不老不死の可能性を探る-Klogene Therapeutics, Inc.

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先日観たアニメ「ルパン三世」の中でルパンの仲間である峰不二子が永遠に美しくいる事へ執着するシーンを見かけた。彼女に限らず誰でも老いる事に抵抗はあるものだ。私も老いずに出来るだけ長く好きなスポーツを続けたいと思う。

しかし残念な事に、人間に限らず地球上の生物は皆、年を取る。一般的に年を取るというと老化を表すが、その老化はどういった点に生じてくるだろうか。肌年齢や肉体年齢などはよく耳にする。では体の内部はどうだろうか。

肌や肉体が年を取るという事はそれらを支える細胞や神経も老化、もしくは死んでいくのだ。今回紹介するKlogene Therapeutics, Inc.は、その神経細胞が徐々に死んでいく病気である神経変性疾患に対して新規治療法の開発を手掛けているスタートアップ企業だ。

クロトー遺伝子に着目した研究チーム

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Klogene Therapeutics, Inc.の研究メンバー
(出典:BU Today

Boston Universityの医学部において1つの研究チームとして設立されたKlogene Therapeutics, Inc.。その名の通りこの企業はクロトー遺伝子に注目している。クロトーという名はギリシャ神話に出てくる運命の女神の内の1人から由来しており、ディズニー映画「ヘラクレス」にも登場している。

クロトー遺伝子は老化抑制遺伝子の1つであり、2005年に当時テキサス大学サウスウェスタンメディカルセンターで助教授を務めていた黒尾誠により発見された。動物個体の発生、成熟、機能維持に関わり、この遺伝子の欠失がパーキンソン病やアルツハイマー病といった神経変性疾患の原因になると考えられている。

まさに運命を司る遺伝子というわけだ。しかし逆を言えば、その欠失を防ぐ事により神経変性疾患にならず、運命を変えられる可能性があるのだ。神経変性疾患に関する研究を長年続けるエキスパート達が集結したKlogene Therapeutics, Inc.は、初期プロジェクトとしてアルツハイマー病を防ぐ新薬開発に取り組んでいる。

地道な研究を続けて繋いだ新薬開発のチャンス

Klogene Therapeutics, Inc.が企業として創業したのは2015年だが、クロトー遺伝子の研究はそれよりも前から行われている。そして長く果てしない研究でクロトー遺伝子の特性や中枢神経システムへの影響、神経変性疾患との関連性などを解明してきた。

また、実験ではクロトー遺伝子を操作することにより、寿命が延びるという結果を得る事に成功したのだ。そして遂にKlogene Therapeutics, Inc.は2016年5月に実験結果から得た情報を基に、アルツハイマー病患者の為の新薬を開発する事業へ着手する方向を定めた。

そこをスタート地点とし、今後は更にクロトー遺伝子に関する研究を進めて、多発性硬化症や脱髄疾患、慢性腎不全、そしてあらゆる癌を防ぐ為の新薬開発へ繋げるのがKlogene Therapeutics, Inc.の狙いだ。

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クロトー遺伝子を操作した実験結果表
(出典:National Center for Biotechnology Information)

まとめ

今回Klogene Therapeutics, Inc.の事業内容について述べたが、この企業について調べた私自身は少々驚いている。なぜなら不老不死という単語を私は、冒頭で記した「ルパン三世」の峰不二子や「ドラゴンボールZ」でベジータやフリーザが求めるもので、あくまでも現実の世界には有り得ない事だと考えていたからだ。

しかし、Klogene Therapeutics, Inc.の今後の取り組みによってそれが実現する可能性が十分にあるのだ。それを考えると、研究者たちの地道な努力や研究意欲、信念に脱帽する。

不老不死という結果に辿り着くまでには長く時間が掛かるが、アルツハイマー病やパーキンソン病といった神経変性疾患、日本で特定疾患に認定されている病への新薬は私達が考えているよりも早く開発されるだろう。今後もKlogene Therapeutics, Inc.の研究からは目が離せない。

会社概要

会社名 Klogene Therapeutics, Inc.
CEO Carmela Abraham
創業 2015年4月
拠点 アメリカ ボストン
社員数 1-10人規模
事業内容 神経変性疾患における新規治療法の研究開発
主な商品 アルツハイマー病を防ぐ新薬を開発中
会社URL http://www.klogene.com
沿革 2005年8月 黒尾誠によりクロトー遺伝子を発見。
2013年1月 クロトー遺伝子が希突起膠細胞の成熟と中枢神経システムの髄鞘形成を促す事を発見。
2014年6月 クロトー遺伝子に含まれる神経防護作用によってアルツハイマー病を遅らせたり予防したり出来る事を発見。
2015年4月 創業
2016年3月 クロトー遺伝子が神経防護作用や認知力作用を高めるタンパク質である事を発見。
2016年5月 アルツハイマー病に関する149万ドルの研究資金をアメリカ国立衛生研究所より得る。

メンバー紹介

Dr. Kevin Hodgetts

Dr. Carmela Abraham
Founder, Co-chair Scientific Advisory Board
Harvard Universityで神経科学の博士号を取得し、Boston Universityの医学部で生化学、薬学、治療学を教えている。アルツハイマー病や脳の高齢化、ミエリン(髄)における生物学、神経炎症に関して35年間研究し続けている。

Dr. Kevin Hodgetts

Dr. Kevin Hodgetts
Founder, Co-chair Scientific Advisory Board
イギリスのSalford Universityで有機化学の博士号を取得。神経変性疾患用の新約発見を行う研究室の責任者とハーバード大学医学部関連病院のBrigham and Women’s Hospitalで神経学の助教授をしている。中枢神経系の新薬発見において16年の経験がある。

Dr. Manfred Windisch

Dr. Manfred Windisch
Member of Scientific Advisory Board
オーストリアのUniversity of Grazで神経生物学における博士号を修め、中枢神経系の新薬開発や臨床治験を行うNeuroSciosのCEOを務める。アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、軽度認知障害に関する研究をヨーロッパや北アメリカ、アジアなどで30年間行っていた。年にいくつもの薬理学に関する研究をしている。

Dr. George Trainor

Dr. George Trainor
Member of Scientific Advisory Board
Harvard Universityで有機化学の博士号を取り、腫瘍学や神経科学、ウィルス学といった学問における医薬品産業で25年間活躍してきた。2011年にはアメリカ化学会からHeroes of Chemistryを受賞。

 Dr. Makoto Kuro-o

Dr. Makoto Kuro-o
Member of Scientific Advisory Board
東京大学で医学博士号を取得し、クロトー遺伝子の発見者。内分泌学や線維芽細胞増殖因子、分子生物学、腎臓学など幅広い分野において研究や臨床治験を30年間行っている。

 Dr. Aaron Ciechanover

Dr. Aaron Ciechanover
Member of Scientific Advisory Board
Hebrew Universityにて医学博士号を取得し、Technion Israel Institute of Technologyでは生化学の分野で理学博士号を修めた。ユビキチンの仲介タンパク質が分解される仕組みを発見したことにより2004年ノーベル化学賞を受賞している。

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SAKIGAKE編集部

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