専門知識は必要なし!遺伝子解析も自動化の時代へ-AzurePCR

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感染検査を行う医療機関ではDNA解析の進歩によって多種多様な解析も可能になり、スタッフはさらに高度な知識や技術を要求されるようになった。しかし大量の検体を処理しなければならない現場では、専門のスタッフの不足が招く診断エラーが発生するリスクを伴う。この問題を解決するためのソフトウェアを構築するチームこそ、AzurePCR社である。

qPCRの汎用性

AzurePCR社は、qPCRデータの自動分析を担う次世代ソフトウェア開発会社だ。qPCRとは、生体試料内における目的のDNA鎖の存在と量を測定できる方法(参照 Wikipedia:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%9A%E9%87%8FPCR )で、分子生物研究では必要不可欠なツールとなっている。しかしこのqPCR結果の算出は経験豊富な技術者によって実行されているのが現状であり、実際qPCRサイクラーメーカーが提供する既存のソフトウェアも、ゲノミクス研究所のような専門技術者を有することを前提に設計されている。

病院での細菌検出に関わるプロジェクトに参加した経験を持つAron Cohen氏とZeev Russak氏は、病原体検出の現場においてqPCRの専門知識を持つ技術者不足を目の当たりにした。病原体検出のノウハウはすでに文書化され、科学文献で十分に認識されている。にもかかわらず、大量の検体を処理しなければならない医療機関において数少ない専門スタッフによる操作は時間がかかり、エラーが発生する可能性は否めない。

既存のシステムは一般病院での診断ニーズには不十分で汎用性に欠けるものであったのだ。しかし、この問題を解決することは、現在の医療機関だけでなく、新興国を含む科学的専門知識がほとんど利用できない分野に正確な診断をもたらす、と確信した彼らは2009年にAzurePCRを設立した。

テンプレートデータとの比較で正確な定量を実現

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AccuCallの自動定量システム
(出典:AzurePCR公式ホームページ)

従来qPCRは、検体とコントロールサンプルの増幅曲線から得られるCT値(PCR 増幅産物がある一定量に達したときのサイクル数を示す数値で、DNA量を算出するのに必要)を用いて、DNA量を算出する。一方、AzurePCR社が開発したAccuCallと名付けられたソフトウェアは、標準化されたqPCRの結果を提供する。すなわち分析された検体のデータはデータポイントに変換され、プログラムされたテンプレートデータと比較されることにより結果を算出するのだ。これには技術者による設定の操作や増幅曲線の検証を必要としない。

このAccuCallの定量能の検証として1692数のCMV(サイトメガロウィルス)臨床検体を、qPCRメーカーであるABI(Applied Biosystems)の定量ソフトを使用した結果と、AccuCallの結果について比較する。ABIのメソッドは技術者が介在し、全ての増幅プロットについてデータ処理を行うものである。その結果、ABIとAccuCallで得られたCT値はR2=0.999、CMVの定量値においてはR2=0.995の高い相関性を示した。このことから、AccuCallはCMVを定量するために従来法と同等の正確性を有することが示された。(参照:AzurePCR公式ホームページ)

AIでシステムがさらに進化

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誰にでも利用可能なシステムへ
(出典:pixabay)

現在、彼らは次のステージへと移行しつつある。AccuCallをさらに高度化し、qPCRテストを自動的に解釈できる人工知能(AI)製品であるpcr.aiを構築中だ。これらのアルゴリズムは、熟練した臨床技術者がテスト結果をどのように解釈し、その後、派生した知識を適用して将来のルーチン分析を自動化し、病原体検出テストの手法をどのように変更するかを「勉強する」ことによって自己較正を行う。

この新しいタイプのAI拡張制御により、データ解釈の標準化が確実になり、実行および機械制御がより効果的になり、テストごとおよびマシンごとにリアルタイム監視が可能になるのだ。手作業による差異やエラーの機会をなくすだけでなく、現場の時間とコストの節約にも貢献が期待できる。またこの自動化は、訓練された実験スタッフの世界的な不足に対処するのに役立つと考えられている。(参照:diagnostics.ai 公式ホームページ)

AzurePCR社はもはや研究室のものだけではなくなったqPCRを、実際に必要とする現場へ普及するために新たな能力を不随させた。この新規なデータサイエンスベースのアプローチは今後、臨床検査の進化を目覚ましいものとすることは間違いない。

会社概要

会社名 AzurePCR
CEO Aron Cohen
設立年 2009年
拠点 イギリス ロンドン
社員数 1-10人規模
事業内容 Real-time/qPCR データの自動解析ソフトの開発
主な商品 AccuCall
会社URL http://www.azurepcr.com/
沿革 2017年3月 2017年3月 70社以上のライフサイエンス企業が参加した、MedCityの”Collaborate to Innovate”プログラムを受賞した16のプロジェクトのうちの1つに選出される。(参照:MedCity公式サイト)

メンバー紹介

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Aron Cohen
最高経営責任者(CEO)兼共同創設者
ソフトウェア開発とコンサルティング、プロジェクト管理、システムとネットワークエンジニアリング、事業開発、マーケティングを専門とする。Azure PCR においては、リアルタイムPCRデータの解釈のための高精度自動化ソリューションの開発と製品化の管理 サンプルの結果の精度と効率を高めることに成功した。
2010年1月-現在 Azure PCRのCEO
2007年10月-2014年12月 Ariad Custom Software Solutionsのマネージングディレクター
2005年5月-2006年7月 Green Support LimitedのITマネージャー
リーズ大学でビジネス、経営、マーケティング、および関連サポートサービスの学士を取得。
(参照 Linkedin:https://www.linkedin.com/in/aroncohen/)

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Zeev Russak
最高技術責任者(CTO)兼共同創設者
大規模なアプリケーションの発明者でありエンジニア。ソフトウェア、物理、化学、生物学の幅広いスキルセットを有する。Azure PCRにおいては、分子生物学、データ分析、アルゴリズミックス、数学、コンピュータプログラミングの専門性を持って、分子診断および研究市場へデータ分析ソリューションを提供した。
2007年4月-現在 AzurePCRのCTO
2009年12月-2013年1月 HPのアルゴリズム・ソフトウェアアドバイザー
2007年3月-2008年12月 TIDEXのコンサルタント
2005年6月 – 2007年3月 Orthocrat Ltd.の3D /アルゴリズムチームリーダー
2001年12月 – 2004年12月 ELTA/IDFのソフト開発者
1998年6月 – 2004年12月 webzone.co.ilのオーナー
ハーバード・ロースクールのグローバル・エグゼクティブ・セミナーの交渉のプログラムにおいて、修了証明書を取得。Ha’Universa Ha’Petuhaでコンピュータサイエンスの学士を取得。テクニオン-イスラエル工科大学で科学者とエンジニアのプロジェクトマネジメントにおける6ヶ月のプロフェッショナルコースを受講。Bar-Ilan Universityで、生物物理学の学士を一部取得。

(参照 Linkedin:https://il.linkedin.com/in/russak)

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SAKIGAKE編集部

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