空撮データで農地可視化!水不足に挑む「豊穣の女神」現る-Ceres Imaging

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米国西部の中でも激しい干ばつの中心地として知られるカリフォルニア州で水不足が深刻化している。水不足はとりわけ農地の作付けに影響し、農家にとっては常に頭の痛い問題となっている。

こうした状況のなか、カリフォルニアが1200年に1度とも言われる記録的な干ばつに見舞われたさなかの2014年(参照:『The Guardian』2014年12月8日付「California just had its worst drought in over 1200 years, as temperatures and risks rise」に創業したCeres Imaging社は、撮影した農地の航空写真を画像解析し、作物の生育状況のデータをリアルタイムで農家に提供する技術を開発した。

ローマ神話に登場する豊穣の女神Ceres(ケレース)の名を社名に冠した同社は、独自の画像処理技術でカリフォルニアの水不足に挑む。

カリフォルニアの水資源は枯渇している

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カリフォルニア州当局が「干ばつ非常事態宣言」を出した2014年1月の干ばつマップ。干ばつが激しい地帯ほど色が濃くなっている
(出典:U.S. Drought Monitor Map Archive

カリフォルニア州当局が「干ばつ非常事態宣言」を発令したのは2014年1月のことだった。全米干ばつ対策センター(The National Drought Mitigation Center)が週次で公表している「干ばつマップ」(United States Drought Monitor)の同月時点のアーカイブを見ると、赤と茶色の色がついた領域がカリフォルニアに集中していることがわかる。この色分けは干ばつ被害の度合いを5段階で測る区分で、茶色は最高レベルの「異常な干ばつ」を意味する。赤は「異常な干ばつ」よりも一段階低いレベルの「極度の干ばつ」を示しているが、いずれも広範囲にわたる深刻な水不足と作物被害の状況を反映している。

農地の作付けが困難になるなど農業の継続性が危ぶまれる緊急事態だ。2015年4月にはカリフォルニア全土で節水が義務づけられ、農業の水利用の効率化が喫緊の課題となっている。(参照:『日本経済新聞』2015年4月2日付「米カリフォルニア州、住民に25%節水義務付け」

水資源効率化のためのデータ利用へ



Ceres Promo from jenna rodriguez on Vimeo

カリフォルニアの干ばつのさなかにCeres Imaging社が開発した画像処理技術は、空撮した農地の映像を独自のアルゴリズムを用いて高解像度のマルチスペクトル(Multispectral)画像として再構成するものだ。

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空撮映像を基にマルチスペクトル画像が生成される
(出典:Ceres Imaging社公式サイトのデモ画面

マルチスペクトル画像とは、光を人間が目で見ることができる可視領域以外の波長を持つ複数のスペクトル(波長帯)をそれぞれ色分けし、有意な情報として把握するための技術だ。上の図は、同社のデモサイトに表示される農地画像だが、四角に区切られて赤・青・緑・黄に色分けされて表示されている部分がマルチスペクトル画像処理された領域だ。

ここで色分けされているのは作物に水が不足している状態を示す「水ストレス(water stress)」の度合いを示している。赤く表示されている箇所ほど水ストレスが高く収穫量が25%以上減少する目安とされている。同様に葉緑素や窒素の含有量をマルチスペクトル画像として表示することもでき、農家はこれらの情報をスマートフォンやタブレット端末の画面に表示させることで、リアルタイムに農地で起きている問題点を発見することができる。病気や雑草の検出、施肥、灌漑、薬剤散布のスケジューリングのほか、土壌管理などの意思決定に寄与する重要なデータとなる。

カリフォルニアでは限られた水資源の効率的な利用が課題だが、そのほか肥料使用の緻密化を通して収穫量の最大化を実現する。より効率的で持続可能な農業生産体制を築くことを可能とする仕組みだ。

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Ceres Imaging社の画像解析は、穀物や柑橘類などのほか、さまざまな作物に対応している
(出典:Unsplash

同社の画像解析が対応する作物は、小麦やトウモロコシなどの穀物をはじめ、柑橘類、葡萄、ベリー、綿花、そして米など多岐にわたる。また、サービスの利用料金は初期費用やハードウェア等の設備費用の負担もなく、データ量のみに応じて課金される。現在は米国カリフォルニア州に加えて、オーストラリアでも同様のサービスの提供を行っている。(参照:Ceres Imaging社公式サイト「FAQ」

「豊穣の女神」にかかる世界の期待

1930年代、世界恐慌のさなかにアメリカ中部で巻き起こったダストボウル(壊滅的な砂嵐)で農地を失い、オクラホマから新天地カリフォルニアへ向かう農民の姿を描いたのがスタインベックの小説『怒りの葡萄』だ。

この頃、中部から約40万人の農民が職を求めて西部へ向かったと言われている。そして世界恐慌後、米国の水政策はニューディール政策でダム建設が活発化した「開発の時代」を経て、カーター政権期に自然環境への配慮を意識した「管理の時代」へ移行したとされる。(参照:建設技術研究所「カリフォルニアの水資源~過去、現在、未来~講演報告」

そして21世紀のCeres Imaging社の登場で水管理はより精緻な「データの時代」に入ったと言えるだろう。同社は2016年にシードアクセラレーターのImagine H2Oが世界20カ国90社から選ぶ「将来有望なデータドリブン型水ビジネストップ10」に選出されている。(参照:「Water Innovation Accelerator Showcases Promising Data Startups」

1200年に1度の歴史的な干ばつに見舞われたカリフォルニアに登場したCeres=豊穣の女神に今世界の期待がかかっている。

会社概要

会社名 Ceres Imaging
CEO Ashwin Madgavkar
創業 2014年
拠点 米カリフォルニア州オークランド
社員数 11-50人規模
事業内容 農業向けマルチスペクトル画像の提供
会社URL http://www.ceresimaging.net
沿革 2014年 創業
2014年5月 Silicon Badiaから資金を調達
2016年3月 Imagine H2Oが世界20カ国90社から選ぶ「将来有望なデータドリブン型水ビジネストップ10」に選出される
(参考:crunchbase

メンバー紹介

Ashwin Madgavkar
創業者
2007年、テキサス大学オースティン校卒。2013年、スタンフォード大学経営大学院でMBA取得後、ボストン・コンサルティング・グループのコンサルタントやスタンフォード大学講師などを経て、2014年、Ceres Imagingを創業。
(参考:LinkedIn

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SAKIGAKE編集部

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