天才数学者が挑むIoT時代のセキュリティー対策!数理モデルで未知のリスク捉える-ThetaRay

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あらゆるものがネットワークにつながるIoT(Internet of Things)。製造業や金融業のほか発電所など重要インフラ産業までIoT化が進み、領域を超えて産業システムが緊密につながればつながるほど、その半面、サイバー攻撃の影響度は広範囲に拡散する。

IoT時代のサイバー攻撃に数理モデルを応用したビッグデータ解析技術で挑む――。世界的に著名な2人の天才数学者、Amir Averbuch氏(テルアビブ大教授)とRonald Coifman氏(米イェール大教授)が2013年に創業したサイバー・セキュリティー企業がThetaRay社だ。

IoT化で拡散するセキュリティー・リスク

日本でも官民挙げて研究開発が進められるIoT。ドイツでは政府主導による「Industry4.0」の取り組みが「第4の産業革命」と言われ注目を浴びるが、その中心はスマートファクトリーと呼ばれる「工場のネットワーク化」の試みだ。

サプライチェーン全体をネットワークで結ぶことで、工場内(外)に存在する製造に関するあらゆる情報(ビッグ・データ)をリアルタイムに共有・一元化し、生産の最適化を図る。それをテコにして製造業全体の生産性の飛躍的な向上を目指そうとするものだ。

IoT化の進展は製造業だけの話ではない。金融産業では金融とITを融合するFintechの動向に注目が集まり、自動車産業ではネットにつながる自動運転車が交通インフラそのものをIoT化してゆく。また、米ゼネラル・エレクトリック社は、ドイツの「Industry4.0」の向こうを張って「Industrial Internet」と銘打ったIoT戦略を展開し、デジタル発電所の建設プロジェクトを進めるなど、(参照:「Inside GE’s Digital Solutions unit: Talking IoT development with Ganesh Bell」(ZDNet、2016年3月14日付)エネルギー産業を含む重要インフラ産業までもが全面的にネットワーク化されようとしている。

こうしてセクターを超えて産業全体が相次いで革新されてゆく動向は、まさに現在進行形の「産業革命」が現前する光景に立ちあうような目を見張るものがある。しかし、こうした急速なIoT化の進展のなかで、確実な備えが必要なのは日増しに高度化するサイバーセキュリティー・リスクへの対策だ。

産業のIoT化でITとOT(Operation Technology=運用技術)の緻密な一体化が急速に進めば、その半面でIoT化の進展自体が業務運用上のリスクを高めることは避けられず、サイバー攻撃を受けた場合には影響が及ぶ範囲も広範囲にわたることになる。

イスラエルを拠点とするThetaRay社は、金融産業をはじめ製造業や重要インフラ産業にいたるまでセクターや業種を超えた広範囲なセキュリティーリスクを数理モデルを用いたビッグデータ解析技術でカバーする。

数理モデルを応用したビッグデータ解析で脅威の発生を検知

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システムのあらゆる側面からビッグデータの異変を捉える
(出典:ThetaRay社公式サイト

ThetaRay社が提供するセキュリティー・ソリューションは、企業の製品やサービス、プラットフォームに起きる不規則な「異変」をビッグデータ解析アルゴリズムで捉えるものだ。

ネットワーク上のデバイスやプロトコルを流れるビッグデータを切れ目なく解析し、未知のゼロデイ・マルウェアや標的型攻撃などに対応する。「データの流れ」そのものを対象として解析を行うため、システムの環境属性やデバイスの種類に解析結果が左右されることがなく、あらゆる産業セクターに対応することができるのがThetaRay社の強みというわけだ。

この技術の核となるアルゴリズムは、世界的に著名な数学者であるRonald CoifmanとAmir Averbuch教授が、長年の学術調査を経て導き出した「ブラウン運動」解析の数理モデルをもとに開発されたものだ。

ブラウン運動とは、19世紀初頭にイギリスの植物学者のロバート・ブラウンが発見した「水面に浮かぶ花粉の微粒子がぐにゃぐにゃと不規則に動く現象」のことだが、20世紀初頭に入ってからアインシュタインがこの現象を熱力学の観点から研究したことで知られる。(参照:ロバート・ブラウンの論文「The miscellaneous botanical works」

微粒子が不規則に動くこの「ゆらぎ」を解析する数理モデルが、ビッグデータの「ゆらぎ=異変」を検知するアルゴリズムの基礎になっているのである。(参照:ThetaRay社公式サイト

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この微粒子の不規則な「ゆらぎ」がブラウン運動。これらの微粒子が産業システム上を流れるビッグデータに対応すると考えられる
(参照:Alejandro del Mazo Vivar氏のYouTubeチャンネル

上の図をよく見てイメージしてみてほしい。これらの微粒子は不規則にゆらぎながら、ぐにゃぐにゃと震えるように動いているのである。この微粒子が不規則に拡散してゆく運動と、IoT化で産業全体に拡散する可能性を孕むセキュリティー・リスクの「うごめき」が、ふと、重なって見えてくる瞬間があるだろう。

そのような方法で、規則性が知られていない未知のセキュリティー・リスクを捉えることができるようになったのは、2人の天才数学者の長年の数学的知見の蓄積によるものだ。データの流れの「不規則さ」や「ゆらぎ」を前提としたThetaRay社の卓越したビッグデータ解析技術は、未知の脅威やリスクを捉え、産業システムへの影響を未然に防ぐものとして、IoT時代に果たすべきサイバー・セキュリティー対策の役割を象徴する技術だと言えるだろう。

会社概要

会社名 ThetaRay
CEO Mark Gazit
創業 2013年
拠点 イスラエル
社員数 11-50人規模
事業内容 サイバー・セキュリティー
会社URL http://www.thetaray.com
沿革 2013年 創業
2013年8月 米ゼネラル・エレクトリック社から出資を受ける
2014年7月 ゼネラル・エレクトリック社、Jerusalem Venture Partners(JVP)などから1000万ドルの出資を受ける(シリーズB)
2015年12月 中国電子商取引大手のアリババ(阿里巴巴)、ゼネラル・エレクトリック社などから1500万ドルの出資を受ける(シリーズC)(参照:crunchbase

メンバー紹介

Amir Averbuch

Amir Averbuch
共同創業者・Chief Scientific Officer
数量的調和解析、ビッグデータ解析、シグナル・イメージ・プロセッシングなどの世界的第一人者として知られる。テルアビブ大教授。ThetaRay社創業以前は、米IBM社の研究部門であるトーマス・J・ワトソン研究所のリサーチスタッフを務めていた。(参照:ThetaRay社公式サイト

Ronald Coifman

Ronald Coifman
共同創業者
非線形フーリエ解析、ウェーブレット理論、数量解析、ビッグデータ・プロセッシングを得意とする数学者。米イェール大教授。1999年にアメリカ国家科学賞(National Medal of Science)を受賞している。(参照:ThetaRay社公式サイト

Mark Gazit

Mark Gazit
CEO
イスラエルで20年以上の国際的なハイテク企業での経験を持つ敏腕経営者。衛星通信のSkyVision社の共同創業者兼CEOなどを経て、2013年からThetaRay社CEO。(参照:ThetaRay社公式サイト

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SAKIGAKE編集部

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海外のスタートアップ、テクノロジーに関する最新情報を発信していきます。 海外の起業家たちが、何の課題に目を向け、どんなことを仕掛けようとしているのか。 最新技術だけでなく、未来を創ってきた人や、これから未来を創ろうとしている人の生活・人生もご紹介します。
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