機械学習で紡ぎ出す「優しい債権回収」-TrueAccord

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「債権回収」という言葉には人を尻込みさせる響きがある。威嚇や恫喝をイメージさせるからである。米国サンフランシスコを拠点とするTrueAccord社は、機械学習と消費者行動分析の手法を用いて、顧客にフレンドリーな「優しい債権回収」のシステムを提示する。

債権回収に機械学習と行動分析を応用

2013年に創業したTrueAccord社は、債権回収の効率化のための新たな手法として顧客に対するアプローチの方法を多様化するサービスを打ち出している。顧客の特性に合わせて電話や手紙はもとよりEメールやSMSなどさまざまなルートを駆使してアプローチするものだ。

米国の債権回収業の業界団体であるACAインターナショナルが2016年8月に行ったアンケート調査によると、債権回収業者が顧客とのコミュニケーションに利用したことがある手段として、手紙(99.7%)、電話(98.5%)が上位を占めていた。Eメールを使用したことがあると答えたのは31.7%、テキストメッセージにいたっては2.7%にすぎない。この数字から、いまだアナログな手法に依存している債権回収業の姿が見えてくる。(参照:『Business Practices and Capabilities within the Debt Collection Industry』

TrueAccord社が独自開発した「HeartBeat」と呼ぶシステムは、最も効果的に督促メッセージを送る「絶妙な間合い」を行動心理学と機械学習を用いて割り出し、督促メッセージの発信をスケジューラーで管理し、自動化する。(参照:https://www.trueaccord.com/technology

(出典:FINOVATE SPRING 2015

「感じのいい督促」だったら人は動く

ここで、身近な例を思い浮かべて考えてみよう。家賃や公共料金、住民税などの支払いのほか友人知人からの借金なども含めて、日常生活のなかでの支払い忘れや未払い・滞納は誰にもあり得る。人の人生は様々だ。事情によってはローンの返済を優先したいときもあれば、やっぱり家賃を優先しようとか、優先順位に迷う場合はいずれかが遅れることになる。

支払う原資がまったくない場合を別にすれば、早めに払う気になるかどうかは「督促のされ方」による。絶妙なタイミングで「感じのいい催促」がくればその支払いを優先することは十分あり得る。逆に威圧的な督促が突然きたとき、われわれは不機嫌になる。むしろその業者の支払いに関しては忘れたことにして無視を決め込み後回しにするだろう。そうした態度の表れ方は世代や環境など属する社会階層によっても傾向が異なるが、行動心理学と機械学習を基盤とする督促自動化ソフトウェアによる債権回収の方法は、人間のもつ複雑な感情の微妙な機微をつかみ取り、そのことによって「顧客満足度」を高め、回収率を高める。

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督促状のテンプレートを公式サイト上からダウンロードすることもできる

(参照:TrueAccord社テンプレートダウンロード、写真は筆者)

創業者Samet氏の夏の体験

TrueAccord社の創業者であるOhad Samet氏自身が、自らの体験をブログに記しているように、Samet氏はクレジットカードでの支払いを忘れた際にかかってきたある債権回収業者からのあまりに不作法な電話に不快な思いをした体験をもとにTrueAccord社の創業を考え始めたのだという。2012年の夏のことである。(参照:TrueAccord社公式ブログ「How One Rude Debt Collector Made Us Start TrueAccord」

他の場所でも述べていることだが、(参照:「Debt collectors are trying a new strategy to win people over: friendliness」(Yahoo!Finance))Samet氏はこのとき「債権回収業は顧客を犯罪者扱いするのではなく、なぜ支払うことができなかったのか理由を理解すべきだ」という考えに至ったのである。このことはすなわち、これまで「性悪説」を基に威圧的なアプローチをとってきた伝統的な債権回収業の世界を「性善説」に変える根源的な人間観の転換を促していると言える。

ここには人間についての深い洞察がある。格言風に言うなら「怖い顔の債権回収業者はいらない。債権回収はフレンドリーが基本!」ということである。この格言が世界の債権回収業者の常識になる日は近い。TrueAccord社の真骨頂はそこにある。

会社概要

会社名 TrueAccord
CEO Ohad Samet
設立年 2013年
拠点 米サンフランシスコ
社員数 11-50人規模
事業内容 債権回収支援サービス
会社URL http://www.trueaccord.com
沿革 2013年 創業
2014年9月 Khosla VenturesやPayPal社( https://www.paypal.com )の協同創業者として知られるMax Levchin氏などから500万ドルの資金を調達(シリーズA)
(参照:「TrueAccord Looks To Fix Debt Collection With $5 Million From Khosla Ventures, Max Levchin And More」(TechCrunch)

メンバー紹介

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Ohad Samet
共同創業者・CEO
2005年、テルアビブ大学で生物学と心理学の学士号取得。PayPal社のリスク分析マネージャーや、オンライン決済支援を手がけるKlarna社( https://www.klarna.com/international )のチーフ・リスク・オフィサーなどを経て、2013年TrueAccord社を創業、CEOとなる。
(参考:LinkedIn:https://www.linkedin.com/in/osamet/

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Nadav Samet
共同創業者・Chief Innovation Officer
イスラエル国防軍(IDF)のテクニカルアナリストやMintigo社( http://www.mintigo.com/ )のソフトウェアエンジニアなどを経て、2013年にTrueAccord社を創業、CIOとなる。2013年にテルアビブ=ヤフォ学院大学でコンピューターサイエンス理学士号取得。
(参考:LinkedIn: https://www.linkedin.com/in/nadav-samet-b90a761/

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SAKIGAKE編集部

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