――問題とは具体的に何でしょうか?
バイオの分野では、薬を開発したり病気を治したりは良い使い方だと思います。一方で人に対する遺伝子操作や、関連して危惧しないといけないのは、軍事の分野で使用されること。人への遺伝子操作は人間の歴史を変えてしまう事に繋がりかねません。

人工知能の分野では、日本では話題にしづらいのですが、自律AIの軍事ロボット。現在は遠隔で人が操作していますが、次第にロボット自身が判断し攻撃が可能になると考えられます。こういった自律AIを、核兵器や化学兵器のように、どの様に世界で協調してコントロールしていくか考えなければなりません。

――では先生にとって人工知能はどの様な位置づけなのでしょうか?
AIというと単なるテクノロジーではなく、人間の脳を実現するなど夢の部分に関心を持つ人が多いかもしれないですが、私にとって人工知能はもっと現実的でITの最先端の一部分であるという認識です。SFの世界の様なことを夢見るというよりは、どの様に今の人間の仕事をAIに置き換えていくかという事を考えています。

――人工知能に仕事を奪われるという危惧がありますが。
確かに、機械が人の仕事を奪うという事でマイナスなイメージを持つ方もおられます。しかし我々の労働を振り返ると、ルーチンワーク的な作業や検索や過去の経験から判断する作業で、日々の大半を占められていたりすることが多いのではないでしょうか?このような労働は機械に置き換えるのが良く、人間は出来た余暇で新しい事を考えたり楽しんだりする、その様な社会を実現するために利用されるものとして位置づけています。

プロフィール

石塚 満 ‐Mitsuru Ishizuka‐
東京大学名誉教授、国立情報学研究所(NII) コグニティブ・イノベーションセンター(CIC)センター長(特任教授)

1976年 東京大学 大学院博士課程修了、工学博士
1976年 NTT 横須賀研究所 (デジタル移動通信の研究)
1978年 東京大学 生産技術研究所 助教授
1980年 Purdue University, Visiting Associate Professor
1992年 東京大学 生産技術研究所 教授
1992年 東京大学 工学部 電子情報工学科 教授
2001年 東京大学 大学院情報理工学系研究科 電子情報学専攻 教授
2005年 東京大学 大学院情報理工学系研究科 創造情報学専攻 教授
2010年 東京大学 大学院情報理工学系研究科 副研究科長
2013年 東京大学 定年退職、名誉教授
2014年 早稲田大学 基幹理工学系研究科 情報理工学専攻 教授(任期付)
2014年 エジプト日本科学技術大学(E-JUST) 特任教授
2016年 NII コグニティブ・イノベーションセンター(CIC) センタ-長
2017年 NII 特任教授/CICセンター長

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SAKIGAKE編集部

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