23対の染色体が紡ぐ、過去・現在・未来の自分-23andMe

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自分はどこから来た何者なのか?こうした疑問を人々は皆かかえているのだろうか?陸続きで諸国家を有するヨーロッパ、アフリカ、中東、さらには人類のるつぼと呼ばれるアメリカでは、自らのルーツを知ることは重要なようだ。島国で暮らす日本人にはなかなか共感できない考え方かもしれない。23andMe社は数ある遺伝子情報会社のなかでも個人へのDNA解析販売で大きく飛躍した、DNA検査のパイオニアだ。

成功の要因は簡便性?

23andMe社はLinda Avey氏、Paul Cusenza氏 、Anne Wojcicki氏の3人が2006年に起業したDNA情報解析のための会社だ。現在CEOを務めるAnne Wojcicki氏は、Google創業者Ceigel Brine氏の元配偶者であることでご存知の方も多いかもしれない。

遺伝子情報ビジネスが激化するなか、23andMe社が打ち出したのは個人への遺伝子検査の販売である。多くの場合、遺伝子検査では採血や細胞採取を伴うことが多いため、医療機関や専門の研究機関を介するが、彼らは唾液での検査を選択している。唾液の採取ならば、一般人でも可能となるためだ。価格も149ドルと、決して手が出せないものではない。この消費者直結のシステムは遺伝子に興味をもつ人々の購買意欲をかきたてるものに違いない。

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23andMe コレクションキット
(出典:23andMe公式ホームページ)

流通のシステムについて説明すると、まずインターネットでコレクションキットを購入する。キットの使用期限は購入日より1年以内。送られてきたキットには唾液を採取するための補助漏斗付きのチューブが入っており、採取後チューブの蓋を閉じてハザードバッグに入れ、送り返すだけだ。結果は6-8週間後に23andMe社のサイトを通じて通知される。

自らのDNA情報を知る時代

得られる結果については、自分の由来、祖先についての情報が提供される。自分の父、母、地域性、さらにさかのぼり、何%のネアンデルタール人遺伝子が残存しているか?などユニークな項目もある。サイト上でマッチングした結果、離れ離れになった家族と出会えたストーリーも実際に存在している。(参照:23andMe公式ホームページ)

さらにオプションを追加すると以下のような、自身が保有している可能性のある病因について知ることができる。
・現時点で考えられる遺伝的リスク要因→アルツハイマー病(APOE変異体)など、11種
・子供への遺伝的継承が予測される要因→末梢神経障害を伴う脳梗塞の発生など、43種類
・薬物応答→ワルファリン(=血栓塞栓症の治療や予防に使用される薬)への感度など、12種類
・形質について→髪色、耳垢のタイプ、歯の発達、ノロウィルス耐性など、41種類
(参照:23andMe公式ホームページ)
これらの検査結果を踏まえて、顧客は医師と相談の元、治療および予防の選択肢を持つことができるのだ。

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パートナーとの遺伝子情報のマッチング
(出典:Pixabay)

また配偶者やパートナーの遺伝情報とマッチングさせれば、生まれてくる子供に与える可能性についても考察される。実際、Anne Wojcicki氏自身も妊娠前に配偶者との遺伝子マッチングを実施している。

これは彼女の姉妹が妊娠後期にブルーム症候群(=小柄な体型、日光過敏性紅斑、免疫不全などを特徴とする常染色体劣性の遺伝病)(参照:難病情報センター)であることを知った時の憔悴や不安を目の当たりにしたためだ。彼女は、自身の家系が持つ病的因子が子供に伝わる可能性を、妊娠前に知ることの重要性を強調している。(参照:23andMeブログ)

カスタマーが研究情報提供者に!

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新薬の開発に貢献
(出典:Pixabay)

新たなビジネス展開として、DNA検査を行った購入者の了承のもとに、遺伝子情報を研究機関へ提供する事業を行っている(参照:23andMeホームページ)。〝23andMeアカデミックリサーチコラボレーションプログラム〟と名付けられたこの事業は、学術研究者が23andMeデータベースから集められたデータにアクセスすることを可能にするものだ。

個人に直結した販売を行っただけあり、23andMe社のもつ遺伝子情報の個体数は100万人を超える。このうち80%が疾患予防、薬物療法、疾患治療、そして最終的には治癒への遺伝的経路の発見に貢献する可能性を期待して、研究への参加に同意、情報提供を承諾しているのだ(参照:23andMeホームページ)。新たな疾患の特定や新薬の開発に有効なこの巨大な情報は、これまでに、70以上の学術機関と共同研究を行い、50報以上の科学論文を発表した実績を持っている。

23対で編成されるヒトDNA染色体はその複雑な組み合わせによって個人を形成している。さらには過去を明らかにし、現在を知り、未来を予想することができる。いまだ解明されていない遺伝子コードも多数存在するため、フィールドは無限に拡がっている。23andMe社はその名の通り、遺伝子と自分を繋ぐことで新たな未来の創造と、無限の可能性を秘めているのだ。

会社概要

会社名 23andMe
CEO Anne Wojcicki
創業 2006年
拠点 アメリカ カルフォルニア州 マウンテンビュー
社員数 201-500人規模
事業内容 遺伝子分析、解析サポートおよび遺伝子情報の提供
主な商品 Personal Genome Service
会社URL https://mediacenter.23andme.com
沿革 2006年 Linda Avey、Paul Cusenza 、Anne Wojcickiらにより創設。
2008年 タイム誌の 2008 ‘Invention of the Yearに選ばれる。(参照:タイム誌コンテンツ)
2016年10月 Google、Jhonson&Jhonson、Casdin Capitalなど16社から総額2億4092万ドルの資金調達を達成。
(参照:crunchbase

メンバー紹介

Anne Wojcicki

Anne Wojcicki
最高経営責任者(CEO)および共同創設者
大学卒業後、生化学分析者として10年の経歴を持つ。2006年 23andMeを起業し、現在CEO。1992-1996年 イエール大学で生物学を専攻、学士。(参照:Linkedin)

Andy Page

Andy Page
社長
マーケティング、エンジニアリング、金融、製品管理、法務、および全体的な企業戦略などをリードする。2013年6月 23andMe社長に就任。1991-1993年 ハーバードビジネススクール MBA取得。1984-1988年 プリンストン大学 文学士号取得。(参照:Linkedin)

Linda Avey

Linda Avey
共同創設者
ライフサイエンス事業に精通し、20年のキャリアを持つ。2014年-現在 Perlstein Labの取締役。2011年6月-現在 Curios社の共同創設者。2006年3月-2009年9月 23andMeの共同創設者および共同社長。1978年-1982年 オーガスタ大学生物学専攻、学士。(参照:Linkedin)

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SAKIGAKE編集部

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