「インプラント」+「ストレッチ」で側弯症を改善‐ApiFix

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AIS(Adolescent Idiopathic Scoliosis)という病名をご存知だろうか。日本語では「思春期特発性側弯症(ししゅんきとくはつせいそくわんしょう)」と呼ばれ、正面もしくは背面から見ると直線状であるはずの脊椎(背骨)が、側方に弯曲、つまり曲がっている状態を指す(図1参照)。文字通り、思春期の小学校高学年から中学校時代に発症する病気で、特に女子の患者数が多い事で知られている(男子の5~7倍)。遺伝子の異常が関与していると考えられているが、原因はまだ完全に解明されていないのが実情だ。

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(図1)AIS患者の外観とX線写真。背骨が右に大きくカーブしている事がわかる
(出典:理化学研究所

現行の手術法と問題点

側弯角度が50度以上になると、背部の痛み、肺の機能低下、および心臓への負担などが問題となり「脊椎固定手術」が必要となる。この手術は皮膚を切開した後、ネジを複数の椎骨に埋め込み、そのネジをロッド(棒)で連結させて、弯曲を真っ直ぐに矯正していくやり方だ。場合によっては、フックやワイヤーが使用される事もある。

脊椎固定手術はAISの進行を止めるのに有効な手段であるが、患者の肉体・精神的負担が大きいという難点がある。広範囲にわたり脊椎が固定されるため、背中を動かしづらく柔軟性が失われてしまうのだ。また、入院日数も術後6~7日と長く、日常生活から隔離された子供にとってストレスになるのは間違いない。

他に、術後の脊髄損傷による神経麻痺、感染症を起こす可能性も少なからずあり、侵襲性の低いAIS手術の実現が待ち望まれている。

低侵襲性の矯正手術を確立したApiFixシステム

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(図2)脊椎骨の弯曲部に固定されたApiFixインプラント
(出典:ApiFix公式YouTube

そんな中、イスラエルのスタートアップ企業ApiFix社は、自社開発したラチェット式インプラントを用いたAIS向け矯正治療「ApiFixシステム」を発表。侵襲性を最低限に抑えた治療法として、世界の医療業界から注目を集めている画期的なシステムである。

インプラント内部にはラチェット機構が備わっており、小型サイズながら十分な矯正力を有している。そして、細菌の繁殖を抑制する独自のコーティングを施しており、感染症に罹らないよう配慮されている。手術方法も極めてシンプルで、弯曲している脊椎部分にのみネジで2か所固定すれば手術は完了となる(図2参照)。同社によると、40~60度の側弯を矯正する事が可能だという。

術後のストレッチ運動で徐々に矯正

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(図3)術後のストレッチ運動。ラチェット機構(左)により、背骨の曲がりが徐々に改善される
(出典:ApiFix公式YouTube

ApiFixシステムは、上記のようなインプラント手術のほかに、「矯正を促す術後のストレッチ運動」も含まれている。よって、体内にインプラントを埋め込んだだけでは真っ直ぐに矯正されないので、その後の柔軟体操が重要となってくる。

ストレッチを開始する時期は、手術完了から2~3週間後。医師の指導のもと、上半身を横に曲げる側屈運動を中心としたストレッチを行う。すると、インプラント内部のラチェット機構が作動し、弯曲している脊椎がテコの原理で若干反対側に移動し、改善が見られるようになる(図3参照)。このストレッチを約6か月間繰り返す事により、脊椎は次第に直線状へと戻るようになり、「安全圏」である35度以下に矯正する事が可能となるのだ。

ApiFixシステム導入のメリット

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(図4)従来の脊椎固定手術(左)とApiFixとの比較
(出典:ApiFix公式ページ

  • 広範囲にわたるネジ、ロッドの挿入は不要(図4参照)
  • 皮膚の切開範囲を縮小(45㎝→10㎝)
  • 手術時間を短縮(4~6時間→1時間)
  • 入院日数を短縮(術後7日→3日)
  • 背中の柔軟性を改善
  • 自宅でもストレッチが可能

ヨーロッパではすでに商業化されており、2015年6月時点で12~18歳のAIS患者50人がApiFixシステムで治療を受けたという。ApiFix社は今後の展望について、「AISの治療において、ApiFixシステムが新たなスタンダードになるよう努力していく。このヨーロッパ進出を機に、スピード感を持って販売やマーケティングを行っていきたい」と語った。(参考:“ApiFix® Ltd. reaches 50-patient milestone following CE-marking to treat Adolescent Idiopathic Scoliosis with its minimally invasive device”

参考資料

会社概要

会社名 ApiFix Ltd.
CEO Uri Arnin
創業 2011年
拠点 イスラエル
社員数 11-50人規模
事業内容 AIS向け矯正器具の開発
主な商品 ApiFixシステム
会社URL http://apifix.com

メンバー紹介

Uri Arnin

Uri Arnin
創業者・CEO
テクニオン・イスラエル工科大学機械工学部を卒業。10年以上、脊椎治療に関する分野で活躍。ApiFix社の設立前はImpliant社でCTO、Spine21社では創業者兼CTOを務めていた。

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SAKIGAKE編集部

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