スマホアプリでゴールド貯蓄!「世界の99%」のための金保有プラットフォーム登場-BitGold

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資産分散のために金(gold)を買おう――。そう思い立った瞬間にスマホアプリ一つで金の購入ができるプラットフォームが存在する。

カナダを拠点に2015年からサービスをスタートした「BitGold(現・GoldMoney)」だ。購入した金は世界7カ所にある倉庫に厳重に保管され、さらに希望者には金口座に紐付けられたデビットカードが発行され、ショッピングの決済に使える。金貯蓄と支払いサービスを統合した次世代型の金保有プラットフォームだ。

資産運用めぐる懸念高まる

2016年の新語・流行語大賞は「神ってる」が大賞に選ばれたが、「ゲス不倫」「ポケモンGO」「トランプ現象」などとともに、「マイナス金利」がトップテンにノミネートされていた。

日銀がマイナス金利政策の導入を発表したのは、年初1月の金融政策決定会合だった。「マイナス金利」政策とは、銀行が、融資先が見つからない資金を日銀に預けておくための「日銀当座預金」の金利をマイナスとするもの。

これまでは銀行が日銀当座預金に預けておいた資金にはプラスの金利が付いていたため、銀行は日銀から利息を受け取ることができたが、マイナス金利の導入で銀行は日銀から利子を徴収される側に回ってしまったのである。デフレ脱却を推し進めるため一層の融資拡大を銀行に促すための措置だったが、ところが日銀の意図と裏腹に、むしろ銀行の収益悪化への懸念が広がっていった。(参照:「マイナス金利で減益3000億円 日銀に懸念伝達 金融庁、3メガ銀調査」日本経済新聞2016年8月13日付朝刊

人々の間では高齢者を中心に資産運用への不安が広がる。個人の預金にまでマイナス金利が及ぶことはないとしても、収益の悪化から銀行が手数料を徐々に引き上げるなどの対応に出るのではないかと考えたのである。

そこでまず思いつくのが「タンス預金」だ。銀行に預けるぐらいなら自宅の金庫にしまっておいたほうがいい。そう考えた。実際、各地のホームセンターでは日銀のマイナス金利導入発表直後からタンス預金用の家庭用金庫の売り上げ数量が急増したとの報道もあった。(参照:「タンス預金急増 マイナス金利で現金流通13年ぶり伸び」日本経済新聞2016年3月10日付朝刊
資産防衛への国民的な不安心理が著しく高まったのは間違いないだろう。

長期的インフレヘッジのための金投資

ところで、資産防衛で思い浮かぶのはタンス預金だけではない。安全資産としての「金(Gold)」だ。

なぜ金なのか? 第一、タンス預金には大きな弱点がある。まず盗難に弱い。盗まれたらおしまいである。そしてインフレヘッジが効かないことである。

デフレの時代には物の価値に対する実質的な貨幣の価値は高まってゆくが(物価下落=貨幣の実質価値上昇)、インフレ率が高まれば逆に貨幣の実質価値は希薄化する。

国や中央銀行が発行する法定通貨(ペーパーマネー=fiat money)は、価値の実体的な裏付けを持たないため、中央銀行が大量に貨幣を増発した結果として貨幣は文字通りの「紙くず」にもなり得ることは、世界史的に数々の事例がある。

第一次大戦中の戦時国債を乱発し、これをなんの価値の裏付けもない貨幣の大量印刷でまかなっていたドイツでは終戦後、未曾有のハイパーインフレーションが起きた。21世紀に入ってからは、2008年にジンバブエで年率5000億%のハイパーインフレーションが発生、最終的には自国通貨の廃止に至っている。(参照:「Zimbabwe offers new exchange rate: $1 for 35,000,000,000,000,000 old dollars」theguardian、2015年6月12日付

Berlin, Reichsbank, Geldauflieferungsstelle
ワイマール共和国時代、ハイパーインフレ下のドイツ帝国銀行では呆れるほどの大量の新紙幣が刷られ、文字通りの「紙くず」となった(1923年10月)
(出典:Wikipedia「Hyperinflation in the Weimar Republic」

長期的なインフレヘッジを考えた場合、タンス預金ではだめなのだ。長期的な資産保全のために、資産の一部を金に分散投資するという考え方は、視野に入れておく必要はあるだろう。

特に、世界のあらゆる貨幣が金との兌換性切断され純粋なペーパーマネーと化したニクソン・ショック以降は、金が「実物資産の王様」と言われる所以はより強固なものとなった。金は、どの時代であってもその希少性と掘削の労働コストの制約から、一定の価値の不変性が保たれる「安全資産」の代表格と認識されているからだ。

0.001グラムからお手軽に金を買える

BitGold社が提供する金取引プラットフォームはウェブ画面上のダッシュボードでも操作できるが、同等の機能を持つスマホ向けアプリが提供されており、こちらのほうが使い勝手が良い。

使い方は至ってシンプルだ。まずは個人情報を登録し、身分証明書の写真をスマホのカメラで撮影してアプリ経由でBitGold社に送信し、アカウントを開設する。開設通知がきたら口座がアクティブになり、最小で0.001グラムから購入できる。

