レアメタルから新しい薬を―-BioMAS

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人類の歴史は病気との戦いの歴史、つまり薬の進化の歴史でもある。ペスト、結核、ポリオ――命を脅かす病に対抗する薬こそが、人類の繁栄を可能にしてきた。もちろん現代でもなお、世界中の研究機関を巻き込んだ目まぐるしい競争の中で、数え切れないほどの新薬の研究・開発がすすめられている。

新薬開発の長い道のり

新薬の開発は決して簡単なプロジェクトではない。ひとつの薬が完成して私たちの手元に届くまでには、だいたい10年から18年の歳月がかかるという。薬になる可能性を持った物質を特定し、その化学的な生成法を確立する基礎研究から始まり、動物実験を通して薬の効き目のメカニズムを明確にする非臨床試験、実際にヒトに薬を投与して効き目を見る臨床試験(いわゆる治験)を経て、専門機関への販売許可申請が行われる。さらに薬が発売された後も使用法や実際の効能に関する長期的な調査が必要だ。ここまでで投資される金額は200~300億円にもなるという。
(参考:日本SMO協会

BioMASはこうした製薬の世界で、特にテルル化合物を専門に治験を行うベンチャー企業だ。

テルルとは何か?

BioMAS_1
テルルの外見
(出典:Wikipedia

原子番号52番のテルルは半金属に分類され、単体では太陽電池や電子部品の製造に利用されるレアメタルの一種である。これが酸素やアンモニウムと結合した有機テルル化合物になると、殺菌作用や炎症を抑える作用があり、潰瘍やいぼなどの治癒に役立つことが期待されるという。BioMASは世界でも唯一、このテルル化合物に特化した臨床試験を行う企業なのだ。

ベテラン科学者の着想

BioMASを設立したのはイスラエルのバル=イラン大学に在籍するベテラン教授、Prof. Michael AlbeckとProf. Benjamin Sredniの両氏。それぞれ化学と医学の分野で30年以上のキャリアを誇る。
それにしてもなぜ彼らは製薬業界に参入する際、テルルという元素に注目したのだろう? 実はテルルはレアメタルでありながら、私たちの身体、特に骨に多く含まれる物質なのだ。またニンニクやタマネギにも含まれ、希少ながらも日々の生命活動には欠かせない物質のひとつだと考えられている。ヒトの身体にとって重要な元素を、医薬品にも利用してゆこうというわけだ。
BioMASは2013年から、ヒトパペローマウィルスによる女性器外部のイボの治療に、有機テルル化合物の一種であるトリクロロ(ジオキシエチレン-O,O’)テルル酸アンモニウムを利用する治験を進めている。特定の元素に着目するというユニークなニッチ戦略を取るこの企業。彼らが実験を成功させ、最初の新薬を生み出す日を楽しみにしたい。

会社概要

会社名 BioMAS
CEO Prof. Michael Albeck、Prof. Benjamin Sredni
設立年 2011年
拠点 イスラエル
社員数 11-50人規模
事業内容 有機テルル化合物を用いた新薬の臨床試験
会社URL http://www.biomas-pharma.com/
沿革 2011年 創立
2013年 ヒトパペローマウィルスによる女性器外部のイボの治療に有機テルル化合物を利用する治験を開始。
2014年 アイルランドの製薬会社Cosmo Pharmaceuticals N.V.が200万ドルを出資し、BioMASの研究成果を利用するライセンスを取得。
2014年 アメリカのCharles River 研究所と共同研究を開始。

メンバー紹介

Michael Albeck

Michael Albeck教授
創設者
1934年生まれ。1962年にエルサレム・ヘブライ大学で化学の博士号を取得。1978年にバル=イラン大学の教授となり、同大学自然科学部の学部長も務めた。テルル化合物の研究で120もの論文や特許を持っている。

Benjamin Sredni

Benjamin Sredni教授
創設者
1944年生まれ。1978年にバル=イラン大学で生命科学の博士号を取得。現在は同大学のガン・エイズ及び免疫学研究所(CAIR)の所長を務める。またイスラエル免疫学会の会長にも選出されている。

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SAKIGAKE編集部

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