オンラインで患者をエンパワーするサービスを提供-Patients Know Best

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Patients Know Best社(以下、PKB)が提供するのは、今まで技術的および法的な問題で共有が困難だった医療情報を、PKBの患者用ポータルサイトを通じて一元管理し、患者自らが主体的に健康を管理することを可能にするサービスである。

同社は現在3つの事業を展開している。一つ目は患者用ポータルサイト、二つ目は周産期医療機関と共同で運営する母子健康記録、そしてHealth Information Exchangeシステムである。

PKBが目指すもの

  1. ひとりひとりが自分の全医療情報を持つこと
  2. ひとりひとりがその情報を理解すること
  3. ひとりひとりがそれを家族や専門家と共に判断を下す際に用いること

PKBポータルサイトを通じて、患者の主体的な疾患治療・管理をサポートする仕組みを築くことでそれらを実現している。このサービスは患者自身だけでなく、医師、研究者、慈善団体等の患者を支えるすべての人々に利益をもたらすものとなっている。

患者用ポータルサイトの特徴

  • 患者が自分で家族や医療従事者の中から、自己管理医療記録を共有する相手を決定できる
  • 患者と医療従事者の相互対話に基づいたケアプランを作成できる
  • インターネット対応機器でいつでもアクセスできる
  • 検査結果などの文書や画像の送受信や、テレビ診療が可能である
  • 医療チームのメンバーが互いに離れている場合や、患者が遠隔地にいても治療にあたることが可能
  • 病状の追跡調査が容易になる
  • 医療従事者の情報伝達効率を上げ、医療機関の収益も高められる

同サービスは現在、8か国200以上のサイトでライブ運営されており、17言語に翻訳されている。PKBは世界中の2,700以上の医療機関による研究に基づく最良のオンライン・コミュニケーションを実現するソフトで、他に類を見ない安全なシステムを構築している。

極めて重要な個人情報である医療記録を安全に管理するため、同種のシステムでは世界で初めてポータルサイト内のコンセントエンジンを活用している。特殊な規律で分類されたデータは承認された者以外は閲覧できない。また、全データは独自に暗号化されNHS N3ネットワークに保管される。このシステムはオリジナルであり最も安全な「自己管理医療記録」を実現するキーである。

母子健康記録

安全かつ質の高い産前産後のケアを行うためには、ケアを提供する側と受ける側双方にとって、様々な情報をしっかり記録することが欠かせない。多くのNHS(イギリス国民保健サービス)医療機関で使用されている紙版の母子健康手帳の電子版を周産期医療施設と協力して運営し、母親を中心にすえた情報収集システムを確立している。妊産婦はスマートフォン、助産師はタブレット端末で記録にアクセスする。

Health information Exchange (HIE)

NHS N3ネットワーク内の電子自己管理医療記録を介して、健康情報を交換する場を提供することで、個人使用の他、一元化された記録に基づきNHSトラスト、地方公共団体、慈善団体、社会的企業およびその他医療に関わる全ての団体が、イギリス全土において包括ケアを提供することを可能にしている。

起業家として

創設者のDr. Mohammad Al-Ubaydli氏自身が長期にわたり疾患に悩まされ、様々な人々に支えられた経験がPKB創設に繋がったという。安価なIT技術を使用することで、従来の医療システムに変革をもたらすこととなったサービスは、特異な疾病だから自分で医療データのコピーを手に入れたいと思ったことに由来する。体調不良を抱えて、入り組んだ治療スケジュールのマネージメントやいろいろな医療機関の予約を取ることは、本当に大変なことだ。それが、糖尿病、喘息、心臓病といった医療機関との長期の“おつきあい”を必要とする疾患ならなおさら負担は大きい。患者ならではの気づきが、より簡単に自分で健康マネージメントをできるツールであるポータルサイトという形に結実した。

更には医師としての側面が、オンライン診療提供へと繋がっている。自身の経験や様々な研究機関の情報から、必ずしも受診が必要ではない患者がいることに気づき、診療効率を上げるために手ごろなオンライン医療相談ができる場を、医師らが使い慣れているNHSネットワークに統合し運用を開始した。10分でより良いケアを提供できると、医師らに請け合っている。

