研究者が頭を悩ませるあの問題 クラウドで解決します!-DNAnexus

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2009年、スタンフォード大学でDNA配列解析におけるコンピューターインフラ構築のためのスピンオフ事業が3人の科学者によって立ち上がった。コンピュータークラウドを利用したこのシステムは、現在、全世界のバイオインフォマティクス(=生命情報学)のスタンダードになろうとしている。

ゲノミクス研究者の悩み

ゲノミクスを研究する者にとって、DNA配列の解析はその遺伝子を決定づける証明方法である。

近年、次世代シーケンサー(NGS=遺伝子の塩基配列を高速に読み出せる装置)の処理能力の向上によって、分析における研究者の時間や労力は大幅に縮小され、より多くの実験が実施できるようになった。

その一方、特に遺伝子多型解析などにおいては、その病状を持つ多くの患者検体の解析が不可欠となり、膨大なデータが蓄積されていくため新たな問題が発生する。例えば得られたデータを既知のゲノムデータと比較し、さらにチーム内やプロジェクト内で共有することはかなりの高処理能力を持つコンピューターが必要となることだ。

大きな学術機関などでは独自のサーバーを持つことも可能であるが、一般の研究機関がそれらを有することはコストや人員の面からも困難であろう。また、得られた情報を世界に公開することで、研究は飛躍的に進むが、これに伴い、データセキュリティや閲覧ソフトの互換性の問題も生じてくる。

不特定多数の研究者達のリクエストに、それほど応えてもいられない。コンピューターインフラの問題はゲノミクス研究者達の共通の悩みと言えよう。

効率的な研究をするために

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DNAnexus社のゲノミクス・クラウドコンピューティングの専門家チーム
(出典:DNAnexus公式ページ

2009年、スタンフォード大学のSerafim Batzoglou教授 とArend Sidow 氏、コンピューター科学者であるAndreas Sundquist氏らがDNA配列解析におけるコンピューターインフラの必要性から設置したスピンオフ事業が、現在のDNAnexus社の前身である。

2013年までCEOであったAndreas Sundquist氏はこのように言っている。
“「我々は、NGS配列解析の技術の状態に不満を持つ科学者でありユーザーであった。我々はスタンフォード大学外に設立され、MIT、UCSC、バークレー校、UCSDのような場所からの素晴らしい人材とともに、強力なシーケンス解析エコシステムを構築することを目的とした一流のチーム、dnanexus.comを立ち上げた。」”

さらに、

“「ユーザーはバイオインフォマティクスの博士号を必要とするべきではなく、コンピュータクラスタ、ディスク・アレイを購入し、ITスタッフを雇う必要はない。ソフトウェアをインストールまたは設定する必要はなく、複雑なデータ転送や操作を管理する必要もない。クラウド・コンピューティングとWeb 2.0技術を利用し、ユーザーがNGS解析にアプローチしやすいコンピューティング・プラットフォームの基盤を構築することで、ユーザーは研究に集中できるようなるはずだ。」”
Sample6 blog〝INTRODUCING DNANEXUS〟より引用

DNAnexusのプラットフォーム挑戦

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バイオ医薬品開発におけるプラットフォーム例
(出典:DNAnexus公式ページ

一例を紹介しよう。
バイオ医薬品開発では製薬企業をはじめ多くの研究所、クリニック施設がチームとなる。各々のデータはクラウド上に構築されているDNAnexus内で瞬時に処理が行われ、データストレージの需要を満たすことができるインフラストラクチャを提供されている。

すべてのデータと計算ツールは、チーム内での複製や物理的な転送の必要はなく、再現性、バージョン管理された分析結果やツールを一か所にまとめて提供されるため、チーム内での共有も容易だ。

セキュリティにおいても、国際規格であるISO27001(=組織の保有する情報を機密性・完全性・可用性の観点から維持していくための国際規格)に準拠したシステムが導入されている。

また、ユーザーの入り口となるクラウド環境は、アマゾンウェブサービスを利用したパイプラインをはじめ、出資元であるグーグル、2016年にはマイクロソフト社とのコラボレートを発表し、世界中のあらゆる研究者が活用できるように用意されている。

認められた研究支援システム

協力なプラットフォーム構築によってDNAnexus社はENCyclopedia of DNA Elements (ENCODE) Project3000 Rice Genome ProjectPresicionFDAのような大きなプロジェクトを抱える企業となった。

これらの業績が評価されDNAnexus社は、〝フロスト&サリバン the 2016 Enabling Technology Leadership Award〟を受賞している。

日々の研究で生じた不具合の解決が世界中のゲノム研究者に支持され、さらにはゲノミクス研究のためのグローバルネットワークが構築されようとしている。DNAnexusはバイオインフォマティクスの促進剤として、さらなる開発が期待される注目の企業なのだ。

会社概要

会社名 DNAnexus
CEO Richard Daly
創業 2009年
拠点 アメリカ カルフォルニア州 マウンテンビュー
社員数 51-200人規模
事業内容 バイオインフォマティクスのためのデータ管理事業
沿革 2009年 スタンフォード大学のSerafim Batzoglou教授とArend Sidow、スタンフォードコンピューター科学のAndreas Sundquistらが、DNAシーケンス解析におけるコンピューターインフラ構築のために設置したスタンフォード大学のスピンオフ事業として創設された。First Round Capitalなどから155万ドルの資金を調達。
2011年 2回目の資金調達でGoogle VenturesとTPG Biotechから1500万ドルを獲得。
2014年 シリーズCとして、1500万ドルの資金を調達。
2015年 MIT TECHNOLOGY REVIEW’S 50 SMARTEST COMPANIES OF 2015に選出される。
2016年 FROST & SULLIVAN the 2016 Enabling Technology Leadership Award受賞。

メンバー紹介

Richard Daly

Richard Daly
CEO
バクスター研究所での13年間を含む、ヘルスケア・ゲノミクスの分野で30年もの経験を有している専門家。バクスター研究所所属後、経営補佐と実験サービスの会社をいくつか創設。1999年、実験室ベースの遺伝子シークエンスとバイオインフォマティクスのパイオニアであるVisible Genetics (NASDAQ: VGIN)のCEOとなる。ニューヨーク大学の金融学士号と、ハーバード大学のMBAを取得。

Balaji Venkateswaran

Balaji Venkateswaran
CTO
シンマテック、GuardianEdge Technologies(のちにシンマテックが買収)、Elemental Security & Evolve Software (現在一部オラクル)で管理職や役員を務めた。Engineering at Layer8 Securityを創設し、VPに就任、革新的なクラウドセキュリティプラットフォームを考案、構築した。サウスカロライナ大学のコンピューターエンジニアリング修士号取得。

Arend Sidow, PhD

Arend Sidow, PhD
共同創設者、取締役
スタンフォード大学の病理学と遺伝学の准教授。また、ゲノミクスと個別化医療のためのスタンフォードセンターのコンピューターディレクターでもある。彼の研究は遺伝子の種類と機能に焦点をあてており、DNA配列の生成と分析に長年の経験を持っている。DNAnexus共同創設者の1人。バークレー大学の遺伝学の博士号を取得。(参照:Linkedin

Andreas Sundquist

Andreas Sundquist
共同創設者
DNAnexusの創設者の1人であり、2009-2013年までCEO、2013-2014年にCTOを務め、会社を大きく成長させた、テクノロジーエバンジェリスト。マサチューセッツ工科大学で、コンピューターサイエンスと電気工学の修士号、および数学と物理学の学士号を取得。スタンフォード大学でコンピューターサイエンスと生物計算学の博士号を取得。

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SAKIGAKE編集部

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