2016年12月現在の1グラム4300円台の相場で言えば、約4.3円から金を購入できる。このお手軽さは注目に値する。個人向けアカウントは口座開設料や保管料が無料で、最大1000グラム(約430万円)まで購入できるが、それ以上になるとビジネスアカウントかウェルスアカウントに移行する必要がある。

また、デポジットへの入金は、銀行口座経由、クレジットカード経由、ビットコイン経由の3種類に対応している。中国からはChina Unipay(中国銀聯カード)が利用できる。

世界7カ所から選べる保管地

購入した金の保管地は、トロント、ロンドン、チューリヒ、ニューヨーク、ドバイ、香港、シンガポールの7カ所から選択することができる。この7カ所の間で移動させたり分散させたりすることも可能で、口座保有者同士であればメールアドレスを指定するだけで送金し合うこともできる。

保管倉庫や輸送のセキュリティーは、貴重品を専門に扱う警備輸送業者の老舗であるBRINKS社と提携し、厳重に管理されている。(参照:「GoldMoney Support Center」

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保管地ごとに保有高が表示され、移動させることもできる(BitGold社が提供するスマホアプリの画面キャプチャ)
(出典:BitGold社 iTunes

金地金の現物引き受けもスマホアプリから

金地金の現物での引き受けもスマホアプリで申し込みが可能だ。1キログラムの延べ金のほか、10グラム単位のキューブや金貨で受け取ることもできる(輸送料は別途かかる)。

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受け取れるキューブや金貨の種類も複数ある(BitGold社が提供するスマホアプリの画面キャプチャ)
(出典:BitGold社 iTunes

希望者にはデビットカードも無料で発行

また、希望者にはMastercardと提携したデビットカードが無料で発行されるサービスがあり、こちらもスマホ経由で申し込むとほどなく送付される。

デビットカードは金口座の保有額分をショッピングの決済に使えるほか、Mastercard、Meastro、Cirrus Networkに対応したATMでの現金引き出しにも対応している。(参照:「GoldMoney Support Center」

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ショッピングの支払いやATMでの現金引き出しに対応するデビットカードが送付される(写真は筆者)

「世界の99%」のためのシステムを!

BitGold社の創業者であるRoy Sebag氏は、イスラエルを拠点とする投資会社Natural Resource Holdings社のCEOを務めた後、ゴールドマン・サックスグループでシニア金属アナリストを務めていたJosh Crumb氏とともに2014年にBitGold社を設立した。

著名投資家ジョージ・ソロス氏の息子のアレクサンダー・ソロス氏が運営するSoros Brothers Investmentから投資を受けていることでも知られ、(参照:Bloomberg news 2014年12月24日付2016年の夏時点で世界150カ国・地域から114万ユーザーが口座を開設し、約1950億ドル(約22兆円)もの資産を管理するまでに急拡大している。(参照:2016年8月2日付プレスリリース

Roy Sebag氏は、2015年にカナダ鉱山業の老舗業界誌『THE NORTHERN MINER』のインタビューに応じて、「われわれは「世界の99%」のために機能していないシステムに対して挑戦する必要がある」とBitGold社の企業哲学を熱く語っている。(参照:『THE NORTHERN MINER』2015年6月15~21日号(101巻18号)

たしかに、電話回線とスマホさえあれば誰もが少額から金貯蓄が可能となるプラットフォームは、銀行システムや決済インフラが未整備だったり、あるいは経済政策の失政から物価情勢が混乱をきたした国や地域で働く人々の強力な味方になるはずだ。

既存のシステムを乗り越え世界に広がる金貯蓄ネットワークの今後のさらなる展開に注目したいところだ。

会社概要

会社名 BitGold(現・GoldMoney)
CEO Roy Sebag
創業 2014年(GoldMoney社は2001年創業)
拠点 カナダ・トロント
社員数 11-50人規模
事業内容 金融サービス
会社URL https://wealth.goldmoney.com
沿革 2014年 創業
2015年5月 カナダのTSXベンチャー取引所に上場。同月、貴金属ディーラーのGoldMoney社を5100万ドル(約58億円)で買収。
2015年6月 アメリカ合衆国でサービスを開始(参照:Techvibes
2015年7月 「BitGold」から「GoldMoney」に社名変更(参照:Goldmoney News

メンバー紹介

Roy Sebag

Roy Sebag
CEO
2004年に自らの投資会社であるEssentia Equity社をイスラエルで立ち上げ、中国初のP2Pレンディングを手掛けるPpdai(拍拍貸)にシードファイナンスを行う。2010年から再びイスラエルで天然資源への投資を手がけるNatural Resource Holdings社を立ち上げCEOを務めた後、ゴールドマン・サックスグループのシニア金属アナリストだったJosh Crumb氏とともに2014年にBitGold社を設立。(参照:GoldManey Wealth

Josh Crumb

Josh Crumb
チーフ・ストラテジー・オフィサー
ゴールドマン・サックスグループでシニア金属アナリストを務めた後、2014年にRoy Sebag氏とともにBitGold社を設立。地下資源研究の名門と言われる米コロラド州のコロラド・スクール・オブ・マインズで工学の理学士号を取得している。(参照:LinkedIn

James Turk

James Turk
リードディレクター
2001年にGoldMoney社を設立。チェース・マンハッタン銀行やアブダビ投資庁などで40年以上の金融産業での経験を持つ国際銀行家。(参照:GoldManey Wealth

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SAKIGAKE編集部

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