銀行間国際決済に仮想通貨の根を張り巡らせる-epiphyte

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現在、世界の金融機関(中央銀行を含む)のほとんどが国際決済業務にSWIFT(国際銀行間通信協会)が提供する専用ネットワークを利用している。epiphyte社は、こうした伝統的な国際決済ネットワークの限界を超え、ブロックチェーンを用いて銀行間国際決済の即時化、処理コストの低廉化、セキュリティーの強化を実現する。

英国初、ブロックチェーン国際決済サービス

epiphyte社が英国を拠点として運営しているspecialFXは、英国の金融規制当局であるFCA(Financial Conduct Authority)のレギュラトリー・サンドボックス内で2016年11月に認可されて立ち上げられたブロックチェーンベースの国際送金決済サービスだ。レギュラトリー・サンドボックスとは、革新的なフィンテック企業を育てるために金融規制の適用を除外する「実験」の場として英国FCAが監督運営するものだが、epiphyte社のspecialFXの立ち上げは英国金融当局との協業による初のブロックチェーン決済サービスの始まりを意味する。(参照:2016年11月28日付Deep Dot Web「UK Regulator Partners With Epiphyte to Test Bitcoin Remittances」

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(出典:specialFX公式サイト

数日かかった処理時間を高速化する

「従来型の国際決済では、処理に2~3日かそれ以上の時間がかかることもある。そのうえトランザクションの約7%でエラーが起きたり、予期しない費用が発生したりする」とepiphyte社CEOのEdan Yago氏は言う。(参照:2016年11月11日付IBTimes「Cryptocurrency: UK regulator FCA tests Blockchain remittances with Epiphyte」

中央銀行が発行する各国の伝統的な法定通貨の国際送金では、決済に際して第三者機関を必要とした。二重記録や取引記録の改ざんを防ぐためだ。そうした第三者機関を不要とし、決済主体間のダイレクトな接続を可能にするのがブロックチェーンなどの分散型の元帳システム(Distributed Ledger)である。決済処理の高速化とともに、第三者機関の「中抜き」による低コスト化が可能になる。取引履歴をユーザー同士で共有し合う分散型台帳システムは、その透明性から第三者機関を必要とせず、改ざんなどを防ぐセキュリティーの万全な確保が見込める。

Epiphyte社が目指すのは、クラウドやブロックチェーンなどのデジタル技術の進展を金融取引の世界に持ち込み、決済処理の高速化、コストの低減、デジタルサービス間の相互接続を実現し、すべての利害関係者が利益を享受できる世界である。Epiphyte社の決済エンジンは、すでにモバイル端末間の国際決済プロバイダーなどでの利用も進んでおり、大幅なコスト削減に一役買っている。(参照:Epiphyte社公式サイト

着生植物のように広がる生態系

SWIFTが主催するフィンテックスタートアップのコンペ「Innotribe Startup Competition at the Sibos」で2014年にepiphyte社が優勝したときに評価されたのは、同社が開発した製品の第一号である「cBridge」だ。既存の金融機関が内部に独立して抱えている元帳を、仮想通貨ネットワークに接続するためのソフトウェアである。(参照:「Innotribe 2014 startup challenge grand finale」

その革新性の秘密を解く鍵は「epiphyte」という社名そのものに隠されている。epiphyteとは英語で「着生植物」を指す語だが、岩の表面や他の植物の幹などに付着して根を張りながら生息する着生植物が他物に自己を付着させる器官を「固着器官」と呼ぶ。伝統的な決済システムに接続するcBridgeは、着生植物が持つ固着器官の機能を金融決済の世界を舞台に体現し、仮想通貨ネットワークという着生植物を伝統的な金融システムに付着させる様を示しているようである。

熱帯雨林のように複雑なグローバルな金融決済の生態系にじわじわと根を広げてゆくこと、そこにすべてがあるといっていい。伝統的な金融決済システムの岩盤をその表面から覆い尽くす苔のように、新たな金融決済の生態系を着々と広げるEpiphyte社のさらなる成長から目が離せない。

会社概要

会社名 epiphyte
CEO Edan Yago
設立年 2013年
拠点 英ロンドン
社員数 2-10人規模
事業内容 金融サービス
主な商品 specialFX、cBridge
会社URL http://epiphyte.com
沿革 2013年 創業
2014年 「SWIFT Innotribe Startup Competition at the Sibos」で優勝
(参照:「Innotribe 2014 startup challenge grand finale」
2014年 「New Banking Innovation Award from BBVA in 2014」を受賞
(参照:「How BBVA Open Talent Writes International Success Stories | Lets Talk Payments」

メンバー紹介

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Edan Yago
CEO
2004年にテルアビブ大学で哲学・修辞学の学士号取得後、2008年、心理学・神経科学の博士号取得。2012年からソーシャルゲーム開発のZynga社でシニア・プロダクト・マネージャーを務める。2013年、epiphyte社を創業、CEOとなる。2014年からDigital Asset Transfer Authority社の取締役メンバーも兼任している。
(LinkedIn:https://www.linkedin.com/in/edanyago/

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SAKIGAKE編集部

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