太陽光ならぬ太陽「熱」で、生産ラインを省エネ化-Tamuz Energy

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加熱、殺菌、乾燥、蒸留、空調――。各種業界の生産ラインでは、これらの処理を施す上で「熱エネルギー」が欠かせない。一般的には、ボイラーで温水、もしくは水蒸気に形を変え、それらを熱エネルギーとして大量消費されるが、その大半が地球温暖化の原因となる化石燃料で稼働しているのが実情だ。したがって、このような化石燃料依存から脱却し、環境負荷の少ない再生可能エネルギーに、今後切り替えていく必要がある。

イスラエル中部、ロッシュハアインに拠点を置くTamuz Energy社は、そんなエネルギー転換を目指す企業の一つであり、今まであまり注目されなかったもので、エコロジーな生産活動を実現させようとしている。それは、「太陽の熱」である。

「太陽熱利用」とは?「太陽光発電」との違いは?

再生可能エネルギーの代表格として、しばしば語られる太陽エネルギー。この単語を聞くと、多くの人は太陽光発電のみを思い浮かべるかもしれない。しかし実際は、太陽光だけでなく、「太陽熱利用」という形態も存在する。これから、両者の違いについて見ていこう。

ご存知の通り、太陽光発電は空から降り注ぐ太陽の光を、直接電力に変換する方法を指す。一方、太陽熱利用は光を熱エネルギーに変え、水からお湯を作りだす事が基本となっている。そして、太陽光発電では太陽電池であるのに対し、太陽熱利用では熱を効率的に集める集熱器が取り付けられているのが特徴だ。主に住宅向けの給湯や冷暖房に使われている。

用途の広さでは太陽光発電に軍配が上がるが、「変換効率」に関しては、太陽熱利用の方が優位に立つ。太陽光発電の場合、太陽の光から電気に変換して利用できるエネルギーはわずか7~18%しかなく、8割以上が無駄になってしまう。一方、太陽熱利用は40~60%も熱エネルギーに変える事ができ、高い効率性を誇っている。よって、湯沸かしや室内の温度調節には、太陽熱利用の方が圧倒的に太陽エネルギーを有効活用できるのである。

4本のパイプで集熱する「ガラス製太陽熱吸収器」

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Tamuz Energy社が開発した太陽熱吸収器
(出典:Tamuz Energy公式ページ

Tamuz Energy社はこのメリットに着目し、「エネルギー消費が多い工場の生産ラインでも利用できないか」と考え、研究と試行錯誤を重ねた末、工業用の太陽熱吸収器を開発した。

この熱吸収器は全てガラス製で、厳しい気候および熱サイクルでも耐えられる構造となっている。工場の生産能力に応じて、必要台数を置くシステムとなっており、直射日光の当たる場所なら、地上でも建物の屋上でも設置が可能だ。

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(出典:Tamuz Energy公式YOUTUBE

上の画像を見て頂きたい。内部には4本のパイプが組み込まれており、これが集熱器の役割を果たしている。空から降り注ぐ太陽光を集熱器で集め、熱エネルギーに変換した後、熱媒体の流れに沿って移動する。そして、熱交換器を経て蒸気に変わり、工場内へと運ばれる。ちなみに、熱媒体は水ではなく油を使用しているため、より高温で伝熱させる事ができ、最大300℃までの熱を運搬可能(水の場合、約200℃が限度)。

さらに、この熱吸収器は蓄熱もでき、曇りの日や熱需要がピークに達した時でも、スムーズに供給する機能が備わっている。蓄熱を使い切ってしまった場合でも、従来のボイラー稼働に即時切り替わるので、生産ラインが停止してしまう心配は一切ない。

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太陽熱伝達の流れ。熱交換器で蒸気に形を変え、工場内に送られる
(出典:Tamuz Energy公式YOUTUBE

1kWhあたり、2.07円以下

変換効率の高い太陽熱を活用すれば、二酸化炭素の排出量だけでなく、エネルギー消費量の大幅削減も実現。すなわち、化石燃料のみの時と比較して、工場のランニングコストが格段に低くなるという事だ。公式YouTubeによると、加熱にかかるコストが1kWh(キロワット時)あたり、2セント(約2.07円)以下に抑える事ができるという。

現在、本格的な商業化に向けて活動しているTamuz Energy社。産業部門において将来、太陽熱利用を太陽光発電と共に普及させる事ができるか、今後も要チェックだ。

会社概要

会社名 Tamuz Energy
CEO Shai Binyamini
設立年 2013年
拠点 イスラエル
社員数 1-10人規模
事業内容 工業向け太陽熱吸収器の開発
会社URL http://tamuz-energy.com/

メンバー紹介

Shai Binyamini

Shai Binyamini
創業者・CEO
テルアビブ大学卒。数十年にわたり、ソーラーエネルギーの研究開発に従事。設立前はSIEMENS CSP社で、研究開発部門のトップとして太陽光蓄熱に関する研究開発をしていた。

Danny Kaftori

Danny Kaftori
創業者
カリフォルニア大学サンタバーバラ校卒。ソーラー関連の優秀な技術者であり、起業家でもある。現在、カリフォルニアのゼネラルエレクトリック(GE)社にて、事業開発マネージャーを務めている。

Eli Mandelberg

Eli Mandelberg
顧問委員
テルアビブ大学卒。30年以上にわたり、Luz社、SIEMENS CSP社など様々な企業で、ソーラーエネルギーの技術開発に従事。

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SAKIGAKE編集部

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