時速400個のハンバーガー作る!ファストフード無人化の衝撃-Momentum Machines

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IoT時代に加速する産業の「無人化」の波は、製造業にとどまらずレストランなどのサービス産業にも押し寄せている。2009年に米カリフォルニア州で創業したMomentum Machines社は、「より安くて美味しいハンバーガーを作る」ことを目標に掲げ、ハンバーガーを1時間で400個作る調理ロボット「Patty」の開発を手がける。数年後にはサンフランシスコ・ベイエリア近郊のソーマ地区にレストランを出店する計画だ。

サンフランシスコ・フォルサム通りにレストラン出店を計画中

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Momentum Machines社がレストランの出店を計画する米サンフラシスコ・ソーマ地区
(出典:Wikipedia

680 Folsom St. in the SoMa(ソーマ地区のフォルサム通り)」。これはMomentum Machines社が計画を進めるレストランの建設予定地だ。(参照:2016年7月16日付EATER「A Robot Burger Restaurant Is Coming to San Francisco」サンフランシスコのソーマ地区(SoMa=South of Market)といえばMomentum Machines社が拠点を構える地区。フォルサム通りはその中の一角にある。

港町であるソーマ地区はかつては倉庫街として知られた場所だが、今では再開発が進み、古い倉庫をリノベーションしたオフィスビルが建ち並ぶ。Twitter社をはじめ、Uber社Airbnb社などの著名なスタートアップが本社を構えるのも実はこのソーマ地区だ。そのため、シリコンバレーとサンフランシスコをつなぐテックハブとも言われている。

また、その一角に位置するフォルサム通りは、古くからゲイバーの密集地としても知られ、毎年9月末には革や鞭の熱烈な愛好者(フェチ)やハードゲイが集う「レザー祭り」が行われることでも有名だ。(参照:「映画評論家町山智浩アメリカ日記」2006年9月24日付「これがハードゲイ祭りだ!」

起業家、エンジニアから皮フェチ、ハードゲイに至るまで幅広く個性的なテイストの生き方を選択する人びとが集まるのがフォルサム通りの特色なのだが、こうした文化的多元性の高い地区にMomentum Machines社が運営するレストランの出店が計画されているのである。

ハンバーガー1時間400個の衝撃

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ハンバーガー調理ロボット「Patty」は1時間に400個のハンバーガーを作る
(出典:ペンシルベニア大学ウォートン校が運営する高校生向け教育ポータルサイト「Knowledge@Wharton High School」

Momentum Machines社は、開発しているハンバーガー調理ロボット「Patty」の技術的な詳細を明らかにしていない。ハンバーガーを時速400個(1個につき約10秒)の高速で作り出すものだということだけがわかっている。

トマトやたまねぎをスライスする、パティーを焼く、バンズにのせて包装紙に包む——。この工程をロボットが完全無人で自己完結する仕組みだ。もっとも、ハンバーガーの調理は他の料理に比べれば至ってシンプルである。そのためハンバーガーショップの仕事は、誰もが容易に就労可能なエントリーレベルの仕事の代表格として、日本でも学生アルバイトの定番だ。

ペンシルベニア大学ウォートン校が運営する高校生向け教育ポータルサイト「Knowledge@Wharton High School」は、Momentum Machines社のハンバーガー調理ロボットとファストフード産業の関係を論じながら、米国のハンバーガーチェーン・バーガーキングが学生アルバイトを経済的に支援する奨学金制度(参照:「Burger King Scholarship」を整備していることに着目し、ハンバーガーショップの仕事が基礎的な労働規律を身につける教育の場として機能していることを指摘している。また、こうした単純な反復労働を避ける傾向があるミレニアル世代は基礎的な労働倫理を欠いている傾向があるとも言う。(参照:「Robots Advance: Automation in Burger Flipping and Beyond」(2015年8月19日)

学生アルバイト消滅!?待ち受ける雇用の未来

Momentum Machines社の共同創業者の Alexandros Vardakostas氏は2012年に「私たちのデバイスは労働者をより効率的にするためのものではなく、完全に不要にすることを目指しています」と発言しているが、(参照:2012年6月12日付Xconomy「Hamburgers, Coffee, Guitars, and Cars: A Report from Lemnos Labs」2013年にオックスフォード大のCarl Benedikt Frey研究員とMichael A. Osborne博士は『雇用の未来』と題する論文で米国の労働人口の47%がAIやロボットで代替されると結論付けた。同論文の試算によればファストフード店の調理担当者の仕事は81%の可能性でロボットに置き換えられるという。(参照:Carl Benedikt Frey and Michael A. Osborne「THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION?」2013年9月17日

たしかに、エントリーレベルの単純労働はそれ自体としてはロボットで置き換え可能だ。だが、バーガーキングの奨学金の事例のように、それに付随する社会的機能や教育的機能を担う責任の一端は企業にある。IEEE Spectrumによると、Momentum Machines社は人間労働がロボットに代替される「移行」のあり方について広くアイディアを募っているようだが、その道行きは必ずしも明確ではないだろう。(参照:IEEE Spectrum「Robotics Company Prepares to Take Responsibility For Displaced Workers」

技術革新と人間労働の対立がもたらす社会の断絶をどう乗り越えるのかという問いは、時代を下って現代に至るまで繰り返し現れる古くて新しい問いである。革新的技術を社会がどのように融和してゆくかは社会総体としてのビジョンの有無にかかっている。

会社概要

会社名 Momentum Machines
CEO Alexandros Vardakostas
創業 2009年
拠点 米カリフォルニア州
社員数 11-50人規模
事業内容 ハンバーガー調理ロボットの開発
会社URL http://momentummachines.com
沿革 2009年 創業
2012年11月 Great Oaks Venture Capitalなどから出資を受ける(金額非公表)
(参考:crunchbase

メンバー紹介

Alexandros Vardakostas
共同創業者・CEO
2007年、カリフォルニア大学サンタバーバラ校卒。在学中、Wim van Dam教授の下で量子コンピューターアルゴリズムの調査アシスタントを務めた。半導体産業でのエンジニアを経て、2009年12月、Momentum Machines社を創業、CEOとなる。(参考:LinkedIn

Steven Frehn
共同創業者・COO
2009年、スタンフォード大卒。Tesla Motors社のメカニカルエンジニアなどを経て、2012年4月からMomentum Machines社のCOOとなる。(参考:LinkedIn

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SAKIGAKE編集部

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