補助人工心臓(LVAD)をワイヤレスで駆動。感染症予防に貢献-Leviticus Cardio

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既存の補助人工心臓をワイヤレス化に――。Leviticus Cardio社はうっ血性心不全の患者向けに「CETシステム」と呼ばれるデバイスを開発している、イスラエルのスタートアップ企業です。

うっ血性心不全とは?

私たち人間にとって、最も大切な臓器といっても過言ではない「心臓」。

ご存知の通り、心臓はポンプのように血液を循環させ、生きるために必要な酸素と栄養を全身に行き渡らせる働きをしています。心筋と呼ばれる心臓の筋肉で規則正しく拡張と収縮を繰り返し、生涯にわたり休むことなく血液を送り続けています。

うっ血性心不全は、病気によるポンプ機能の低下で、心臓から運び出す血液の量(心拍出量)が通常より少なくなってしまう病態を指します。それにより、動脈を通って全身に十分な血液を供給することが困難なばかりか、静脈から心臓へ血液を汲み上げるのもままならない状態になってしまい、体力低下、食欲不振、手足のむくみ、息切れ、動悸、呼吸困難といった症状が現れます。

ご高齢の患者を中心に年々増加しており、日本国内だけで推定160万人いると言われています。

現在の埋め込み型LVADは、感染の危険性あり

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(図1)心臓の左心室と大動脈に取り付けられた従来型の埋め込み型LVAD
(出典:Wikipedia「補助人工心臓」

重症化した心不全の場合、心臓移植、あるいは冒頭で述べた補助人工心臓の装着が残された治療法となります。

その中の一つである体内埋め込み型の左室補助人工心臓(以下、LVAD)は、心臓の左心室と大静脈に人工ポンプを直接取り付け、モーターなどで血液循環を補助するデバイスです。LVADは通常、「ドライブライン」と呼ばれるケーブルが胸部の皮膚を貫通しており、体外にあるコントローラーとバッテリーに接続されています(図1参照)。ポンプを駆動させる電力は、このドライブラインを経由して供給されているのです。

しかし、このドライブラインの挿入部分は感染しやすく、一度罹ってしまうと治りにくいというデメリットがあります。また、病原菌の進入路にもなっており、全身性の感染症を引き起こしてしまい、重篤な症状になる危険性も否定できません。

ワイヤレス化を実現したCETシステム


CETシステム設置の流れ
(出典:Leviticus Cardio公式YouTube

そこでLeviticus Cardio社が開発したのが、ワイヤレスでLVADに電力を供給できるデバイス「CETシステム」です。既存のLVADと組み合わせて使用する今までにないシステムで、どのLVADでもワイヤレスに生まれ変わるとのこと

CETシステムは、以下の6つのデバイスで構成されています。上記2つの赤字は体内埋め込み、残り4つの青字は体外デバイスを表しています。

・受電装置「インプラント・コイル・リング(以下、リング)」
・内部コントローラー&バッテリー
・送電装置「パワー・トランスミッション・ベルト(以下、ベルト)」
・外部コントローラー
・外部バッテリー
・ユーザーウォッチ

このシステムは、「電磁誘導方式」が利用されており、コイル2つを向かい合わせて一方に送電することにより、ドライブラインを皮膚に貫通させない完全埋め込み式でLVADの設置が可能となりました。

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(図2)ベルト(青)は胸部に、リング(白)は体内の左肺に装着する
(出典:Leviticus Cardio公式YouTube

ベルトを胸部に、リングは体内の左肺に、お互いが同じ高さになるよう装着します(図2参照)。コイルはベルトとリングにそれぞれ埋め込まれており、磁気の力でベルトからリングへ電力を供給。受電後、外部コントローラーと内部コントローラー&バッテリーでエネルギーを制御し、接続しているLVADのモーターを作動させ、血液の循環を開始する仕組みとなっています。

LVADに関する情報・数値は2つのコントローラーと同期しているユーザーウォッチで確認することができ、非常時にはアラーム機能で患者に通知します。

動力源は主に外部バッテリーですが、前述の通り体内にも補助バッテリーが埋め込まれています。よって、ユーザーウォッチを除く全ての体外デバイスを外して外出しても、約6時間はポンプ機能が停止することはありません

最後に

既存LVADを活用したワイヤレス技術の実現により、ドライブラインを介した感染症の心配が払拭され、患者の生活の質が格段に向上すると医療業界は大きな期待を寄せています。まだ試験段階ですが、CETシステムは補助人工心臓業界に風穴を開ける、大きなポテンシャルを秘めているといっても過言ではないでしょう。

会社概要

会社名 Leviticus Cardio
CEO Michael Zilbershlag
創業 2008年
拠点 イスラエル Petah Tikva, HaOdem 11
社員数 11-50人規模
事業内容 補助人工心臓のワイヤレス化
主な商品 CETシステム
会社URL http://www.leviticus-cardio.com

メンバー紹介

Michael Zilbershlag

Michael Zilbershlag
創立者・CEO
テルアビブ大学電気工学部で理学士、英国ダービー大学でMBAを取得。Leviticus Cardio社の設立前、GenesisOS社の創業者兼CEOを務めていた。システム工学に関する知識、医療機器の研究開発の経験が豊富である。

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SAKIGAKE編集部

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