自動車ハッキングに備えを!「つながる車」の未来担う-Argus Cyber Security

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自動車サイバーセキュリティーのパイオニア

インターネットに常時接続されるコネクテッドカー(Connected Car)の普及をめぐってサイバー攻撃への脆弱性に懸念が広がっている。2016年9月には、中国の騰訊控股が抱えるセキュリティー研究所、科恩実験室(Keen Security Lab)がテスラモーターズの電気自動車「model S」のハッキング実験に成功したと発表。研究員がハッキングを実演する様子がYouTubeで公開され話題となった。(参照:「Car Hacking Research: Remote Attack Tesla Motors」(Keen Security Lab of Tencent)
YouTubeの映像を見るかぎりでは、科恩実験室の研究員らはノートPCからの遠隔操作で、ものの数秒でステアリングランプを点滅させたりシートを動かしたり、やりたい放題だ。ドアロックもすぐさま解錠してしまう。
さらには走行中に唐突にドアミラーを閉じたりトランクを開け放ったり、さらにはウォッシャー液を噴出してワイパーを動かしてみたりと傍若無人だ。まるで手品を見せるように「model S」を自在に遠隔操作している。
そのうえメーターパネルや操作ディスプレイ上にまったく無関係な画像を表示させることでタッチ操作を無効にしたり、12マイルも離れた研究所からコマンドを送って急ブレーキをかけさせたりと、リアルな公道だったら大事故を起こしかねない「攻撃」を不敵な笑みを浮かべながら次々に繰り出して見せる。
映像に映る研究員らの姿は、実験場所となった雨の降る屋外駐車場の風景をあたかも、事件現場のような不穏な風景に変える。ネットワークにつながる限り、作為的にどんな事故でも起こしうるということだ。

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「Model S」の脆弱性を突き、ワイパーを遠隔操作する科恩実験室の研究員
(出典:「Keen Security Lab of Tencent」のYouTube映像から

一方、ボストンコンサルティンググループの予測によると、急拡大する自動運転車の市場規模は2035年にまでに770億ドル(約8.5兆円)に達し、新車販売の25%が自動運転車が占めるとされ、(参照:「Autonomous Vehicle Adoption Study」(The Boston Consulting Group)
自動車ハッキングへの備えはもうすでに待ったなしの段階にきている。
そうした状況のなか、「自動車サイバーセキュリティーのパイオニア」と言われるスタートアップ企業が注目を集めている。Geektimeが選ぶ「2016年ベスト・イスラエルIoTスタートアップ」に選出されたArgus Cyber Security社だ。

サイバーセキュリティー技術を自動車産業に統合

自動車向けサイバーセキュリティーの場合、一般のコンピューター向けのセキュリティーシステムよりも高い精度とパフォーマンスが求められることは言うまでもない。
何より重要なのは自動車産業における自動車製造の実績とサイバーセキュリティーのノウハウを効果的に統合することだ。
自動車メーカーや、部品を直接供給する「TIER-1」企業、アフターマケット向けテレマティクスメーカーを対象として、現にある自動車製造の枠組みのなかにセキュリティーシステムを組み込む必要がある。

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(出典:Argus Cyber Security社公式サイト

Argus Cyber Security社が独自開発したIDPS(侵入検出・防護システム)が提供するソリューションの第1の柱は、テレマティクス・コミュニケーション・ユニット(TCU)を防衛することだ。
車載ネットワークを司る通信ユニットであるTCUは自動車ハッキングの最大の攻撃対象領域となり得るため、改変された非公式アプリケーションの侵入を防ぐとともにOSの異常動作検出を行う。
第2の柱は、車載WiFiの安全な接続を確保することだ。CAN、FlexRay、DoIPといった車載LAN規格に対応するファイアーウォールで不正な通信を検出する。
第3の柱は、エレクトロニック・コントロール・ユニット(ECU)を不正な通信から防御することと、承認されていないOEMの改変を検知するなどの機能だ。
Argus Cyber Security社の創業メンバーはイスラエル国防軍でサイバーセキュリティーの経験を豊富に積んだ猛者たちだが、2016年1月にインターネットセキュリティー大手の米Check Point Software Technologies社との協業を発表、より総合的な自動車セキュリティー環境の実現を目指すまっただなかにある。(参照:「Argus Cyber Security and Check Point Partner to Protect Connected Cars from Hackers」

