電気接着技術であらゆるモノを掴む!運ぶ! 「ロボットグリッパー」に新革命-Grabit

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オートメーション化の推進により、様々な工場の製造ラインで活躍を見せている「グリッパー」。

グリッパーとはロボットアームの先端に取り付けて使用する、物を掴むマシンのこと。現在、大気圧との差圧を利用して吸着する「真空吸引型」のグリッパーが一般的で、工業用部品、ソーラーパネル、ガラス、食品など様々な物体を接着剤のようにくっつけ、所定の場所に搬送している。

しかし、この吸引グリッパーを利用するには、真空を発生させる真空ポンプとホースなどが必要となり設置コストが高く、稼働に伴うエネルギー消費も多い。また、材質や形状により、その都度適合したグリッパーを手配したり、付け替えなければならないというデメリットも存在しているのである。

米国・カリフォルニア州に拠点を置くGrabit社は、そんな高負担や不便さを解消すべく、真空に代わるグリッパーを手掛けている要注目のスタートアップ企業だ。その動力源となるのは、冬などの乾燥した時期にバチッとなるもの―そう、「静電気」である。

非営利組織から独立し、創業したGrabit社

「電気接着技術(electroadhesion technology)」と呼ばれるこのテクノロジーは元々、同地域の非営利組織、SRIインターナショナル(以下、SRI)により開発されたものである。

SRIは、世界で最も規模の大きい研究機関の一つであり、民間企業、政府機関、大学といった顧客から研究開発を請け負っている独立法人である。コンピューター、ロボティックス、ヘルスケア、クリーンテック、セキュリティなど研究分野は多岐に渡り、特許取得数は電気接着技術を含め1,000を超える。

そんな世界有数の技術力を誇るSRIだが、先述のとおり非営利組織なため直接商業化することができない。そこで、この有望性のある接着技術を産業分野で有効活用するのを目的に2013年、スピンオフ企業としてGrabit社を設立。同社に独占使用権を与えた。

新世代グリッパーの開発を通じ、ロボットによる自動化に関するソリューションを各クライアントに提供している。

静電気であらゆる物体を持ち上げるグリッパー


リンゴ、缶、箱など様々な形状の物体を持ち上げるテープ状のGrabit社製グリッパー

Grabit社製グリッパーの特徴は、「付着性の静電気を利用し、様々な素材や形を掴みあげられる」点にあり、従来では負担となっていたグリッパーの付け替えを最小限に抑える事に成功した。

この技術が実現したことで、立体的な物体だけでなく布やプリント基板といった薄地の搬送もグリッパーで行えるようになった。また、接着する力は常に均一であるため、デリケートなものでも表面を傷付けず汚れが付きにくい。もちろん、従来のように真空ポンプとホースを手配する必要は一切ない。


平面状のグリッパー。プリント基板・布地・ガラス板のほか、スマートフォンも接着可能(出典:Grabit公式YouTube)

同社によると、自社グリッパーは主に自動車、エレクトロニクス、航空宇宙、アパレルの生産工場など幅広い業界で愛用されているという。

傾斜でもOK!荷物を吸着し移動させる「スマートコンベア」


荷物を吸着搬送するスマートコンベア

グリッパーだけに留まらず、運搬物を移動させるベルトコンベアにも電気接着技術を取り入れる事が可能だ。同社はこれを「スマートコンベア」と呼んでいる。

ベルトコンベアにこの性質を活用すると、傾斜角度が45度、荷物の重さが50ポンド(約22.68㎏)以内であれば、難なくコンベアの表面に荷物を吸着させ、持ち運べるという。電気接着の電源をオンにする事で荷物はくっつき、オフにするとコンベアから離れるシステムとなっている。
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電源の切り替えを利用して、荷物を仕分けしている様子(緑の部分は電源オン、赤はオフを表す)
(出典:Grabit公式YouTube

さらに、オンとオフの切り替えは自動機械の制御・操作・監視を担う「プログラマブル・ロジック・コントローラー(PLC)」でコントロールできるので、所定の場所への自動仕分けにも大いに役立つ。

段ボール箱を始め、商品のパッケージ、封筒、白紙、ポテトチップの袋など、グリッパーと同様に様々なモノを接着するので、輸送や配送を担う物流部門でも業務の効率化に期待できるのである。

1週間分のエネルギーコストが「10年分」に

導入する事により、設置およびランニングコストの改善が見込まれるGrabit社の電気接着技術。とりわけ、エネルギーコストを劇的に削減することができ、真空型グリッパーの1週間分のコストで、電気接着型では10年間も動かすことができるという。(参考:robotics business review “Grabit Electroadhesion-based Grippers”

この大幅なコストダウンと業務効率化が実現できる技術は現在、世界で十数以上の企業で使われており、その中にフォーチュン500にランクインしている複数のリーディングカンパニーが含まれる。

このように、大手企業からもお墨付きを頂いている電気接着技術は、今後さらに世界へ広がっていくことだろう。どの業界においても自動化や効率化が叫ばれている中、Grabit社製のグリッパーは重要な役割を果たすポテンシャルを大いに秘めている。

会社概要

会社名 Grabit
CEO Greg Miller
設立年 2013年
拠点 アメリカ合衆国 1246 Reamwood Ave. Sunnyvale, CA 94089
社員数 11-50人規模
事業内容 電気接着技術を活用した産業用機械の開発・販売
主な商品 電気接着型グリッパー・スマートコンベア
会社URL https://grabitinc.com/
沿革 2013年 SRIインターナショナルから独立、創業
2013年10月 ナイキ社とパートナーシップを結ぶ(参考:The Oregonian ”Nike, Silicon Valley firm Grabit form partnership”
2013年10月 Formation 8社より600万米ドルを資金調達(シリーズA)(参考:robotics business review “Grabit Inc. Clinches $6M Series A with Eyes on Material Handling Industry”
2014年5月 シライ電子工業(株)とパートナーシップを結ぶ(参考:Grabit公式ニュースリリース ”Grabit Inc. Announces Partnership with Shirai Electronics for Printed Circuit Board (PCB) Handling”

メンバー紹介

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Greg Miller
CEO
テキサス工科大学で理学士(土木工学)、フロリダ工科大学でMBAを取得。Grabit入社前、商標保護・高解像度ディスプレイ関連の企業でCEOを務める。また、アメリカ海軍で原子力技師として活躍した経歴を持つ。

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Harsha Prahlad
共同創業者・CTO兼CPO
インドにあるNITティルチで理学士(機械工学)、米メリーランド大学で理学修士・博士号(いずれも宇宙工学)を取得。Grabit設立前、SRIインターナショナルで電気接着技術の開発リーダーを務める。また、人工筋肉に関連する技術開発においても、重要な役割を果たした。

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SAKIGAKE編集部

SAKIGAKE編集部

海外のスタートアップ、テクノロジーに関する最新情報を発信していきます。 海外の起業家たちが、何の課題に目を向け、どんなことを仕掛けようとしているのか。 最新技術だけでなく、未来を創ってきた人や、これから未来を創ろうとしている人の生活・人生もご紹介します。
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