この「手袋」、魔法すぎ!-125℃の火星でもセルフィーを。- Final Frontier Design

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NASA公認」といった文句で紹介されるような宇宙技術は、あらゆるテクノロジーの中でも最先端のものであることに間違いありません。

アメリカで宇宙服を開発するスタートアップ企業Final Frontier Design社も、たしかに世界屈指の技術を持つ企業に違いありませんが、彼らは、未来が単にテクノロジーだけに支えられるものではないことを教えてくれます。

あなたも必ず行ける、宇宙への旅。

レコードから航空機に至るまで、多くの事業を展開するヴァージン・グループを率いるリチャード・ブロンソン。彼が新たに手がける民間宇宙飛行企業、ヴァージン・ギャラクティック社は、2017年に計画されている宇宙旅行の参加者を募集中です。そのお値段は、たった4分間の旅行時間にも関わらず25万ドル、およそ3,000万円だそうです。

簡単には手は届きませんが、宇宙旅行が金額次第で叶えられるようになったことを考えると、私たち庶民が地球を旅立つ日もそう遠い未来ではないかもしれません。

中でも火星は、環境が地球に似ていることから、近年、宇宙の旅先としても有力視されています。いつかやってくる旅立ちに備えて、さっそく火星の風土について、見ていくことにしましょう。

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(出典:Steve Jurvetson@Flickr

似ていると言えば似ている?火星の真実。

火星は、地球と同じように大気によって守られ、水の存在も明らかになっています。春、夏、秋、冬の四季も感じられますが、最も暑い夏でも昼間の気温は20℃ほどで、過ごしやすさを感じる瞬間もありそうです。

「火星、いいね!」、そう思った方には、残念なお知らせです。たしかに火星は大気で守られていますが、その95%はカーボン・ダイオキサイド、つまり二酸化炭素で占められ、酸素ボンベなしで生活することはできません。

また、夏、日中は快適かもしれませんが、夜は太陽の影に隠れることにより、気温が-73℃にまで落ち込みます。バナナで釘が打てる最適温度はー30℃前後だそうですが、冬の火星は、平均気温-125℃という経験したことのない寒さにさらされる、まさに未知の世界です。

誰が言い始めたのかはわかりませんが、あまりに”似ていなさすぎる”火星に、気軽に行けると思ってしまうのは危険かもしれません。
(参照:Space.com)

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(出典:NASA’s Marshall Space Flight Center@Flickr

宇宙空間でぜったいに必要なものNo.1は、手袋。

私たちが火星に降り立ってまずやることと言えば、スマホでの自撮り以外に考えられません。ところが、素手でスマホを出そうものなら、地球の1/100以下しかない気圧のせいで、強力な紫外線が肌の組織を一瞬で破壊し、シミができるどころの騒ぎではありません。

宇宙を職場とする宇宙飛行士たちは、こうした苛酷な環境でありながらも、精密機器の操作やサンプル採取といった細かい作業が求められています。手を保護しながら器用な動きを可能にする手袋の存在は、今後の宇宙研究、ひいては私たちの宇宙旅行の可能性に大きな影響を与えると言っても言い過ぎではありません。

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(出典:NASA Goddard Space Flight Center@Flickr

常識をくつがえし、未来を変えるグローブ。

ニューヨークのブルックリンを本拠とするFinal Frontier Design(FFD)というスタートアップ企業は、2009年にNASAで行われた宇宙用グローブ・チャレンジという宇宙用グローブのコンペで優勝したことをきっかけに、NASAから約4億円の補助金を取得し、公認パートナーとして契約を結んでいます。

FFDが新たに開発したグローブは、機械制御反圧力グローブ(Mechanical Counter Pressure Gloves:MCPグローブ)と名付けられ、グローブ内部についたレーザースキャナーが、手のひらに対する気圧状態をチェック、その解析をもとに、リスト・ダム(Wrist dam)と呼ばれる、風船のように膨らむ素材が、グローブ内の気圧を調整することで、内部を快適に保つという仕組みです。

またFFDのグローブは、超高分子量ポリエチレン(ダイニーマ)を使用した超軽量の不織素材で開発され、細かい手作業にも対応できる伸縮性があることに加え、3Dプリントにより立体加工されたチタン樹脂により、強さも兼ねていることが特徴です。

薄さ、柔らかさ、強さ、軽さの4拍子がそろったMCPグローブですが、指先にはちゃんとタッチスクリーン対応のシリコン製チップが付いていることも、自撮り好きの私たちには欠かせないポイントです。

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(出典:Final Frontier Design 公式サイト

テクノロジーをエンターテインメントに!

MCPグローブは2016年10月にNASAに納品され、CEOのテッド・サウザン氏は、その際、次のように語っています。

「3年に渡る試作を経て、ここまで来られたことを本当に誇りに思っています。近い将来、MCPグローブの技術が、宇宙服すべてにデザインされるために研究を続けられることに本当に興奮しています。」

FFDはグローブだけでなく、宇宙服を一通り手がけていて、ブルックリンにあるFFDのスタジオでは、体験ツアーが行われています。なんとこのツアー、2時間の個人セッションの後に、MCPグローブを付けての無重力作業体験、さらにはアメリカ国旗をバックに宇宙飛行士さながらの記念撮影までついた、内容満載のアトラクションです。

サウザン氏は、技術者としてだけでなく、アーティストやデザイナーの肩書きも持つ人物で、最先端のテクノロジーをエンターテインメントにしてしまう点は、彼ならではの発想です。サウザン氏のように、テクノロジーを技術として終わらせるのではなく、皆で分かち合おうとする気持ちこそ、次世代のリーダーに必要なものなのかもしれません。

そうそう、FFDの体験ツアーは、ホームページからの予約制で、お値段は$795(約8万円)。3,000万円の宇宙旅行に比べれば、ブルックリンへの旅費を含めても、だいぶお手軽な宇宙体験になるのではないでしょうか。

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(出典:Final Frontier Design 公式サイト

会社概要

会社名 Final Frontier Design
CEO Ted Sounthern
創業 2009年
拠点 アメリカ
社員数 1-10人規模
事業内容 宇宙服や不燃性衣類の開発
主な商品 MCP gloves
会社URL http://www.finalfrontierdesign.com
沿革 2009年 NASAのAstronauts Gloves Challenge優勝。その資金でFFDを設立。
2015年 NASAと宇宙技術提供に関する公式契約を締結。
2016年10月 初のMCPグローブがNASAに納められた。

メンバー紹介

Ted Southern

Ted Southern
CEO
Pratt Institute在籍中の2007年に、NASAが宇宙用グローブ・チャレンジに参加し、宇宙分野での事業をスタートさせる。2009年、同コンペで優勝した賞金で、Final Frontier Designを設立。アーティスト兼デザイナーでもあるテッドは、映画や演劇、シルク・ドゥ・ソレイユといったシアターにも技術協力をおこなっている。

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SAKIGAKE編集部

SAKIGAKE編集部

海外のスタートアップ、テクノロジーに関する最新情報を発信していきます。 海外の起業家たちが、何の課題に目を向け、どんなことを仕掛けようとしているのか。 最新技術だけでなく、未来を創ってきた人や、これから未来を創ろうとしている人の生活・人生もご紹介します。
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