彼が起業家を目指したのは、多くの親族が何らかのビジネスを手掛けていたこともあって、幼いことから何か会社を興すのは自然なことと捉えていたからだと言う。課題を見つけ、ソリューションを考え出してビジネスモデルを作るということが、自然と身に付く環境だったのだろう。そして、医師としてのトレーニングを受けていく中で、ヘルスケア分野におけるITの活用状況が先進的とは言い難いのを知り、自信が持つプログラミングの知識を活かせないかと思い始め最初のプログラムを書いた。実地経験をいかしてビジネスにつなげていくことを重視する、ボトムアップスタイルの起業は多くの起業家が共感するところだろう。特に医師の起業に関して彼は、様々な分野のビジネスを知ること、そして会計の知識が何よりも必要とアドバイスしている。
(参考:DOCTOR PRENEURS

あとがき

日本でも何年も前から、電子カルテやマイナンバーを使った診療情報の電子管理といった医療情報の統合・管理方法について議論が交わされているが、まだPKBが提供する包括的なプラットフォームシステムの構築には至っていない。

日本では、まだ電子カルテの使用は普及途中である。カルテ情報は医療機関、健康診断の情報は検診機関や保険者、運動情報はフィットネスクラブ、体重計等の情報は家庭など、様々な場所に散在している。これら全ての情報を電子化するのは、膨大な手間暇を要する。したがって、電子情報と紙版カルテの併用が主流となっているのが現状だろう。

しかし、“併用”状態ではどちらに情報があるかわからなくなり、重要な記録の見落としが発生しやすくなるという大きな問題がある。例えば、ある患者が特定の薬に対して副反応を示した場合に、そのことを紙カルテに記録しても電子カルテに記録せず、別の医師が診療記録を確認した際に、電子カルテしか見なかったために、この薬で副反応が発生したことに気づかないといったことが起こる危険性がある。

全医療情報を電子化し一元管理する、PKBのソリューションはこのような問題を解決するツールとなる。また、ペーパーレス化により医療情報の保管・管理に関するコストなども軽減されるはずである。

今は表に出てきていない課題・要望を探し当て、様々な機能・サービスを統合したビジネスは、高齢者医療、医師・医療機関の偏在など様々な問題を抱える日本でも必要とされているのは間違いない。まずは、日本の医療環境をじっくり観察してこの国に合うサービスは何か考えていくことが、医療を取り巻くサービスを前進させる第一歩であろう。

会社概要

会社名 Patients Know Best
CEO Dr Mohammad Al-Ubaydli
設立年 2008年
拠点 イギリス
社員数 11-50人規模
事業内容 ソフトウエア開発、PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)
会社URL http://www.patientsknowbest.com
受賞歴 2009年 Seedcamp Winner
2010年 Techcrunch Europa Winner
2012年 Health 2.0 Europe Winner
2013年 HSJ Clinical Leader Award
Deloitte Social Innovation Pioneer
2014年 HSJ Clinical Leader Award
2015年 Global Digital Health 100
HSJ Clinical Leader Award
EU SME eHealth Champion
EHI Winner
2016年 Health Tech& You Champion Award

メンバー紹介

Dr Mohammad Al-Ubaydli

Dr Mohammad Al-Ubaydli
創設者
医療ソフトウエア業界での経験は15年以上にわたる。ケンブリッジ大学で医師としてのトレーニングを受け、アメリカ国立衛生研究所でstaff scientistを始めとして、様々な医療機関での勤務経験を持つ。2008年、Patients Know Bestを設立。現在までに、自己管理医療記録に関するものも含め7冊の著書がある。また、自己管理医療記録についての研究が認められUCLメディカルスクール名誉上級研究教授の肩書を授与されている。2012年、患者管理における功績が評価され、社会企業家としてアショカフェローに選出された。彼こそがPKB患者ポータル・ソフトウエアの立役者である。

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SAKIGAKE編集部

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