「電波」を利用して、水から水素を分離・貯蔵-H2 Energy Now

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H2 Energy Now社は、イスラエル南部地区の都市、ベエルシェバに拠点を置くスタートアップ企業である。社員はCEOのSonya Davidson氏、ただ1人である。

しかし、H2 Energy Now社は「『電波』で水から水素を作る」新技術を開発している企業として、大きな注目を集めており、世界で最も権威のあるフォーラムの一つである「The Alpine High-tech Venture Forum(AHVF)」に、EUから招待を受けた事がある。これは、イスラエル企業として初めての事であり、いかに世界がこのクリーンテクノロジーに将来性を見出しているかがよくわかるであろう。

普及が困難な再生可能エネルギー

化石燃料の代替エネルギーとして、研究開発が進んでいる「再生可能エネルギー」。現在、全体のエネルギー供給のうち、8割以上が石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料で占められ、このまま消費し続けていると、資源が枯渇するばかりか、温室効果ガスによる地球温暖化が進行してしまう恐れがある。そのため、環境負担の少ない再生可能エネルギーへのシフトは先進国を中心に加速しており、それに対する投資額も年々増加している。

しかし、普及させる上で、大きな壁が立ちはだかる。世界で主流な再生可能エネルギーは、太陽光と風力発電であるが、広いエリアにおいて安定的に電気供給するのは、非常に難しい。ご想像の通り、夜になると太陽光で発電できなくなり、風力も同様、風が吹かないと発電が不可能になるからだ。蓄電池があれば、発電から得た余分の電気を貯めておき、夜間などに放電する事ができるが、導入コストが依然として高く、蓄電容量も少ない。したがって、蓄電問題が解決されない限り、化石燃料の代わりとなるには、まだまだ道のりが険しいのが現状だ。

電波と水で低コスト・高効率な水素抽出・貯蔵が実現

Davidson氏は、「再生可能エネルギーを利用して、いかに継続的に電気供給できるか」を考えた末、一つのアイデアを思いつき、開発に乗り出した。それは、「電波を使って、水から水素を分離させ、貯蔵する」方法である。

水から水素を取り出す技術は、以前から存在していたが、それは電気分解によるもので、電波で抽出するのは、同氏が第一人者だ。

手順を大まかに説明すると、以下の通りとなる。

  1. 水(海水でも可)をフィルターで液滴化にする
  2. 粒状となった水を、電波を使って分子レベルで振動させる
  3. 水は酸素ガスと水素ガスに分離され、気体の状態で水素を高圧タンクに貯蔵

高圧タンクに貯蔵すれば、必要な時に「水素エネルギー」として、電気や燃料に使う事が可能だ。もちろん化石燃料とは異なり、二酸化炭素の排出は伴わないので、環境にとても優しい。

この技術の特筆すべき点は「交換効率」にあり、従来の電気分解法では、水から約60%の水素が取れるのに対し、電波は89%と非常に高い。つまり、Davidson氏が開発した電波分解法の方が、無駄なく抽出できるという事だ。加えて、競合他社とは違い、水素分解に必要なマシンに貴金属(プラチナなど)の部品が使われていないため、製造コストの面でも優位に立てるという。

同氏はこの画期的なクリーンテクノロジーを開発した事により、地球上にある豊富な水や海水を有効活用して、より低コストでかつ効率良く、水素を作りつつ貯蔵する事を可能にしたのである。まだ商業化にはたどり着いていないが、持続可能な再生エネルギーの供給が実現するのは、そう遠くないのかもしれない。

会社概要

会社名 H2 Energy Now
CEO Sonya Davidson
設立年 2011年
拠点 イスラエル
社員数 1人
事業内容 電波を利用した水素分離の開発
会社URL http://h2energynow.com/

メンバー紹介

Sonya Davidson

Sonya Davidson
CEO
ユダヤ系アメリカ人であり、2007年にイスラエルへ移住。経営学、会計学、海洋技術学など合計5つの学位を取得している。10年にわたり、水、水素、そしてエネルギーの貯蔵に関する研究を行っている。

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SAKIGAKE編集部

SAKIGAKE編集部

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