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ARGUSのIDPSシステムのダッシュボードはクラウドで提供される
(出典:「vpnMentor」ブログ

「つながる車」の未来担う

米調査会社のガートナーは、日本で東京オリンピックが開催される2020年には世界で2億5000万台の「つながる車(Connected Vehicles)」が路上を走ると予測している。(参照:Gartner Newsroom
日本では東京オリンピック期間中に自動運転タクシーの走行を計画する事業者もあり、ロボットタクシーや自動運転車によるカーシェアリングの実現は遠い将来の話ではない。
今まさに現実化しつつある「つながる車」の光と闇を見据えるArgus Cyber Security社のソリューションの厚みは、われわれが学びとるべき視座を提供しているはずだ。

会社概要

会社名 Argus Cyber Security
CEO OFER BEN-NOON
創業 2013年
拠点 イスラエル、米デトロイト、シリコンバレー、独シュツットガルト、東京
社員数 51-200人規模
事業内容 自動車サイバーセキュリティー
主な商品 ARGUS IDPS(Intrusion Detection and Prevention System)
会社URL https://argus-sec.com
沿革 2013年 創業
2014年9月 シリーズAファンディングでMagma Venture Partnersなどから400万ドルを調達
2015年9月 シリーズBファンディングでAllianzなどから2600万ドルを調達
2016年1月 インターネットセキュリティー大手の米Check Point Software Technologies社と自動車セキュリティー分野での協業を発表
2016年2月 Geektimeが選ぶ「2016年ベスト・イスラエルIoTスタートアップ」に選出される

メンバー紹介

OFER BEN-NOON

OFER BEN-NOON
共同創業者・CEO
イスラエル国防軍諜報部8200部隊でキャプテンを務め、膨大なサイバーセキュリティーの経験を持つ。2013年にArgus Cyber Security社を創業、CEOとなる。2011~14年、IDCヘルズリヤでコンピューター・サイエンスの学位取得と並行して同校の「ゼル起業家養成プログラム(“Zell” Entrepreneurship Program)」に参加していた。

ZOHAR ZISAPEL

ZOHAR ZISAPEL
共同創業者・会長
兄弟とともにRAD groupを創業し、RAD Data Communications社CEOを務める。ハイテク産業での起業・経営経験を豊富に持つ。

ORON LAVI

ORON LAVI
共同創業者・R&D部門バイスプレジデント
2005年、テルアビブ大学卒。サイバーセキュリティー専門家として、イスラエル国防軍諜報部8200部隊でキャプテン、R&Dチームリーダーを務めた。2012年からsalesforce.com社でシニア・ソフトウェア・エンジニア、2014年からArgus Cyber Security社の共同創業者・R&D部門バイスプレジデント。

YARON GALULA

YARON GALULA
共同創業者・CTO
テクニオン・イスラエル工科大卒。イスラエル国防軍諜報部8200部隊でキャプテン、プロジェクト・マネージャーなどを務めた後、モーショングラフィックス制作のMr. X社でVFXアーティストなどを経て、2014年からArgus Cyber Security社の共同創業者・CTO。

YONI HEILBRONN

YONI HEILBRONN
マーケティング部門バイスプレジデント
2002年、テルアビブ大卒。イスラエル国防軍諜報部8200部隊サイバー・インテリジェンス・ユニットではリーダー的役割を担った。NICE Systems社などを経て、2014年9月からArgus Cyber Security社のマーケティング部門バイスプレジデント。マーケティングやビジネス開発の豊富な経験を持つ。

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SAKIGAKE編集部

SAKIGAKE編集部

海外のスタートアップ、テクノロジーに関する最新情報を発信していきます。 海外の起業家たちが、何の課題に目を向け、どんなことを仕掛けようとしているのか。 最新技術だけでなく、未来を創ってきた人や、これから未来を創ろうとしている人の生活・人生もご紹介します。
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